奴隷小説

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 95
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901961

作品紹介・あらすじ

突然原理主義者らしき兵士に襲われ、泥に囲まれた島に囚われてしまった女子高生たち(「泥」)。村の長老との結婚を拒絶する女は舌を抜かれてしまう。それがこの村の掟。そしてあらたな結婚の相手として、ある少女が選ばれた(「雀」)。アイドルを目指す「夢の奴隷」である少女。彼女の「神様」の意外な姿とは?(「神様男」)。管理所に収容された人々は「山羊の群れ」と呼ばれ、理不尽で過酷な労働に従事せざるを得ない。そして時には動物を殺すより躊躇なく殺される。死と隣り合わせの鐘突き番にさせられた少年の運命は?(「山羊の目は空を青く映すか」)。 時代や場所にかかわらず、人間社会に時折現出する、さまざまな抑圧と奴隷状態。それは「かつて」の「遠い場所」ではなく、「いま」「ここ」で起きてもなんら不思議ではない。本作を読むことも、もしかすると囚われのひとつなのかも――。 何かに囚われた奴隷的な状況であることのみが共通する、七つの物語。桐野夏生の想像力と感応力が炸裂した、超異色短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 桐野夏生さん、初めての一冊となる本書は異作だったのかな〜と。正直、読んでる側からおどろおどろしさや不快感を感じながらも結末を知りたいという興味に終始包まれた。

    7つの短編、時代も人も関連性はない、あるのは 無倫理の世界観。
    タイトル名がそのまま当てはまる、
    『奴隷』とは理不尽で不平等極まる身分、その環境を指し、必ず支配者たる対極の存在があるということ。

    ある編では異次元の狂気の昔話の世界で女性が男の所有物として甚振られる「性の奴隷」だ。意にそぐわなければ舌を斬られ眼を潰される。。また、ある編では現代の1アイドルを夢見る10代姉妹とオタク、プロダクションの従属性を母目線で危うく語るような…最後の編も、かなり強烈、収容所の中にも序列があり、監視側の天国の世界を垣間見ることを自身の生きられる道より優先させた父と息子。。

    あくまでもブラックファンタジーとして楽しむか、太古の昔からいたる場所であった隷属制度、この現実をオーバーラップした世界の話しとして捉えるかは 人それぞれなのだろう。

    自分なりに気付かされ、救われる気持ちになれたのは 真の服従はないんだなって。。心の中までは支配できない。人の信仰心、好奇心も不死身なのだということ。

  • 希望のない囲われた泥の中のような世界で暮らす人たちを扱った短編集。
    突飛なストーリーばかりでありながら、もしかして世界の中には本当にこういう環境がリアルにあるんじゃ・・?と思わせる恐ろしさ。
    読んだ後、どんよりする本(--;)。

  • 短編集
    桐野さんの小説は、ほとんど読んでいるつもりだが、短編集は最近読んだ記憶がない。
    それぞれに「奴隷」小説だった。明るい話であるはずもないが、全くの作り話だと思えないのが怖い。「泥」を読んで、全くひどい話だけど、今現在のどこかの国のようでもあるなあと思っていたら、最後の「山羊の目は空を青く映すか」では、「日本の男の背広を作ってる」。目が覚まされた。
    作り話としか思えないような残酷な話が、単なる空想話ではないのだと気づいてしまった時、なんだかものすごく反省する気持ちになった。
    桐野さんの長編を読んで、そんなつもりで読んだのではなくても、社会的な事象を勉強することも多い。短編もうっかり読んでいるわけにはいかないのだった。

  • 短編集でどの話も残酷でおぞましく、嫌な読後感。
    「雀」は日本昔話をアレンジしていて、残酷な場面もあるがその世界は面白くて、
    昔こんなこともあったのかも、と思わせるものがある。
    終わり方が尻切れっぽくて、この続きが読みたくなる。

  • 桐野さんのおどろおどろしさがみっちり。
    冒頭の「雀」が一番怖かった。

  • 初の桐野作品。

    「泥」などは素人でも思い付く着想(もちろんそれを物語として紡げるかどうかはまた別の話)だが、「神様男」はさすがプロだと思った(あの世界の隷属性をあの形で描けるセンスに感嘆した)。

    本書の中で私を一番鬱屈させたのは「山羊の目は空を青く映すか」(読んだその日の夢に出てきた位だ)。

    「告白」は是非続編を読んでみたい(文芸誌では既出かもしれないが…)。

    えにぃうぇい…

    最初は塩野七生と混同していたり、新聞広告などでその名を知ってからも俗なエンタメ作家だと思っていた自分が非常に恥ずかしい。

  • 男女とも囚われているお話の短編集。
    果てしなく想像が広がって救いのない結末を迎えるところが強烈に後味として残ります。

  • 何かに囚われている人を主人公にした7話からなる短編集。

    囚われているというのは、分かりやすくその状況がまるでタイトルの奴隷のように・・・というのもあれば、精神が囚われている話もある。

    1話目の「雀」、続く「泥」、最後の話「山羊の目は空を青く映すか」というのは主人公を取り巻く状況が過酷で、正に奴隷のように生きる人たちの話。

    「雀」の主人公の少女は閉鎖的な村で醜い長老なる老人に支配されている。
    「泥」はテロリストに捕らえられ、逃げ場のない泥に囲まれた島に囚われた少女の話。
    「山羊の目は空を青く映すか」は、過酷な鐘撞きという労働を課せられる少年の話。

    どの話も状況設定がすごい。
    よくこんな事を考えつくな~と思うし、文章力があるので無理に想像しようとしなくてもリアルに主人公の状況が思い浮かぶし、実感できる。
    自分がこんな状況だったら・・・ゾッとして死んだ方がマシだと思う。
    読み終えると、各話のタイトルがどれだけ残酷だったり、皮肉的なのかが改めて分かる。

    だから話には引き込まれるけど、どの話もラストがあっさりしていて尻切れトンボのような印象だったのが残念。
    「あれ?これで終わり?タイトル変えて次につながってるんじゃないの?」と読み始めた時に思ってしまったほど。

    主人公たちはほとんどが自由になりたいと願う。
    その手段は各話それぞれで、望まないのに「囚われていた」ためにそうなった、という結末もある。

    読み終えた後に表紙を見て、これは「泥」と最後の話をイメージしたものなのかな?と思った。

  • 何かに囚われる奴隷にまつわる短編集です。
    どの当事者にも絶対なりたくない!と思う。
    どれも読後の感想が後味悪い。
    本当のラストは読者の想像におまかせ…的な感じが唯一の救いか。
    いや、私はハッピーエンドが想像できなかったけど(笑)
    完全なるイヤミスですね。
    短いので読みやすいです。

  • 短編7編。
    奴隷小説、確かに。
    行動を制限され自由を失うって何より嫌だな。
    『泥』が印象的だった。
    あたしも、泥の中を歩くことを選ぶ。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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