その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ

著者 :
  • 文藝春秋
3.12
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本棚登録 : 294
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163805603

作品紹介・あらすじ

小蔵屋を営む老女・お草は、最近くさくさしている。近所に安さと豊富な品揃えが売りの和雑貨店・つづらが開店し、露骨な営業妨害を仕掛けてくるからだ。しかもつづら出店の裏には詐欺まがいの不動産売買の噂があって、草はほうっておけなくなるが…。コーヒー豆と和食器の店を舞台に、老女が街で起きるもめ事を解決するコージー・ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ2
    小蔵屋の近所に安さと豊富な品揃えを売りにした和雑貨点つづらが開店。露骨な営業妨害を仕掛けてくる

    心はザワザワかき乱されるがお草さんの店のコンセプトは揺らがない
    ひと目みて、触れて、なんかいいわね、と思う。一杯飲んで、うまい、と思うそういう品揃えを心がけ、遠方まで出かけて吟味する手間を惜しまない仕入れがら小蔵屋の要。末永く付き合ってほしいから、小さな店だからこそそこは譲れない

    季節に合わせた和食器のディスプレイも読んでいてわくわくする

    さらに、つづら出店の裏には、詐欺まがいの不動産売買の噂も流れ出す
    同じ不動産屋により泣き目を見る人があちこちにいるらしい
    こうなっては黙ってはいられないお草さん

    このシリーズに出てくる事件や事案は、ちょっと難解で
    ハードボイルド

    お草さんを支える従業員の久実さんと友達の由紀乃さんが大好きだ
    明るくほんわかとこの物語を彩り支えている


  • 商売敵・つづら開店。初めはちょっと嫌だなー程度だったのに、だんだん汚いやり口が明らかになり、さらに詐欺まがいの不動産取引きとかずるずる出てきて、どうなることかとハラハラでした。最後、親子のその後は語られませんが、お草さんはそれ以上の関わりを、現実的にも心情的にも避けたのでしょうね。

  • コーヒーと和食器のお店の女主人、草。着物が似合う素敵なおばあさん。彼女の店に訪れる人びととの日常ミステリー。
    日常ミステリーは、わりとほのぼの明るい雰囲気が多いと思っていたけど、これは少し雰囲気が違っていた。謎がとけても、なんともいいようのない寂しさや悲しさがあり、それが逆に良かった。綺麗事だけで作られていないんだ、と。
    コーヒーや茶器が大好きな私には、店のたたずまいの描写もかなり魅力的。
    地にしっかり足がついた、ほろ苦くも優しい、そしてコーヒーの香りが静かにこちらまで漂ってくるような物語。

  • 【収録作品】第一話 如月の人形/第二話 卯月に飛んで/第三話 水無月、揺れる緑の/第四話 葉月の雪の下/第五話 神無月の声/第六話 師走、その日まで

  • 2012/10/25 カバー画ほどあたたかい話ではなかった。

  • ええっ、これで終わり!?なんで!?
    そういえば、前作もそうだっけ……

    思わせぶりに、主人公、お草さんの半生をちらりちらりと見せ、
    最後の章で一気に核心に触れるのだけれど、
    これが意外に肩透かしを食らわされる。
    悪く言えば、書き手の思い込みに振り回されると言った方が良いかも。
    読んでいて、疲れる。

    今回は、全部のお話が連環している。
    久美ちゃんをも引き付ける素敵な青年が登場。
    この彼こそが本作の重要な役どころになるのだけれど……

    あらら、これで終わりかい!?
    これまでウルウルしてきた気持ち返してほしいッ!
    ああ、叫びたい。
    がっかり、がっかり~~~!

    ついでに叫んじゃえっ!
    前作に続き、ほのぼの系の表紙は、お草さんに合わないっ!
    あまりに合わないので笑っちゃうほど。

  • お草さんの過去の一端が出てきたり・・・と物語は面白いのだが
    オチが中途半端

  • 今回も頑張るお草さん(笑)
    前回の続きのようでそうでないような。
    今回は全ての話しが繋がっていて、読み進めていく内にドキドキ続きが気になりあっという間に読み終わってしまった。

    2017.6.14 読了

  • 前作を読んだのはやっぱり2年ほど前。そのときにこの本も一旦は手にしてるけど、読めないまま返却しました。
    今回の第何次かわからん読書ブーム(笑)に至り、すぐにリクエストをかけました。

    前作はゆっくりゆっくり読んだけれど、この本はものすごいいきおいで読んだ。
    あれあれどうした、2年前にはなかなか「消化しきれない」と、思ったはずの内容が、39才になったらすこし受け入れられてるのか(笑)!

    とにかく、面白かった!
    「著者の本は、そう易々と読めないんだよね・・・」
    なんて構えて読み始めたせいか、拍子抜けするくらいスルスルと入ってきて、また前作より面白かったと思う!
    もちろん、次もリクエストしますよ!! ^^

    お草さんについてとか、小蔵屋についてだとかはもちろん覚えていたけど、
    「お草さん離婚歴ありて!」
    とか
    「良一くんて!!」
    とか、忘れていた設定がかなり重くてびっくりしました。
    ちゅうか逆に、そこらへんがこのシリーズのキモなんかもしれへんので忘れてる私のほうがどうかというところか。

    前作を読んだときにも思ったけれど、私も結構年ととったと思います! (どーん)

    自分の見える物事だけを信じて、自分の正義だけを守るために戦うなんてことは、もうできない。
    それよりも、何かが起こったときに、何かの判断をする前には「見方角度を変えると」と、いうことを常に口にするようになった。
    (また今年は同じことを唱える方とほぼ毎日ご一緒する機会に恵まれたので)

    口にするってことは、まだまだ私には板についていないのだけれど、自分のものさしだけでは物事ははかれない。
    そして
    「自分のものさしは正しい」
    と、思って、自分の正義だけを信じている人を相手にするほうが余程骨が折れるのだとも、今年一年でほとほと身にしみた。

    そのくせ、誰かに対して何か憤るようなことがあったとしても、
    「相手と同じ土俵にあがるな」
    とも、何度も何度も口にした。
    同じように喧々諤々と言い合ってもなにも解決しないから、文句はいうなと。文句をいうひまがあるのなら、解決の仕方を考えろと、やっぱり何度か唱えた。

    とはいえ、やっぱり唱えるってことはつい文句を零してしまい、結果
    「相手と同じ目線に立って文句をいうてても始まらない」
    と、自分を制したり、またたしなめてもらったりして
    「はっ」
    と、気付くことも多くて、それからやっと相手の立場に立たねばならなかったり、または相手を同じようにいがみあっていても仕方がないから、その次のことを考えねばならなかったり、柔軟さというのは思いやりと紙一重なんだなと思いました。

    ・・・なので、余計にこの話が身につまされたのかも・・・。

    確かに、このお話ほど私の日常はファンタスティックではありませんけれどもね(笑)!!

    でも、10年前の私やったら間違いなく
    「はっきりしないオチやなー・・・」
    と、なんともいえない読了感を持て余したんやろうな。

    作中にもあったように、解決できないことに自分で折り合いを付けて、たくましく生きることが今の私には羨ましい。
    たくましいというのか、したたかというのか、しなやかというのか、まだまだ人生経験の浅い私にはそういうものが足りない。
    もしかしたら私はセンスがないので、いくら年齢を重ねてもそんなふうには生きれないのかもしれないけれど、とにかく「解決できないこと」ばかりのお話でした。

    けれどいつも見る風景が愛おしく見える夜だってある。
    毎日が忙しいときは、ただ過ぎていくだけが精一杯だったり、翌日のことばかり考えてしまうのだろうけれど、ほんでそういう生活もとても大切だとは思うけれど、たぶん今の私は、ほんの少しだけゆとりがあるんやろうなあ。
    いい意味でも、悪い意味でも。

    何かを解決したいと思えないくらい忙しいほうが、気持ち的には楽かもしれない。
    でも年齢とともに、空虚な気持ちが忙しさに勝っていくのかも。
    そんなことを想像してしまえるくらいには、私も年齢を重ねている。

    だって10代のころの自分と比較しても、きっとあの頃の私にはそんなことは想像できないから。


    以前私が本を読んで感想を書いていたころは、付箋を貼りながら読んでいました。
    「ここ、感想に書きたいな」
    と、思うところにぺたりぺたりと付箋を貼っていたので、感想を書くのも楽(?)やったのだけど、今回は付箋は貼らないと決めております。

    感想というより、
    「この本を読んだ」
    ちゅうような備忘録的に書こうと思っているので、文字数も100文字程度で・・・、とか思ってたんやけど、無理やな(笑)!

    この本は
    「付箋、貼ろうかな~」
    とかためらいながら読みました(貼らんかったけども)。

    先日読んだ「タレーラン」とはまた違う意味で、いきつもどりつしながら読みました。
    あの時、あの登場人物はどんなふうに物をいったっけ、どんな風にお茶を飲んだっけ、と、いうことを戻って確かめながら読み進めました。

    それって、作中で何か物事が起こってから。
    何か起こったときに
    「ああ、あの時あの人が確か」
    と、戻って確かめて
    「やっぱり」
    と、思う。

    読書ならそれが
    「この著者は、細かいところまで書いているなあ!」
    と、膝を打ちたいだけですむけれど、実際の世の中はそういうわけにはいかないんだよね。

    あの時あの人はああしてたよね、なんてあとで振り返っても時間は戻らんわけで・・・。

    なんちゅうか、やっぱりセンスって大事やね。
    人や物を、もっとしっかり見ようと思いました。

    しっかり見るのはできるもんね。
    それに対してどう判断するかは、やっぱり経験やセンスが物を言うのかもしれへんけれども(笑)!

    (2015.05.04)

  • 今回もまた結構シビアでハードな事件に挑む草さん。いいお年なんだから本当に無理なさらず・・・と余計な事を懲りずに思ってしまいます。草さんの周りはいい人もいるのだろうけど、どうも甘えた人や腹黒い人が多い気がして困ります。だからこそこの物語も成立する訳ですが、さんざん苦労してきたのに、まだ尚事件に巻き込まれたり、騒動に巻き込まれたりしなくても。とはいえ、草さんの洞察力と行動力で救われる人がいるのもまた確か。シビアで冷静な草さんだからこそ出来る解決もあるのでしょう。続きも楽しみです。

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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