永遠の殺人者 おんぶ探偵・城沢薫の手日記

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163824208

作品紹介・あらすじ

ある月曜日、西東京市の空き家になっているアパートの浴室で男性の死体が発見された。浴槽に座らされた死体は両手首が切断され、血溜まりに浸かった状態で遺棄されていた。死後一日程度が経過しているにもかかわらず血は凝固していない。検査の結果、抗凝固剤と水が混入されていたことが判明。さらに、失われた両手首のうち左手は列車のコンテナの中から、右手は大阪の空き家の壁の中から発見された。状況を調べると左手も右手も土曜日のうちにそれぞれの場所に置かれたとしか思えないのだが、死体の男性は日曜日に元気な姿を目撃されていた――。難事件に手を焼く刑事たちに、警察署の上層部が差し向けた助っ人は、なんと孫の背におぶさったお婆ちゃんだった!? トリックてんこ盛りの作風で「やりすぎミステリー」の異名を持つ本格ミステリー界の俊英が放つ渾身の一作。

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらずのギリギリトリックだが、結構面白く読めた。捜査側の登場人物が魅力的だったけど、みんな濃いのでちょっと散漫な感じ。真相を知り、犯人には同情的になってしまった…

  • 空き家の浴室で発見された、両手首を切断された死体。目撃者の証言や発見された手首の状況などから犯行日時が推定されたが、その前日に被害者の元気が姿が目撃されていた…
    水戸黄門のようなおばあちゃん探偵が活躍。これでもかとトリックが詰め込まれた初期の作品ほどではないが、事件の不可思議性は健在である。一方、探偵役が孫におんぶされたおばあちゃんという微笑ましさもあり、本格ながらガチすぎない読みやすいミステリになっている。
    謎解きに関しては突っ込みたいところも色々あるが、著者の代表的な探偵である海老原浩一よりはこちらの方が好感が持てる。シリーズ化するのかな。

  • 【やりすぎミステリーの旗手が贈る100%の推理小説】空き家の浴槽で発見された死体は両手首が切断され血溜まりに浸かっていた。凶悪な殺人事件に挑むのは孫の背におぶさったお婆ちゃん!

  • なかなか面白かったです。
    ミステリとして初期の小島さんのやりすぎは控えているけど、丁寧な仕事です。
    そして、年代設定とタイトルの意味に意外にじわっときました。

  • 両手首を切断された死体が発見された。そしてその手首は、大阪から密封されて運ばれてきたコンテナの中、大阪の住居の壁の中からそれぞれ発見される。いつ切断され殺されたのかも解らないまま、第二の殺人が起こる。
    トリックもキャラクターも良く出来てはいるが、ありきたりな気がする。おんぶされてるお婆ちゃん探偵というだけで、内容は本格派。それ故にありきたりになってしまった印象。

  • 小島正樹の必要以上の手の込んだトリックと、人間関係の複雑さに少し呆れた。
    真新しさを狙ったのだろうが、やり過ぎて物語の面白味が半減した感がある。
    長編では無く、短篇でユーモアたっぷりに纏めた方が良かった。
    得意の複雑な心理模様を表現するあまり、複数のキャラクターに視点持ちすぎたかな。いつもながら贅沢な物語でした。

  • すごく良く出来た本格ミステリーで、楽しく読みました。

    濃密な作品世界とそこに詰め込まれた謎、
    登場するエキセントリックかつ高飛車な探偵という
    因習とかそういう単語が出てくるようなミステリーの印象が強かった
    小島作品の印象を覆す作品になっている。
    ※この癖の強さが逆に良さでもあり、好きだったりしたのだけど

    ストーリー展開、謎の引っ張り方、事件の進み方、
    キャラクター、読みやすい文章、全てがスムーズで引っかかるところがなく
    自然に読み進められるリーダビリティの高さはこれまでにない出来。

    キャラクターで言うと、
    田無警察署に勤務する由貴野&安達の刑事コンビと
    おんぶ探偵・城沢薫というおばあちゃん&孫の拓という
    4人組がメインの登場人物になっていて
    4人それぞれに役割も見せ場もあって、組み合わせとしてよくできている。

    調査を推進する役として安達という事件一直線刑事キャラがいる一方で
    とぼけた感じのおばあちゃん探偵が場を和らげていく形の
    硬軟混じった状態になって、硬派なだけの刑事小説にならず、
    小説に柔らかみが出ていると思う。

    拓さんも武闘派&自白推進役として活躍しているし
    最初は若干ダメキャラっぽかった由貴野が最後に成長を見せる場面もあり
    以前はキャラクターの部分で若干難を感じることが多かったのに
    今回はキャラクターの見せ方がスムーズになっているのは驚いた。

    ミステリーとしても、最初に登場する右手と左手のトリックからはじまって、
    地獄絵図を見立てた3つの殺人事件、新潟での強盗放火事件から消えた子供の謎と
    テンポよく次から次へと謎が飛び出してきて、読者を飽きさせない。
    このあたりは「やりすぎミステリー」と呼ばれる詰め込み型の作風を特徴とする
    小島氏ならではの作品作りの真骨頂ともいえる。

    詳しくはネタバレになるので控えるが、右手と左手のトリックが出た時には
    「時間差を利用したアリバイトリックか、大技の物理トリックが多い
    小島作品としては珍しいな・・・」と思って読んでいたら、
    やっぱり気合の入った背負投げ一本の大技物理トリックで、
    やられたーという投げられた後の爽快感が格別で妙にうれしくなった。

    正直に言って、タイトルと表紙絵でかなり損をしているんじゃないかと思うけど・・
    本格ミステリーとして魂込めてしっかり作られた作品だと思うので
    もっと評価されてほしいし、読まれてほしい作品だなと。

    過去の小島作品であったアク(好きなところでもあるけど)というか
    濃密でガチなミステリー感が抜けて読みやすい中にも
    しっかりやりすぎミステリーしてる受け入れられやすい作品になっていると思う。

  • タイトルの「永遠の殺人者」って、そういう意味だったのか!犯人の告白でようやく納得しました。

    事件の真相やトリックなど偶然具合が不自然だったような・・・あんなに都合良くいくかなぁ?思わず「こんなのあり〜?やられたぁ」と言いたくなりました。おばあちゃんの謎解きも、「いつの間にそれわかったの?」という感じだったし。竹が貫通した死体の謎だけは、すぐにわかったんだけどなぁ・・・。

    でも薫ばあちゃんは聡明でチャーミング、由貴野さんも素直そう、安達さんは偏屈。と登場人物がそれぞれ個性的。でも安達さん、一体過去に何があったの?捜査と関係のない話だって、そういうところからコトが進展するかもしれないよ。もっと大らかになろうよ。

    おんぶするって、けっこう大変なのよねぇ。おんぶ紐があれば、ずいぶんマシだと思うけどけど。拓さん、いつもおばあちゃんのおんぶ、お疲れ様です。

    法医学教室の七尾さんの、ちょっとトボけた感じがいいカンジ。もっと出番が多かったらよかったのになぁ。

  • この作家さんの本は、初めて読みました。
    とても好みのお話でした。
    薫さんと拓さんがイイですね。
    お二方の過去など、沢山のエピソードがありそうなので、シリーズ化されるかな…?
    期待して待っています。

  • 血の池地獄、火焔地獄、針山地獄・・・見立て殺人。
    デティールはおどろおどろしいのに、キャラはちょっと喰えない4人。
    渋すぎ刑事、気弱な草食刑事と口が達者なおばあちゃん、心やさしく頑丈そうな木こりのその孫。
    謎、また謎で、結末にたどり着くまで何度ものけぞりました。
    読み終えてから「えっえ~!」二度読み必須。

    このおばあちゃん探偵、シリーズ化されるのでしょうか。

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著者プロフィール

埼玉県生まれ。2005年、島田荘司氏との共著により『天に還る舟』(南雲堂)を上梓。2008年、『十三回忌』(原書房)で単独デビューを果たす。2015年、『扼殺のロンド』(双葉社)で第6回「駅の中の本屋さんが選んだエキナカ書店大賞」を受賞。スケールの大きなトリックと、どんでん返しを得意とする。趣味はリバーカヤックと散歩。ビールが大好物!主な著書に『怨み籠の密室』(双葉社)、『ブラッド・ブレイン1~3』(講談社)、『モノクローム・レクイエム』(徳間書店)、『愚者の決断——浜中刑事の杞憂』(南雲堂)など。

「2022年 『仮面の復讐者 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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