日本銀行を創った男 小説・松方正義

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163813707
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作品紹介・あらすじ

日本史上最大の経済危機を救った信念の人。西南戦争後の大インフレを退治した松方財政の全貌を描く。『円を創った男-小説・大隈重信』、『儲けすぎた男-小説・安田善次郎』に続く、明治経済小説三部作完結。

感想・レビュー・書評

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  • 西南戦争の後遺症のインフレを抱えていた明治10年代の日本。銀市場への介入により銀と紙幣の平価を目指した大隈財政に対し、松方は過剰紙幣の整理という根治を目指した。インフレを選べば賃金や年金で生活する都市住民が苦しみ、デフレ政策に梶を切れば生産者が苦しむ不況が待っている。幕末開港後の諸式高騰の記憶も覚めやらぬ中、近代国家に相応しい通貨の信任をと考えれば、松方の選んだ道は王道だったと評価することができるだろう。

    この本が出版された2012年の5月という時期を考えれば、強まる日銀への金融緩和圧力に対する伝統的な保守派から放たれた一矢と見ることも可能だ。松方が創った日銀は円紙幣の発行元であり、その価値を維持し高めようと考えるのは自然な成行だ。 松方が範としたフランスやベルギーの中央銀行も、その末裔たるECBにおいては、欧州危機までは通貨高・インフレ予防を第一義としてきた。松方財政は明治史に残る功績だ。保守系政治家として伊藤博文を支えた足跡も認められてよい。しかしだからといって、不換紙幣が定着し、過剰ともいえる資本蓄積が進んだ今日の日本においても、松方財政が金科玉条になる訳ではあるまい。

    日本銀行創設史を活写した本書。私としてはもう終わり?という物足りなさが残った。典型的な保守主義者を全うした松方と野に転じて民権を唱えた大隈。脇役も含めて人間性まで描けばもっと面白くなったんじゃないか。

  • 何気なくお札である日本銀行券を使っているけど、日本銀行が出来た時には様々な種類のお札が流通していたんですね。
    明治初期には所得税がなかったんですね。そりゃ税収が不足するわな。そんなこんなの状況で、大隈重信や伊藤博文などを相手に、やり通すのだからスーパーマンです。
    松方正義さんのお子様の人数を知って、それもまたスゴい!

  • 銀行の銀行としての役割を担い、唯一、通貨を発行する銀行としての日本銀行の基礎を創った松方正義の苦労話を描いた作品。堅い意志のもと、通貨統一の過程でのデフレとの闘いの模様や明治維新という時代を動かした伊藤博文、大隈重信などの人物たちとの関係などについて書かれた部分も面白い。

  • 松方正義が日本銀行を創ったことを初めてしった 関係する有力者との経緯が面白い 西郷隆盛、大久保利通、大隈重信、伊藤博文など
    実績は才覚は評価すべきものだが、それと同様に年功もまた重視すべきではないかと思った

  • 書名通りの内容。
    戊辰、西南戦争の戦費を賄うために大量発行された紙幣が招いたインフレを収めるために増税、不兌換紙幣整理、日銀券発行を行った大蔵卿・松方が主人公。大手術でデフレ、不況を起きるが、それに苦悩しつつも己の信じるところにしたがった。

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