- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163461106
感想・レビュー・書評
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戦後の政治正史では語られなかった歴史の暗部を照射し、日本の進路を決定づけた「吉田ドクトリン」の功罪を問う。
その上での著者の提言は
(1)戦後日本は、戦争放棄の憲法と日米安全保障条約と言う矛盾する
ものを両立させてきた。(自民党一党独裁と要因となつた)
(2)アメリカの対日占領政策は一貫したものでなく、ホワイトハウスと国務省と国防省の妥協の産物であった。
(3)日本が新憲法を受け入れたのはそうしないと天皇と天皇制を救うことができなかったからである。
(4)吉田茂は天皇を救い、再軍備を避けるために新憲法を利用した。
(5)しかし戦後日本のとってきた吉田路線は不健全なものである。責任の一端はアメリカにもある。
(6)戦後アメリカの対日防衛政策に一貫したものがあるとすれば「両天秤」だ、たとえば「日本がもし軍事支出をかなり増加しなければ批判され、増加すれば批判される。」
(7)現在の日本は袋小路に入って震えている。それはアメリカの両天秤政策を日本人自身が補強してしまったからだ。
(8)日本憲法は日本人自身の問題であり、自分の意思を決定しなければならない。
(9)憲法改正は単に憲法を書き換えるだけでない、問題は複数ある。
政界再編・海外派兵・憲法改正・核武装である。
(10)二大政党制は、政府を対外的に強くする。ワシントンは電話一本で日本を操縦できなくなる。日本の憲法は冷戦が始まったときに改正すべきであった。おそまきながら改正すべきである。海外派兵に対する外国の反対をどう扱うか。これには国際関係の危機を利用するのが最善の策である。
これらの三つの問題が解決すればその先にゴーリスト・オプション(核兵器保有)があるが、それは将来の議題とすればよい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010/10/22:
資料的な価値がある本” -
日本の戦後政治において大きな役割を果たす吉田茂を始めとした戦後政治家の活躍の裏側に存在したアメリカやソビエトとの関係性を具体的な記述により紐解いた一書。マッカーサーを始め、ジョージケナンやアレンダレスが日本の統治政治においてどれだけ深く関わっていたのかがよくわかる。吉田茂という人物自身もアメリカ側の意向とアジア各国の社会主義化という時代背景の中で慌しく駆け巡る様子が大変よく書かれている。アメリカの日本統治時代の政治的要素の内容の書籍としては最も優れた内容の一書であった。