ロマンス

  • 文藝春秋 (2011年4月25日発売)
3.17
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感想 : 131
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  • 本 ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163317502

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしい大傑作です。舞台となる昭和8年の時代感、空気感を存分に堪能でき、なおかつ謎解き要素もふんだんに盛り込まれています。柳さんの謎解きというと、なんとなくドライなパズルという印象があったのですが、この作品では、ストレートに感情面に訴えてくる重要な1要素となっています。けっして謎解きのためのお話になっていないのです。後から気づく何気ない伏線もかなり数多く、その効果も巧妙です。
    そして何より、この物語は「とても美しい」と思うのです。
    もしかしたら昭和8年という時代背景への理解の差が物語への印象に大きく影響するかもしれません。いまだ敗戦を知らぬ日本が第二次大戦へと突き進む前夜の時代。まだ華族社会が成立していた時代。しかし時は確実に軍国へと歩み始めている。そんな時代。柳さんの視点はあの傑作「新世界」のときと同じく、優しく、そして厳しいものです。「『誰かのために』という言葉は何の言い訳にもならない」という言葉が胸に刺さります。上から垂らされた糸にぶらさがる人形にはなってはいけないのです。
    ハードな物語です。「ロマンス」というタイトルからイメージする甘っちょろさはここにはありません。だのに、読後に「ロマンス」というタイトルを見ると、なぜか泣けてきます。
    「新世界」に感動した方にはぜひ読んでもらいたい大傑作です。

  • ジョーカー・ゲームと雰囲気にてた。
    歴史の事件とか名著とかと絡めてかかれてるのでおもしろい。
    でもこの人がかいたロマンスはロマンスにならない(笑)
    そこがまたよい。硬派やのぅ。

  • 柳 広司
     文藝春秋 (2011/04)


    以前読んだ『ジョーカー・ゲーム』がとても面白かったので期待して読んだ
    時代背景も人物も興味深く一気に読んだ 
    でもちょっと
    ミステリーとしてはドキドキ感がないかな

    ≪ ロマンスは 空想の薔薇 血のにおい ≫

  • キャラ読み派にはキツいかもデス。
    清彬さんは感情移入が難しい主人公でシタ。
    ってか、柳広司さんのお話にはキャラを求めないほうがいいのかな?
    『ジョーカーゲーム』は、主人公たちが個性を消すことが求められるスパイだからこそ
    柳広司さんのテリングとマッチしたのかも。

    設定とかは「The激動!」的テイストで料理したら
    韓流ドラマ好きにはウケるかも、と思いまシタ。
    ワタクシ的にはこちらのが好きデスが。
    あ あと、
    昭和初期の華族様のお話で、『ロマンス』てタイトルではあるけど
    お耽美好きのかたにもお勧めは難しいデス。(笑。

  • 理想と現実。
    理想に邁進していたけども、他者のために他者のせいで道が閉ざされてしまった嘉人。
    現実の不条理さを、かつてあった理想を懐かしむことで遠ざけている清彬。
    理想と現実が離れていくことを自覚していても、己の独善で近づけようと暴走する万里子。

    三者三様の煩悶と懊悩が終盤に明かされ、悲劇的な結末を迎える怒涛の展開は読み応えがありました。ページをめくる手が止まらないという久々の経験。
    彼らが抱えている抱えてしまった閉塞感。これは物語の登場人物が大小あれど抱えているもので、過去のパリの思想のごった煮のような極彩色のイメージが、昭和八年の現実の無彩色さを真綿で絞めるように伝えてくれます。

    ロマンスという題名は、手に入れたかったものに届かない、という切なさを例えたものなのかもしれない。恋に恋焦がれている時間が、無知であるからこそ楽しさの極みを感じることができるように。無知でなくなってしまった、そうであることを許されない人々の恋路だったのかもしれない。

    純粋と韜晦と妄執。理想に対して潔癖であったからこそ、選択したそれぞれの生き方。これをロマンスと呼ぶには、言葉がイメージする甘さとは遠い。
    アブサンが暗示しているのか。

  • 序盤は話に乗れないかと思っていたけど、主人公の雰囲気が高橋一生さんにピッタリと思ったらすごく面白くなった。

  • 戦時中のスパイを主人公にした「ジョーカーゲーム」の柳広司の長編。この時代を描くことが好きなのか、今回は昭和初期の家族社会を舞台にしている。「ジョーカーゲーム」が連作短編として謎解きと驚きに見所があったのに対し、本作は長編ということもあり、冒頭で起こる殺人事件と登場人物の間の恋愛感情を二つの軸に、主人公を含めた人物像が深く書き込まれている。謎よりも人物を深く書く作品の方が好みなので、個人的には今回の長編の方が面白く読めたが、「ジョーカーゲーム」の謎解きを期待するとやや肩透かしか。

  • 昭和初期の華族、軍、天皇にかかわるミステリ

  • なかなか良し
    昭和初期の東京
    華族の青年を取り巻く陰謀
    でも最後は兄妹なのね

  • 「人が何かを完全に確信している時、それは決して真実ではないのです」
     清彬は目を伏せて言った。
    「それが、古今東西の人間の歴史が証明してきた信仰の致命的な欠陥です。そして同時に……」
     一瞬、言葉に詰まり、だが、すぐに目を上げて言った。
    「それがロマンスの教訓なのです」
    (P.131)

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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