風がページを・・・・― 池澤夏樹の読書日記

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163654300

作品紹介・あらすじ

つぎつぎに出る新刊書の中から読むべき一冊を選ぶ眼力、魅力を引き出す深い読み、遠きを眺め、近きを極める好奇心。科学から小説へ、史書から旅行記へ、ジャンル無限定、縦横無尽の探索と紹介。書評の達人が今、世に送る最もエレガントなブックレビュー集。

感想・レビュー・書評

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  • 文学

  • 池澤夏樹さんの書評は、本当に面白い。

  • 今日は移動時間が長かった。で、乗り換えも多かったから、こういう「開いては20分、閉じて、また開いて15分…」という読み方に最適な、この本を連れ出した。「感想」は、こちらたなぞうでのPipoさんのものに、ほとんど「ご同感」なので、そちらをトレースしてください(って、手抜きでごめんなさい、Pipoさんにも許可無くご登場いただいて失礼)。私には、これくらい硬質な文体がちょうどいい気分でした、特に今日は。書評の対象となっている本との距離の取り方が絶妙だ、と感じます。一箇所だけ引用します。「学者は研究の成果を業界の中でトレードしているだけではいけない。成果は最後には万民の手に渡らなければならない。」…「学者ギョーカイ」にも様々あるでしょうが、それがうまくいくといいなあ、と思った次第です。「学者」の側の問題もとても大きい、もちろん。でも、「そうではない側」にもまた問題はあろう、と思うのです。目先の一文の得にもならぬ(ように見える)営為を日夜重ねている人たちを、ただそれだけで「無為徒食」と看做したりそのことを蔑したりするのはいけないかな、と。ちょっと本論から外れましたが…。「読みたい本」も増えましたが、それより「このひとがこういう読み方をしているんだったら、もう割って入る余地はないな」と思わせられるものも多かったりして。

  • ロマンチックなタイトルと装丁のブックガイド。週刊文春に連載の読書日記をまとめたものとのことです。『パレオマニア』で微妙に外した(笑)こともあり、池澤さんの繊細な筆致でどういうふうに本を紹介されるのか興味を持って、かつ慎重に開きました。体裁はまんま読書日記。紹介されている本をみて感じたことは、・文学作品はヨーロッパもの多し・国内・国外ノンフィクション多し→特に科学・宇宙もの・SFは少数精鋭感アリ・新書多しでした。前3つは、個人的に好みのセレクト。文春読者の年齢層を考えたわけではないと思いますが(笑)、新書が多いのは意外。選ばれる作品は総じて、内容に厚みがあって読みごたえのあるものが目立ったように思います。サン=テグジュペリ夫人の回想録『バラの回想』の書評には、読書マインドをわしづかみにされてしまいました(笑)。文体は池澤さんには珍しく硬質っぽくて、私好みかも。書評もさることながら、池澤さんの読書観が垣間見えるフレーズが愉しいです。「長い小説は…、それこそ寝食を忘れて読みふけったほうがいい。半端に現世に戻ってこないで、あちら側へ行きっぱなしがいい」、おっしゃる通りです。「翻訳書というのは多くの場合、一回しかチャンスが与えられない」…重版かからないもんなー(涙)。「その人の作ならば必ず買って読むという作家を五人か十人持っていると、人生はしのぎやすくなる」は、乱読な私には人数がちょっと微妙ですが、大筋納得いたします(笑)。池澤作品の芳醇さをご存じの向きには味気ないかな…とも思いますが、紹介される本の量では十分お腹いっぱいになり、読みたい本も続出。巻末索引も実用的です。でも、池澤さんの読書に関する本領発揮…という面ではほかの著書に譲るように思いますので、この☆の数となってしまいました。ごめんなさい。-----[2008.10.4 未読リストアップ時のコメント]-----地元新聞の「書店員さんによる本の紹介」コーナーからのお取り置きです。タイトルが素晴らしく、表紙イラストも可愛い…もう書店に並んでいたら買っちゃう(笑)。でも、『パレオマニア』で感じた、「池澤さんはタイトルの付けかたで引っかけられるのでは?」という疑念がちょっと消えない(笑)ので、しばらくキープしておいて考えようと思います。

  • 読むのに時間が掛かった重い一冊。でもそれは、しみじみと味わうために掛けた時間。
    実際に読んでみたい本も10冊くらい拾えたし、個人的に実りのある読書だった。

    9.11を途中にはさんだ5年間に亘る読書日記。本の選び方といい、考え方といい、とても憧れる。
    読むたびに、著者の言う「風」が自分の頭の中にも通り抜けたような気がした。

    装丁も良い。イメージにぴったり。
    あと、新しかったからかもしれないが、インクの「乗り」が綺麗だった気もする。触るとちょっとデコボコしてて。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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