憎悪のパレード 池袋ウエストゲートパークXI

著者 :
  • 文藝春秋
3.44
  • (24)
  • (106)
  • (168)
  • (10)
  • (4)
本棚登録 : 793
感想 : 135
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900896

作品紹介・あらすじ

池袋は進化する。あの男たちにまた会える脱法ドラッグ、仮想通貨、ヘイトスピーチ。起こるトラブルは変わってもマコトたちは変わらない。シリーズ第11弾、三年半ぶりに登場。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • シリーズが一旦終了したあと、割と早く再会できました。もっと長く休むのかと思ってた。
    マコトたちは20代後半。昔は思いきり走ってるような焦燥感、スピード感があったけど、ずいぶんと落ち着いてきました。
    年齢を重ねたのはマコトたちだけじゃない。読み手(私)も歳を重ねて感じ方、受け止め方が変化しているのかもしれない。
    なんだかんだ言っても次の巻が出たら、また読むんだけど。このシリーズ、好きなので。

  • マコトとタカシに再会出来て嬉しかった。
    相変わらずホットなお話ばかり。でも若干マコトの口調がおじさんっぽくなってきたような気がしないでもない。まあ、作者も年齢を重ねているので、それが投影されているのかもしれない。ふと、第1作を読み返したくなった。
    世の中にはいろんないい事や悪い事があって、辛いことや苦しいこと、腹立たしいこと、許せないことがある。どれも、一刀両断で解決できなくて、当面の終結しか望めない。小説だから、ある程度すっきりするような展開になっているけど、それでも、初期の作品のようにスカッとさわやか!な結末にはなれないんだな。
    私も「キング誕生の話」が読みたい。次はその話をしてほしいなあ。

  • IWGPシリーズの11作目。
    アマゾンレビューなどの評価を覗いてみると
    もう終わったとか、飽きたなんて声も多いですね。
    水戸黄門なみのいつもパターンじゃないかと。

    だけど実際読んでみましたが、終わってなんかいないですね。
    とても素晴らしい小説だと思います。

    なぜなら僕がこのシリーズに期待しているのは
    別に凝ったストーリー展開でも、
    巧みな心理描写でもなく
    社会派小説としての価値だからです。

    数十年前、松本清張は社会派ミステリというジャンルを作り上げました。
    高度経済成長の影の部分を描いたのが清張ミステリーでした。
    清張ミステリとは常に弱いものや虐げられた人達、
    マイナスからスタートしなくてはならなかった人達の物語でした。

    同じように石田さんは常に弱者の視点からの
    物語を作っているような気がするのです。
    上記のような問題に翻弄されて
    たちゆかなくなっている人達を描いています。
    そのあたりがこのシリーズを社会派小説と考える理由です。

    このシリーズは1998年に始まってから
    常に実社会の様々な問題や話題を扱ってきました。
    出合い系、チーマー、性同一性障害、児童虐待、
    非正規雇用、ラーメンブーム、ネットを介した集団自殺、
    振り込め詐欺、性犯罪、などなど・・・・。

    等身大の若者たちが上記のような
    問題山積みの世の中をいかにサバイブしていくのか?
    そのあたりをシュミュレーション的に
    軽やかで読みやすいストーリーとして
    語ってきたのがこのIWGPというシリーズだと思います。

    そしてこの11作目で題材となっているのは
    脱法ドラック、ノマド、パチンコ依存、
    情報商材、アフィリエイト、ヘイトスピーチ
    などですね。

    特に興味深く読んだのはノマドワーカーのあたりでしょうか。
    一部マスコミなどで取り上げられる日の当たる部分ではない
    リアルに近い影の部分が描かれていて興味深かったです。

    『新しい働き方なんて、メディアがいうのはほとんど幻だよ。IT仕事のどん底で、低賃金の骨折り作業を大量にこなさなくちゃ生活していけない。』

    この物語の登場人物のようにもがいたり
    困り果てている人はたくさんいるはずです。
    そしてこのシリーズの主役はマコトでもキングでもなくて
    実は時代に翻弄され困り切った人達なのではないかと思うのです。

    そんな実際に困っている人が
    この物語を読んだからといって
    問題をすぐに解決できるなんて事はないでしょう。

    だけどこの物語の中で
    解決に向かって立ち上がり
    それを助けてくれる人達の奮闘を読むことによって
    少しは心を慰められるだろうし、
    ちょっとした勇気をもらえるような気がするんですね。

    勝手に筆者の意図を想像しちゃいますけど、
    石田さんのメッセージってこんな感じなんじゃないでしょうか?

    「具体的には何も出来ないかもしれないけど
    とにかくどこかであなたの事を考えている人はいるんだよ」

    そんな風に想像しちゃうんですよね。
    凄く優しさを感じてしまう小説なわけです、
    だからそのあたりが、冒頭に「素晴らしい小説」だと書いた理由です。
    ということでアマゾンレビューでいくら叩かれようが
    僕はこのシリーズ最後まで読み続けていきたいと思っています。

    『おれたちは繊細で優雅な21世紀の人類だ。ギャンブル依存でなくとも、誰もが無数の病気を抱えているに違いない。嘘つきで、見栄っ張りで、攻撃的で、自己中心的。自分は完璧ななずなのに、それでも全然安らげない。不安は心を去らず、やめたいのに他者への攻撃を抑えられない。わかるよ、あんたもおれと同じなのだ。根本治療は難しくとも、あんたも病気とともに心安らかに生きられますように。池袋の埃っぽい街の片隅で、ユキヤやルナといっしょにおれも祈ってる。同じ病を生きる仲間としてね。』

  • 相変わらず時事ネタを取り入れるのは早い。
    危険ドラッグ(当時は違法ドラッグ)にノマドワーカー、ヘイトスピーチとワイドショーの中で扱われた題材ばかり。

    シリーズ始めの辺りは、アンドリュー・ヴァクスばりのアンダーグラウンドなネットワークを使って事件を解決していくのが面白かったが、最近は主人公がワイルドカードを持ちすぎて危機感が薄く感じられる。

  • そっかあ。
    彼らも、それなりにトシとってってんだなぁ。
    と、思えてしまったよ。
    マコトの地の語り口調や、音楽のセレクトや、
    タカシの服の趣味の所為かもだけど
    やっぱ、
    昔と比べるとジタバタが少なくなったしねぇ。
    む~ん・・・安楽椅子探偵かΣヽ(>ε<)みたいな。

    読んでてもぞもぞ感がない分、疲れはしないけど、
    その疲れが『クセ』になってた身としては
    物足りないって言うか
    淋しいって言うか。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    ところで
    読み終えた後の誘惑に逆らいきれず
    今夜のお夕飯は豚汁の我が家です。(笑)

  • 久しぶりに池袋ウエストゲートパークシリーズを読んだ。マコトの語り口が良くて相変わらず軽快に読み進めることができるものの扱ってる内容はかなり現実に沿ったハードなもの。

  • 読みやすい。ただし、いつものパターン。たまにはキングが困るような展開はないのかな。

  • 10巻で終わった・・・と、思ってたから14年に始動してたなんて知らず。本屋で見て「え?あれ?11が最終巻だっけ?」と驚いて手に取ってみて、3年半ぶりの~って書いてあってなるほど納得。
    知らぬ間に続きが始まってました(汗)
    現在12巻も出てるって言うね(笑)
    内容は少し年を取ったマコトが相変わらず揉め事に首をつっこんでく話。そりゃそうだろうけど(笑)
    でもマンネリ感は否めず。
    ヘイストピーチへの嫌悪感はとても共感。
    世の中最近「死ね」って軽く言い過ぎだと思うんだよね。
    マンネリを感じてもやっぱり続きが出れば読まずにいられないIWGP。
    結局好きなんだよね(笑)

  • ドキドキやスリル、疾走感に魅了されたシリーズだったけど、目的が変わってきた。脱法ドラッグ、こんな事件があったよね。ギャンブル依存症についてこう感じているよ。非正規雇用やヘイトスピーチ、どう思う?と作者と話しているような気持ちに。文体がマコトの語り口調だからでしょうか。石田衣良さんの意見はこうなんだ、あの人は世界をこう見ているんだな~と。日常生活で大きな声で意見交換をするテーマではないから、大人の意見の1つとして知ることが出来て良い。
    小説としても作者の文章は比喩がキレイで的確で楽しめるけど、内輪ネタが多くてびっくりしたかな。やっぱりシリーズになって長いから、仕方ない?マコトのトラブルシューティングという言葉はもうしっくりこないし、出てこない(たぶん)。タカシがいてサルがいて、マコトには強力なネットワークが十分すぎるほどあるから、奇想天外な展開もない。それでもIWGPシリーズが大好きで彼らのこれからを見せてもらいたいから、何度でも読むし、新刊が出たら同じようにワクワクしながら手に取るのだと思う。

  • 3年半ぶりに戻ってきたIWGPシリーズ、引き続き。
    「北口スモークタワー」…1月の池袋、マコトの元にタカシとボーイッシュな12歳の少女ミオンがやってくる。ミオンは通称スモークタワーを放火しようとしていた。脱法ハーブによってミオンのばあは骨折し、杖なしでは歩けない状態に。マコトは通称教授から脱法ハーブについてレクチャーを受け、池袋の街からスモークタワーを沈めるべく作戦を立てる。吉岡も出てくるしGボーイズも活躍するし、軽快に話が進むIWGPっぽいお話。
    「ギャンブラーズ・ゴールド」…春。タカシからの仕事はパチンコのゴト師探し。そこでゴト師に詳しいユキヤと出会う。でもそのユキヤは立派なギャンブル依存症だった。ゴト師探しの方はユキヤとGボーイズの連携でさくっと片付いたけど、ユキヤはそれからマコトの元に、お金を貸してくれと現れるように。ユキヤには妻ミサトと娘ルナがいた。その生活はボロボロ。ギャンブル、借金、取り立て。そこでギャンブラーを助けてくれるという山崎という男に出会う。ユキヤはどうしようもない男だけど、ちゃんと更生するために山崎の力をかりて依存症と向き合う。ギャンブル依存症でなくとも、誰もが無数の病気を抱えているってフレーズが印象的。
    「西池袋ノマドトラップ」…地獄のように暑い夏、ノマドワーカーのお話。コワーキング・スペース連続襲撃事件が起きる。マコトはコラムネタ探しのため偶然見つけたザ・ストリームでレオンというノマドワーカーに出会う。高梨兄弟・ツインデビルをビットゴールドに誘ってしまったレオン。ネズミ講。配当金が支払われなくなったことに怒った高梨兄弟はレオンを脅すため襲撃事件を起こしていた。マコトとタカシで高梨兄弟を嵌める。タカシのおかげでさくっと解決。ノマドとかコワーキングとか初めて知った単語。世の中はどんどん変化してる。
    「憎悪のパレード」…ヘイトスピーチのお話。なかなか難しい問題。またクーやリンも出てくる。中国人、再開発、上海系、北京系、右翼、デモ。複雑で利害関係とかはよく分からなかったけど、ただこの街を守るっていう、マコトやタカシの心意気が素敵。IWGPらしい。マコト、クー、タカシやサル達でわいわいお花見してるところ想像したら楽しい。このシリーズ11弾はかなり今の日本をうつしだしてるなあと。シリーズ初期のような疾走感溢れる池袋のガキたちの日常感はちょっとないけど、でもきっとそれが、時代が流れてるってことなんだなあと。ちゃんとマコトたちも歳をとってる。日本も、池袋もどんどん時が流れてる。そんな今を、ちゃんとうつしだしてると思う。

全135件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石田衣良の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
湊 かなえ
宮部 みゆき
米澤 穂信
宮部 みゆき
有川 浩
村上 春樹
朝井リョウ
宮部 みゆき
東野 圭吾
伊坂 幸太郎
64
横山 秀夫
東野 圭吾
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×