盗聴 二・二六事件

著者 :
  • 文藝春秋
3.72
  • (4)
  • (10)
  • (11)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 60
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163688602

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『文献渉猟2007』より。

  • 図書館の除籍本

  • ネタバレ 2007年刊。NHKのドキュメント「戒厳指令『交信ヲ傍受セヨ』二・二六事件秘録」放送後、新発見の「匂坂資料」(事件の軍法会議担当検事の保管資料)と関係者への新取材から新事実を発掘し、これを纏めた興味深い書。備忘録。①関係者への電話盗聴は特高警察の手で事件発生の1ヶ月以上前から行われていた。②ニセ北一輝による架電を根拠に軍法会議では北死刑の結論へ。この謀略は特高か陸軍による(ただ著者は陸軍説を否定的に)。③事件の2年前には陸軍内でクーデター発生を予期し、カウンタークーデターを周到に検討準備(片倉哀を軸)。
    ④ソ連のスパイ、ゾルゲが独大使館にて、陸軍と独大使館員との対応協議の現場に居合わせた。⑤盗聴記録原盤の軍法会議への提出は見合わせ。盗聴を知られないため(このあたりは昨今の秘密保護法案の行方との関係でも示唆的。秘密の必要性に疑念は挟まないものの、指定と指定解除の恣意的運用の責任を誰が取るのか云々)。

  • 2・26事件って、青年将校がクーデター起こそうとして失敗した事件だっけ?
    あれ?それって5・15だっけ?
    いや、違う。
    だって、犬養毅が殺されたのは言いやすくないほうで、言いやすいほうは未遂だったんだから、にーにーろくが未遂で、ごーいちごが犬養毅……って、あれ?どっちも言いやすくね?

    ……という程度の知識しかないアホな俺でも楽しく読めた。
    嬉しい。

  • 日本の歴史の転回点の1つとなった2.26事件。
    その残されていた録音板から紐解く、
    盗聴されていた会話から何が見えるのか。
    そして、この事件にかかわった人、
    この盗聴にかかわった人のその後の人生。
    読み応えある文章で、ぐいぐい引き込まれました。

  • 偶然発見されたレコードの音声解明と、関係者探索のスリルは、ルポルタージュの王道。推理小説などよりずっと面白い。 ☓「首謀者=北」/〇「首謀者=マレーの虎」この推理が当たっていると日本近代史も見方が変わる。事件や人物の説明も丁寧なので教科書としてもわかりやすい。

  • 著者は、ドキュメンタリー「戒厳指令『交信ヲ傍受セヨ』二・二六事件秘録」(1979年)、「二・二六事件 消された真実―陸軍軍法会議秘録」(1988年)をてがけた元NHKプロデューサー。本書は、その後の調査・取材を踏まえて成ったものである。

    最大の焦点は、「2/29北→安藤」と記された録音盤に残された通話が、本当に北一輝からかかってきたものかどうかだ。この傍受記録は北が安藤大尉(事件首謀者の一人)に資金提供を申し出たものとされるが、北は2/29の時点では既に逮捕されていたし、軽々しい言葉遣いが北に相応しくない。かくして著者は、この通話を憲兵隊が北の名を騙った偽電話であると断じ、偽電話の意図を次のように推測する。

    「この電話は、事件後、裁判の証拠となる可能性をもある程度見越した上で、北一輝を反乱の首謀者に仕立て上げるための、謀略的な意図を秘めていたのである」

    それでは、なぜ北を首謀者に仕立て上げる必要があったのか。著者は、蹶起部隊をめぐる軍内部の混乱を糊塗するため、北ら軍外部の「不逞の輩」に「純真な将校」が指嗾されたという構図を作出する必要があったと考える。軍法会議の強引な訴訟指揮を考慮すると、確かにその可能性も捨て切れない。しかし、事件直後の29日に早々と謀略電話をかけられるものか、判断に迷うところではある。

  • 本書は紛れもなく、歴史モノのノンフィクションなのですが、偶然発掘した戒厳司令部の盗聴テープをつてに、事件の背後に潜む謎を解き明かそうとする過程が、よく出来た推理小説を読んでいるが如く、心に躍動感を覚え、楽しめました。

  • よく「変わっているね」と言われますが、幕末〜昭和の歴史に非常に興味があります。

    というと、勘違いする方もいらっしゃるようですが、、、

    たまたま二二六事件にふと好奇心を持ち、Youtubeで1979年にNHKで放送された

    『戒厳指令「交信」ヲ傍受セヨ 二・二六事件秘録』を見たのがきっかけでした。

    歴史の授業で触りだけ聞かされる「二・二六事件」ですが、これが大きく後の日本を変える

    ターニングポイントになっていた、ということは知りませんでした。

    1979年に、NHKで発見された20枚にのぼるレコード。それにこの二・二六事件前後に関係者の

    電話でのやり取りが盗聴された上に録音されていた、というところから事件の背景、そして事件の

    真の首謀者は一体誰だったのか、というところまで、その当時生きていた関係者に取材をしたり、

    開示された関連資料をもとに書かれた本です。

    軍が政治や財閥を排除してしまうことになってしまった、そしてそこで「利用された」青年将校

    たち。二・二六事件に関する本はたくさん出ているようですが、これは非常に分かりやすく

    事実残った証人や資料を基に偏見少なくまとめられているのではないかと思いました。

  • 件のドキュメンタリーが少し前にアーカイブスで再放送され、それを見ていたので興味があって読んだのだけれど・・・「登場人物一覧」のようなものがついてればもっと読みやすいのにな。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ノンフィクション作家。
1941年熊本県生まれ。66年九州大学卒業後、NHK入局。おもに現代史を中心にドキュメンタリー番組を手がける。『戒厳指令「交信ヲ傍受セヨ」二・二六事件秘録』で、日本新聞協会賞・文化庁芸術祭優秀賞などを受賞。大正大学教授を経て、執筆に専念。『満州国皇帝の秘録―ラストエンペラーと「厳秘会見録」の謎』で、毎日出版文化賞・吉田茂賞を、『トレイシー―日本兵捕虜秘密尋問所』で、講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書『盗聴二・二六事件』『最後の戦犯死刑囚』などがある

「2013年 『四月七日の桜 戦艦「大和」と伊藤整一の最期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中田整一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×