- Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163720708
作品紹介・あらすじ
自身の出身地である大阪・更池から中上健次の故郷・新宮へ。日本全国500以上の「路地」をめぐり歩いた十三年間の記録。
感想・レビュー・書評
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隠されてることでもあるので実質的なことはほとんど何も知らなかった。寝た子を起こすなということもあるけど、知ることも大切かも知れない。
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私にしては珍しく付箋をいっぱい付けた。
再読します。 -
ほんとうに越えられない一線は、実は自分自身がひいてるんだろな。
軽々とその線を飛んでいきたい。
この本を手にして、少しだけ世界が違ってみえる。
路地はそんな遠いとこの話じゃないんじゃないかと思うわけ。 -
この本を読んで思い出すのは、2008年の秋葉原通り魔事件のことだった。
一見して、関係性のない事件が重なって映ったのは、筆者とおなじく「路地」(被差別部落のこと)の出身で、凶悪事件を起こした人物を取材した、次の一文から。
「山下(犯人)が抱えていたもろもろの致命的な欠陥は、私自身の内にも関わりのあることである」
また、犯罪をおかしてしまった実兄を述懐して、「間違いなく兄は、どこかで曲がり角を間違えただけの私なのだ」と語ったところにある。
人は、その過去や生い立ち、ふとしたトラウマに足をからめとられ、引きずられるようにして、その深みにはまりこんでいくことがある。それは、決して遠くの他人のことではなく、すぐとなりにいる「私自身」のことなのだ。
死、殺生、刑罰。それらにつきまとう「穢れ」を忌避する感情。人間の社会を社会たらしめるために、その構造上の欠陥や矛盾といった、膿のようなものをすくいとるようにして、彼ら被差別者たちのような存在が創り出されたのだということが浮かびあがってくる。 -
被差別部落をつなぐ旅の記録。
「被差別の食卓」よりも自分史寄り。
「路地」という呼び方はいいな。
私が無知なせいもあるけど、手垢がついてなくて。
差別が消えることとアイデンティティが消えることがとても近くて、同化以外に対等になれる方法がないのだろうかと切なくなる。
でも、先人が頑張ってくれたから今の若者が部落に無関心な暮らしができるのだという若者の言葉は希望でもある。
人の描き方がとても良い。
ただでさえ差別されている人がこれ以上偏見にさらされないように細心の注意を払って、美化せずに魅力的に描く。
さべつなんてないよと躊躇なく言い切れる「一般」の無自覚な偏見を、悪口にならないようにさりげなく表す。
そういうのが、ただうまいんじゃなくて、悩んで考えて時間をかけて作られていったこの人の価値観によるものだということがよくわかる。 -
2021/10/01
大阪出身昭和55年生まれ、小学校のころ同和の特別授業があった。
人間って教科書もなんとなく記憶にある。
両親共に関西出身、母親が〇〇やから家安いわなどと、、、言った記憶もあり、わたし世代だと、どこどこは部落と知っている程度に差別はあった。私自身は、ただ住んでいるだけでこういう言われをしてしまうなら、正直なところ、その土地にはあえて住みたくないなと思っている。あえて人には言ったりしないが、これを差別というならそうだと思う。
昭和50年、埼玉育ち、両親は福島、熊本の40代の夫は部落というとなにそれ、穢多非人もなにそれただ無知なだけかと思う。 -
路地とは、所謂「非差別エリア」を指す言葉で、その言葉を生んだのは和歌山県新宮市の路地出身の作家故中上健次。著者は大阪の同和地区である更池の出身で、その「路地」という表現をいたく気に入り使い、以来数十年の日本各地に点在する路地を巡る旅を淡々と繰り返している。本書は旅をしつつ自身の半生を語る。旅をして知るのは、地域によって路地での暮らしとその生計は地域性がある。例えば東北地方には存在しないと思っていた著者は本州最北端の青森にも路地を存在することを知る。夏は太鼓を作り、冬は動物の剥製作りで生計を立てている現実を知る。剥製師は「テンで3万・犬で7,8万・熊で15万で注文を受ける」と言う。続けて「弟子になりたければ150万で全てのノウハウを教える。太鼓は1ヶ月で100万、剥製は10回で50万。これで基本は全て含まれていて、開業できる」と言う。「生きた民俗学」を学んだ気がするロードムービー的ルポルタージュ。
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奥が深い。
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「日本の路地を旅する」読んでみました。
出目や生業で穢多、番太、非人と呼ばれた人と雑種賎民が部落民で、この本では多種多様な人達の区別を行わずに、路地出身の筆者が見たもの感じたことが、淡々と素直に書かれていていい本ですね。
路地と私の生活は「玄人と素人」や「彼岸と此岸」に近いような、漠然としていても明確な境界があり、案外、ワンウェイで行けるけど戻れない感じがします。もう少し勉強せねば・・・