清貧と復興 土光敏夫100の言葉

著者 :
  • 文藝春秋
4.09
  • (38)
  • (55)
  • (21)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 415
感想 : 61
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163744506

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • メザシの土光さん。名前しか知らないかったけれどすごい人だ。ビジネス小説の先駆け(合ってるのか?)城山三郎は彼をこう評した。「一瞬一瞬にすべてを賭ける、という生き方の迫力。それが八十年も積り積ると、極上の特別天然記念物でも見る思いがする」。
    著者は報道ステーションニュースデスク所属。報道ステーションで浅野総一郎をまとめた「九転十起」を紹介していたが、そちらでなく土光さんについての著を手に取ってしまった。

    ・2ヶ月で復旧したIHI福島・相馬工場(半年から1年はかかると言われた)。
    久野(総務部長)は「従業員を安心させないと、復興が進まない。家が流された従業員全員に社宅を用意した」と語った。

    ・ボクらの生活は毎日が行き詰まりだ。行き詰まらん方がおかしい。前に進んでいれば必ず行き詰まる。「壁を毎日破れ」といったら「私には壁がありません」という人がいた。「そうか、ないか。君は座っているじゃあないか。立って歩いてみろよ。四畳半だろうと六畳だろうと、立ってあるけば、壁にすぐにぶつかる」といったんだ。

    ・私たちは、ごくわずかだが、“火種のような人”がいることを知っている。自ら、カッカッと人発し燃えている人だ。その人のそばにいると、火花がふりかかり、熱気が伝わってくるような感じを受ける。
    実は、職場や仕事をグイグイ引っ張っているのは、そんな人だ。そうして、まわりの人たちに、火をつけ燃えあがらせているのも、そんな人だ。しかし、誰にも皆、火種はある。必ずある。他の人から、もらい火するようではなさけない。自分の火種には自分で火をつけて燃えあがらせよう。

    ・「新しい朝」という時間は、非常に大きな意味を持っている。過去の歴史上の人物―エジソンもナポレオンも、信長や家康も、どんなに偉かった人でも今日の日の出を見ることはできない。
    …「日に新たに、日々に新たなり」一つだけ座右の銘をあげろといわれれば、躊躇なくこのことばをあげたい。中国・商(殷)時代の湯王が言い出した言葉で、「今日なら今日という日は、天地開闢以来はじめて訪れた日である。それも貧乏人にも王様にも、みな平等にやってくる。そんな大事な一日だから、もっとも有意義にすごさなければならない。そのためには、今日の行いは昨日より新しくよくなり、明日の行いは今日よりもさらに新しくよくなるように修養に心がけるべきである」という意味。湯王は、これを顔を洗う盤に彫り付け、毎朝、自戒したという。

    ・そうした世相に登美は危機感を持ち、「国の滅びるは悪によらずしてその愚による」と言っていた。

    ・玄関前には登美の信念である「正しきものは強くあれ」という石碑が立っている。

    ・幹部の持つ情報は、とかく単色になりがちだ。本来の情報は天然色なのだが、上に昇って来る間にアク抜きされてしまう。そんな薄まり弱まった情報に基づいて、間違った判断をしていたら大変だ。単色情報を天然色情報にもどすには、自らの足で現場を歩き、自らの目で現場を見ることだ。

    ・幹部が偉い人であるゆえんは、一にかかって、上に立つほどより大きく思い責任を負う人であるからだ。幹部は権限もあるが、これは振り回さないほうがよい。できるだけ委譲するほうがよい。そうすると残るのは、責任ばかりだ。…だから経営者や幹部は、ほんとうはつらい人なのである。割に合わない商売なのだ。

    ・その取引は、二、三十万円のものだった。これぐらいの値段のものを、わざわざ社長が売り込みにくるとは思わなかったらしい。彼は恐縮して、「次回からも是非、東芝の製品を購入しますが、それには条件がある。社長自らは絶対に来ないこと」というのであった。…このような私の行動を「土光突撃体制」などと、世間では読んだようだが、私は“社長セールス”は石川島時代からやっていたことだ。しかも、突然、秘書から、「きょうは何々会社の社長に会って、何々のセールスをやって下さい、スケジュールは組んであります」と言われ、のこのこ出かけるわけである。このような事態は、部下からのチャレンジなのだから、私は黙ってレスポンスするのである。

  • いまだに、土光イズムが工場に
    根付いているのが希望と感じました。

    実行力と実践力が伴うからこそ
    その方の言葉に重みが増すのだと思います。

    自分の周りにそのような方がいるのか?
    探してみようと思いました。

    一つ一つの言葉に重みがあるので、
    また、読み返したくなる内容です。

  • ・すごい経営者であり、人間的にも立派な人である。
    ・質素な生活、食事、宴会にはいかない、無駄な経費は使わない。
    ・人間関係を維持するのに夜の接待は不要。
    ・努力、実行力、あきらめない、説得力、等々
    ・人間的な弱みを見せない、隙をみせない。
    ・従業員を解雇しない。
    ・東芝に社長として赴任した初日に労組事務所に挨拶、お酒を持参。
    ・労組との信頼関係を重視。
    ・亡くなってから誇張された部分もあるだろうが、今の時代にこのような人はいないだろう。

  • すごく刺激される一冊。やはり、こういう人物がいたことと、その意識と行動を受け継ぐ気概が必要と考えさせらます。

  • オーディオブックにて視聴

    石川島(後に石川島播磨)重工業、東芝のトップとして辣腕を振るい、経団連会長、臨時行政調査会会長など日本経済及び日本政府の財政の立て直しに東奔西走したメザシの土光さんの名言集。

    ひと言で言えば、無私無欲の人であり、最低限生活が出来るお金だけを手元に残しては、残りを全て母親が設立し、自身が引き継いだ橘学苑に全て寄付していたという。常に現場で働く人を最も尊重するという姿勢を取り続け、社長時代も現場からは「親父親父」と慕われたという。その上、政治との癒着を嫌い、経団連会長時代も政治家からは常に距離を置いていた。

    正直、土光敏夫という人物が、経団連会長でありながら、実に質素な生活を送っていたということぐらいしか知らなかったのだけど・・もう、知れば知るほど土光敏夫のファンになっていった。

    人はこれ程までに崇高な人になれるのだろうか、と途方にくれたくなるほどに崇高な生き方をしている。そこで語られる言葉は、正論中の正論で、時に「正論だけでは物事は通らない」と人が正論を通すことを諦めるような場面でも、土光さんは正論を馬鹿正直に語る。

    僕は到底土光さんの様には生きられないだろうけど、それでも少しでもそちらに近づけたらいいなと思う。

    人として成熟するということはどういうことか、1本筋の通った人生とはどういう物か。ただの机上の空論ではない、土光さんの生き様という確かな証拠が、雄弁にこれらを説明してくれる。

    今後とも、土光さんに関連する本はなるべく目を通して生きたいし、この本(オーディオブック)も折に触れて読み返したい。

  • 生前の土光さんの事はほとんど知らないが、様々な記事などから、「メザシの土光」「清貧の人」というイメージは受けていた。
    松下幸之助 井深大 本田宗一郎などに引けを取らない。
    今の政治家にも、土光さんほど「日本の未来」を考えた人がいるだろうか?
    まさに日本人の経営者だ。
    DNAはIHIや東芝以外にも、日本人なら流れているはずだ。

  • 人生訓だけではなく。政治、社会にまで及ぶ言葉たち。
    土光という人に会って話ができた人たちは、本当に幸せだ。
    土光魂。いまこそ日本に必要なはずだ。

  • 土光敏夫さんの清貧という生き方、なんだか自分が勇気づけられます。心を強く、信念をもって。

  • 土光さんの名言(引用多い)を集めた土光万歳な本。

    IHI、東芝、経団連、臨調はもちろん、家族や生い立ちにまで焦点を当て人となり・思想を探って行こうというスタンス。基本的には持ち上げっぱなしで、挙句の果てには今の経営者に土光のDNAという始末。ただ、うちの会社の前提を示してくれただけあって、なかなか興味をひかれるところもあり。
    気に入ったのは、日々に新たにの精神。人の評価は常に変わる、自分も見直さないとなと思った。ただ、社歌と何らかの関係があったとすれば恐ろしいことである。

    新宿紀伊国屋本店で購入。敵を知り己を知れば百戦して危うからず。

  • 【読書その82】東芝の社長、経団連会長を歴任し、鈴木善幸首相、中曽根康弘行政管理庁長官の下、第2臨調の会長として、行財政改革の最前線に立って国鉄・専売公社・電電公社の民営化などの改革を打ち出した土光敏夫氏。本書は、その土光氏の力強い信念を感じる言葉を紹介した本。人間関係の基本は思いやりという、その土光の姿勢には非常に共感する。土光氏の仕事に対して、人に対して、全身全霊を傾けるその姿勢は本当に素晴らしい。
    また、土光氏の言葉に「人間は変わりうる」というのがある。人には失敗もある、だけど、人間は変わる。その一時点で人を評価はできない。人は変わることはできるのだ。

著者プロフィール

1964年、富山県高岡市生まれ。ジャーナリスト。90年、時事通信社入社。NY特派員などを経て、2001年、テレビ朝日入社。経済部、「報道ステーション」デスクを経て、現在は「グッド! モーニング」ニュースデスク。テレビ局に勤務しながら、2011年から本格的に著作活動を開始。著書に『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』『景気を仕掛けた男「丸井」創業者・青井忠治』『日本への遺言地域再生の神様《豊重哲郎》が起こした奇跡』(いずれも幻冬舎)などがある。

「2019年 『現場発! ニッポン再興』 で使われていた紹介文から引用しています。」

出町譲の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
デールカーネギ...
佐藤 優
落合博満
シーナ・アイエン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×