恋しぐれ

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163299501

感想・レビュー・書評

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  •  与謝野蕪村と彼にまつわる人々が、恋により大きな転機を迎えながらも、自らを模索して行く人生群像。収録の7話は1話完結でありながら、それぞれの登場人物と絡まり、最後の1話に繋がって行く。
     正直私は蕪村のことは余り知らず、ゆったりとした自然主義の俳人・画家のようなイメージだった。それが所謂「老いらくの恋」をしたり、円山応挙と女性について語りあったりと、とても人間くさい一面が描かれている。彼と弟子月渓との関係など、史実を知らなかった者にとってはとても興味深かった。
     自分の死んだ妻への追慕が似た女性への想いになったり、許されぬ恋ゆえに人生を狂わされたり、この物語で描かれる恋は、恋と言うには余りにも重く苦しい。彼らの人生は女性との関係によって大きく舵をとられ、見知らぬ大海に惑う船になる。それでも彼らにとって恋は生きる糧であり、芸術へのエネルギーであり、人生を見つめ直すきっかけとなった。
     最初の話はほんのりしていて、強い引力を感じなかったので、生意気にも「期待外れかな」と思ってしまった私。しかし全部読み終えてみれば、改めて全てが音を立てて動き始め、それぞれの登場人物の強さ、弱さにさえ共感し、その生き様に魅力を感じるのだ。
     最後の話にある、蕪村の辞世の句「白梅に明くる夜ばかりとなりにけり」を描いたという月渓(のちの松村呉春)の「白梅図屏風」。この本の表紙にもなっているのだが、是非みたいものだと思った。逸翁美術館(池田市)にあり、現在3月4日までまさに呉春展をやっているのだという。とても見に行けないが、機会があったら、訪れてみたいなあ。また月渓の一生を描いた「天明の絵師(司馬遼太郎)」も読んでみたくなった。

  • 蕪村にまつわる人間模様

  • 与謝蕪村について描かれた小説。
    ひとりひとりその章でスポットライトが当たる人物がちがっているのですが、最終的には全てを綺麗にまとめているかんじがしました。
    しかし葉室さんは本当によく調べてかいてある、というよりも教養があるのだろうとしみじみと感じました。
    娘、くのが一年にも満たない期間で離婚しており、それが蕪村が相手の家の家風と合わなかったとして病気がちになったくのを迎えに行って離縁させた、とか。
    当時にしてみたらかなり珍しい部類のことだったのだろうなあ、と思いました。

  • どのお話も悲恋ばかりで読むのがしんどかったです。

    帯に「蕪村、最後の恋」とありますが、「老いらくの恋」とかは良いと思うんですよ。いくつになっても恋ができるって素敵だから。
    でも、奥さんと娘さんと暮らしているのね……と思った時点でとてもがっかりでした。時代が違うので、今の不倫と同じように考えることはできないと思いますが、結局、長年連れ添って気心の通じた妻より若い娘の方が良かったでだけでは?って気がします。

    作者の葉室さんは男性の方なんですね。もしかして、悲恋とか悲しげな女性に美を感じるとかなんでしょうか? 私は女の人が不幸になるお話は苦手だな~と思いました。

  • 短編仕様になってはいるけれど、与謝蕪村とその周囲の人々にまつわる7話。

    夜半亭雨情/春しぐれ/隠れ鬼/月渓の恋/雛灯り/牡丹散る/梅の影

    俳諧はそもそもことばに生きたひとたちの世界だから、文献もいろいろ残ってたり、句に対する添え書きや場面の記録もあるだろうし、史実を掘り下げる作業は底無しなのに対して、想像や創作が入り込む余地は意外と少ないんじゃないかなぁと、おもうけど。蕪村の半生だけを追っているわけでなく、蕪村の半生を調べるうちに登場してきたサイドの人物たちの、恋、愛というよりは恋心、のかたちをみて、人間模様を綴った、、という印象の短編集。
    恋心ってのはいろいろだよね。性愛や愛憎の絡まないせつない部分、というか。大人のコイバナってかんじです。お薦め。

  • 与謝野蕪村の話・・というよりも、蕪村の周りの人の恋の話という感じでした。

    俳諧で生きていくという社会情勢がちょっと理解出来ませんでした。
    葉室さんの作品は、極端に面白いと思える物と分かれます。

  • 与謝蕪村のストーリー、俳諧の世界が少し分かった気がする。

  • 2017.03.08
    蕪村の俳句がよくその状況を映し出している。「見えるものをそのまま描くのは難しい」それは「事実をそのまま事実として伝えるのは難しい」現在社会での多くのトラブルと同じ言葉をあの時代に名人が悟りの境地で述べたのは重い。家、家系、女の地位、やるせなさ•••。

  • (図)

  • 途中で挫折。
    またの機会に。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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