人類20万年 遙かなる旅路

  • 文藝春秋
3.25
  • (3)
  • (9)
  • (3)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 179
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (533ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163762401

作品紹介・あらすじ

人類はいつ、どこで誕生し、どうやって世界中に住むようになったのだろう。私たちは何者なのだろうか。この謎に、現代科学は新たな光を当てている。著者、アリス・ロバーツは英国ブリストル大学の解剖学者であり、古人類学に精通する科学者(ついでながら非常に美人)。本書は彼女が英BBCの企画で半年間を費やした、人類が数百万年をかけて世界へ広がっていった道筋をたどる壮大な旅の記録である。現生人類、ホモ・サピエンスは「ヒト属」で最後に残った一種だ。時代をさかのぼればヒト属の系統樹には多様な種が存在していた。しかし、3万年前までには、現生人類とネアンデルタール人の2種を残すのみとなり、そして今日、我々だけが残った。現生人類がアフリカで誕生したことは、様々な証拠からほぼ確実となっている。そこから20万年前に「出アフリカ」が起こり、アジアへ渡り、インドをめぐってオーストラリアにまで至った。さらに、ヨーロッパへ広がった者たちは北上してシベリアを経由し、最後にアメリカへと行き着いた。著者はアフリカから出発し、この人類の足跡を追う。灼熱の地の狩猟採集民族や、シベリアの極寒の中でトナカイを遊牧する民族らと過ごし、最先端の遺伝子研究で祖先たちの分岐を明かすラボを訪れ、石器の作成に挑み、壮大な神殿のような洞窟の壁画に圧倒される。著者は自ら人類の進化を追体験し、その風景を生き生きと語る。いわゆる研究書とはまったく異なる筆致で描かれる旅路は知的興奮と感興に満ちている。そして世界各地で筆者が出会う研究者たちも実に魅力的。自らのルーツに思いを馳せ、最先端の人類学のナマの現場で得られる知見に驚嘆する、第一級のサイエンス・ノンフィクションにして紀行文、「古人類もの」の決定版です。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2016.9.28忠生図書館2016.9.27 返却

  •  英BBCで放映された大型科学ドキュメンタリー番組の書籍化。
     番組のパーソナリティとして出演した医師・科学者(バーミンガム大学教授で、古生物病理学博士・解剖学者・人類学者)が、自ら著者となって筆をとっている。

     もとの番組はYouTubeでも観ることができる。それを観ればわかるとおり、著者は清楚でナチュラルな印象の“植物系美人”で、すこぶるチャーミング。
     ただ、版元がそのことを「売り」にして、特設サイトや本のカバーにまで「美人人類学者」と謳うのはどうかと思うけど(笑)。

     著者の容姿のことはさておき、中身もたいへん面白い。本として独立した価値をもっており、元の番組を観ていなくても十分楽しめる。

     私たち現生人類がアフリカを出て世界に広がり、最後にアメリカ大陸に到達するまでのはるかな道のりを、著者が各国の遺跡等を見て回り、その地で研究する第一線の科学者たちに取材しながらたどっていく内容だ。

     私がいちばん知的興奮を覚えたのは、第4章「未開の地での革命」。
     この章では、現生人類がヨーロッパに到達し、ネアンデルタール人(現生人類とは別種であることがわかっている)とニアミスし、けっきょくはネアンデルタール人たちが歴史から消えていくまでの過程がたどられる。

     脳の容量は現生人類を上回り、体格でも優っていたネアンデルタール人が滅び、現生人類が生き残ったのはなぜか? 著者はその理由を、現生人類のほうが優れた文化を築いていたことに見出す。芸術の原型、宗教の原型を生み出したのは現生人類だったのだ。

     芸術などの文化というと、とかく「現実生活の役には立たないもの」ととらえられがちだ。しかし、現生人類は文化的に優れていたからこそ、ネアンデルタール人よりも創意工夫によって困難に打ち勝つ力、協力しあうネットワーク力をもっていた。だから生き残ったのだ。
     「文化の力」を改めて実感させるこの章は、すこぶる感動的である。

  • 世界各地の遺跡や研究者を訪ねて、その体験をまとめたものだが、訪問相手の主張に対する率直な意見や大方の研究者の見方も述べられていて、最新の研究結果が伝わってくる。500ページもある大部の本だが、情報量も多く、読んでよかったと思える。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB12642072

  • 資料番号:011528940
    請求記号:469.2ロ

  • 【美人教授が体当たりで人類の旅路を追う!】20万年前アフリカを出たホモサピエンスはいかに世界へ広まったのか。サバンナからシベリア、南洋まで五大陸を旅する稀有な科学書。

  •  「ヒト」がどこから来たのかに興味を持たない人間は少ないと思うが、本書を読んで「ここまでわかってきたのか」と感嘆する思いを持った。
     「考古学、頭骨の形の研究、古代環境の再現、集団遺伝学といったさまざまな分野からの研究」を総合的に取り上げると、おのずと「ヒト」の歩んできた道がはっきりと浮かび上がってくることが良くわかる。
     本書の優れたところは、今まで判明していなかった道や可能性にとどまっていた理論が、はっきりしてきたことを大胆かつ具体的に指摘していることだろう。
     しかも、それを地球各地を歩いて専門家との対話をするというわかりやすい物語に仕上げている点である。
     おそらく、本書の訳者の力でもあるのだろうが、古人類学という専門領域を「旅行記」のような読みやすく仕上げているからこそ、本書のような分厚い本でありながら、素人でも面白く読みこなすことができる。
     しかし、本書の最終項「旅の終わりに」で著者は「私たちは皆、アフリカのイブという女性の子孫である。つまり、今日どこに暮らし、どんな肌の色をしていようと、わたしたちは皆アフリカ人なのだ」と語っているのは実に印象的である。
     かつて人々は、肌の色や国家の違いで実に愚かな闘いをおこなった。
     現在でも、国家や民族・宗教の違いで争いを続けているが、それが実に愚かなことであることが、本書を読むとよくわかる。
     たかだか数万年前さかのぼるだけで、皆おなじヒトにつながるのだから。
     本書を高く評価したい。

  • 第1章 すべての始まり
    第2章 祖先の足跡
    第3章 遊牧から稲作へ
    第4章 未開の地での革命
    第5章 そして新世界

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00196933

  • 日経

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

人類学者。バーミンガム大学教授(「科学への市民の関与」講座)。1973年イギリス生まれ。テレビ番組の司会者や著作家としても知られ、BBC2で人類進化をテーマとするいくつかのシリーズ――The Incredible Human Journey(「人類 遙かなる旅路」としてNHK Eテレ『地球ドラマチック』で2013年に放映)、Origins of Us、Coast、The Celtsなど――に出演。翻訳された著書に『人類20万年 遙かなる旅路』(文藝春秋)、『アリス博士の人体メディカルツアー 早死にしないための解剖学入門』(フィルムアート社)、『生命進化の偉大なる奇跡』(学研プラス)、編著に『人類の進化大図鑑』(河出書房新社)がある。

「2020年 『飼いならす 世界を変えた10種の動植物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アリス・ロバーツの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
佐藤 優
トマ・ピケティ
ミチオ・カク
ニック・レーン
イアン・スチュア...
ジャレド・ダイア...
シーナ・アイエン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×