知に働けば蔵が建つ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163677002

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらずの内田節。
    発刊は2005年でちょうど10年前。
    10年前は17歳で内田樹のことはおろか社会の情勢もなにも分かってなかった(今でもさしたる違いはないけれど)。
    10年後の今読むからこそ見えてくることもあるし、自分自身が感じられることもあった。
    内田さんの本は読みやすくて一気読みしたくなる。
    難解な文章もたまには読まないとと思うけれどなかなか気が向かず…
    読書の習慣がなくなって久しい今、リハビリの一冊になってくれれば嬉しい。

  • 現代思想を使って世の中を見るってこうやるんだよ。楽しい上に生きやすいぜと訴える本。同じようなことをプロレスの分野ではターザン山本氏が1980年代終盤〜1990年代前半に実践。内田樹氏は20年後に甦ったター山の亡霊ないしは生き霊なのではないか???

  •  10年くらい前の本、小泉が総理大臣やってた頃のこと。

     本の帯には「弱者は醜い、敗者には何もやるな。負け犬叩きが加速化するリスク社会をどう生きるか?」とある。

     思えば、日本人がはっきりと資本主義を自覚し始めたのはこのころではないか。

     それまでは一億総中流の時代を過ぎ、バブルで盛り上がってハジけ、みんながみんな同じように停滞感を味わっていた。

     小泉総理の時代から新自由主義が入ってきて、あれ?みんながダメだと思ってたら、あいつだけは金を儲けてるぞ?

     引きこもりや不登校は昔からいたけど、NEETに非正規に格差社会にブラック企業と、問題が噴出を始めたわけです。

     そんな転換期が10年ほど前なのではないかな。

     そして10年が経ち日本はどうなったのか。

     「嫌いなことを我慢し続けていると『何かを嫌う』という感受性の回路が機能を麻痺してしまう
     人は『イヤな仕事、嫌いな人間、不快な空間』を『我慢する』ために、みずから感度を下げるのである」

     と筆者は指摘している。

     さて、毎度引用するけど古市憲寿の「絶望の国の幸福な若者たち」より、未来は良くならないと絶望しているのに、現在に対しては幸福感を感じている。

     これ以上良くならないし、夢とか希望とか必要ないものから諦めれば、実は意外と世の中楽しいじゃん。

     ということを感じているが、それは自ら感度を下げていることに他ならない。

     朝井リョウのどの本だったか「僕たちは気がつかないフリをするのが得意だ」という言葉が現代の若者の感覚に的を射ている。

     あ~楽しい世の中だなぁと思いつつも、ふと夜に「いつまでこのまま変わらないんだ?」という考えが頭をよぎって沈んでしまう。

     良くはならないから感度を下げるしかない。下げたところで良くなるはずもないことは理解しているけど、どうしようもない。

     それが現代の若者だと思う。

     少子化対策!もっと若者に給付金を、待機児童ゼロを、町コン企画してもっと出会いを。

     無駄なことやってるなぁと思う。そんなことで結婚しようなんて気が起きるわけないだろうほど、若者の絶望は、深い。

     「その回路をみずから進んでオフにするということは、リスクにたいするセンサーを『捨てる』ことであり、生物学的には『自殺』に等しい」

     この国は緩やかに自殺へ向かっている。
     

     昔は働いてる親父が不機嫌になると怒鳴り散らしたのものだ。

     「誰の稼ぎのおかげで食ってると思ってるんだ」

     本当にそんなことを思って言っているわけではない。このセリフを吐くことが自己証明のようなものだ。
     我が身を供物を捧げることはキリストだけではない。サラリーマンの矜持も根底のところでは変わらない。
     我が身を供物として捧げることこそが人間を人間たらしめる。


     「人間は『すねを齧られる』という経験を通してはじめて『自分にはすねがある』ことを確認し、
     『骨までしゃぶられる』と言う経験を通してはじめて『自分には骨がある』ことを知るという逆転した仕方でしかアイデンティティを獲得することができない生き物である」

     緩やかに自殺に向かうこの国では、アイデンティテイの獲得すら、絶望的である。

  • 内田樹の著書は文章に端折りが無いので非常に読みやすい。読者を意識して書いていることがよく分かる。

  • 章により出来不出来の差が大きい気がする。

  • これで内田氏の貴族と大衆についての話を読んで、前から気になってたオルテガの大衆の反逆を注文。あんまり読める気はしない。

  • 寝ながら学べる構造主義のあとに、内田樹さんに再会した本。2005年、夏のことだった。

  • 内田樹のエッセイ集。というより、本人がブログに小泉政権時代(2004年~2005年)に書き散らした文章を編集者が取捨選択してまとめたもの。というより、内田さんの本はほとんどそういうスタイルらしい。ということで、いろんな著書等での発言と基本的には同じような内容が多い。専門と関わる哲学の話とかはちょっと読んでも分からないけど、個人情報保護だとか、国益と君が代問題とか、英語教育での会話偏重傾向とか、学校の危機管理問題とか、その辺は面白かったかな。

  • 最初から最後まで、「脳みそが溶けそうな」興奮に満ちた本だった。これは内田樹の著作の中でも、上位に入る面白さと言ってよいと思う。

    ニーチェとオルデガの大衆論の差異。
    フッサールの『他我論』とレヴィナスの『他者論』の差異。

    哲学的巨人たちが遺した世界観を、見事に読み解いてくれる。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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