なんでわざわざ中年体育

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905358

感想・レビュー・書評

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  • 角田さんがボクシングジムに通っているのはだいぶ前から知っていたが、その後スポーツクラブに入会し、走るのが嫌いと言いながらランニングを始めたときは、ただただ「偉いなぁ…生真面目だなぁ…」と他人事のように思っていた。それがいつの間にかマラソン大会に出るまでになり、本書ではトレイルランニング、登山、ボルダリング、ヨガにまで挑戦している。角田さんがますます未知の世界に足を踏み入れているように感じていた。何しろすさまじい運動音痴の私、大好きな角田さんのエッセイとはいえ、この内容を楽しめるか不安な思いを抱えながら読み始めた…が、びっくり、意外とハマりました!
    色々な運動に挑戦の前半は、体験談という印象が強かったが、トレイルランニングやマラソンなど「走る」ことに軸を置いた後半は、どうやってタイムをのばしていくかという目標が明確になり、紆余曲折を経ながら少~しずつ成長していく過程が面白い!とはいえ、走る、登る、の苦しそうな描写はこちらまでしんどく感じられてしまい、ダメな人はダメかもな…。あぁ、私まで息苦しい~と辛くなってきたところで美しい風景の描写!活字を追いながら、苦しみも楽しみも疑似体験できるなんて、ちょっとビックリした。黙々と走るのが目的だと思っていたフルマラソンも、景色や沿道の応援、そして飲食を楽しみながら走ることができるなんて、初めて知った。ボルドーのワイン飲みつつマラソンなんて楽しそうだな~。ステーキとか牡蠣とか、おいしそうだった。
    本書きっかけでスポーツに開眼…はしないだろうけど、無縁だと思っていた世界の一部を覗かせてもらって、すごく新鮮でありました。

  • 角田光代さんが文字通り体当たりで挑む「中年体育」。
    心得としてまずは自分が「中年」だということを自覚すべし。
    そして無闇に高い志は持たず、長く続けるよう心掛ける。

    そんな角田さんは週末ランを始めてかれこれ9年(2015年当時)というから驚き。
    しかも走ることも汗をかくことも嫌いなのに、である。
    週末ランのみならず年に数回マラソン大会に参加されていて、走っている最中に思うことは「暇だな」ということ。
    そしてゴールゲートを踏んだ時に思うことは「もう走らなくていい!」…。
    それなのに大会が終わると次の大会を探してエントリーするのだから、やっぱり好きなのでは?と思えてならない。

    沖縄の那覇マラソンでは走っている途中に配られる沖縄そばやサーターアンダギー、泡盛に驚いたり、山道を走って骨折したり、旅先で見知らぬ道を走ったり、フランスでワインを飲みながら走ったり(これはちょっと羨ましい)、ととても一冊に収まりきれないほどの角田さんのラン体験は、読んでいてこちらまで楽しい気分にさせてくれる。
    思いっきり沢山走ってゴールした後に飲むビールは格別。
    走りきった達成感ときんきんに冷えたビールが角田さんのご褒美であり、走り続ける原動力なんだろうな。
    そして「やると決めたのだから、やるのだ」「ここで歩けば自分にばれる。私だけが自分のズルを知っている。神さまは忘れても私は忘れない」等々角田さんの意志の強さにも感動した。

    今も角田さんはきっとどこかで、ブツブツ言いながら走り続けているに違いない。

  • 運動が嫌いなのに、フルマラソンをも走る角田光代さんの運動エッセイ。
    マラソン、トレラン、ボルダリング、ヨガ、登山など、角田さんが体験、参加したもの。やりたくない、という正直な気持ちを表現するのがおもしろい。ボルダリングの回は笑った。高所恐怖症なのに、上に登って「出」の字状態で降りれない笑。等身大で、普通に中年で、でも周りの力も借りながら体を動かし続ける角田さん。面白い。

  • 角田さんはやっぱりすごい。
    かっこいい。
    マラソン大会で走っていて歩きたくなった時、「ここで歩いたら自分にばれる」と走り続けるそうです。
    かっこいい。
    怖いのは他人の目ではなく、お天道様でもなく、自分の目なのだ。
    負けない姿を自分に見せ続けることで、頑張り続けられるのかもしれない。

    マラソンはつらそうで、やってみたいなんて思えない。
    でも、ちょっとだけ、自分にも出来るのかどうか試してみたくなる。
    そんな本でした。

  • 走ることは楽しいけれど同じぐらい辛かったりする。共感満載!「旅先でランニング」の章が読んでいて一番楽しかった。こちら関西なので、手記にある興味深い山にはたぶん行けないだろうなというのが残念。

  • からだを動かせ。
    動かさないと、さび付くぞ。
    さび付くだけじゃなく、いろいろがたがくるぞ。
    このままだと待っているのはおそろしい未来だぞ。

    「健康」と「運動」にまつわる世間の警句はこのように満ち満ちている。
    そしてそれを目にするたび、「ああ、からだをうごかさねば・・・」と思うのだが、続かない。
    これっぽっちも続かない。

    だけど、わたしの場合運動嫌いというのは、学校の体育の「苦手さ」からきているように思う。一番の理由は「比べられる」
    だけど、大人になったら、運動して比べられるひとってほとんどいない。(アスリート以外)

    また、読書と同じで、手当たりしだい興味を持ったものを手に取って読んでみないと、自分がそれを好きなのか嫌いなのかむいているのかいないのかわからない。
    ゆえに、自分なりに、自分のペースで、からだを動かすことを意識しないといけない。
    世間に流されるのではなく。
    おとななのだから・・・。
    だれも、「体育の時間」とわざわざ作ってくれないのだから・・・。

    と、最近思うのでした。
    ま、とりあえずわたし、走るのは無理です・・・・。

  • 最近ランニングを始めた私に勇気と楽しみをもたらす本だった。

  • スタッフさんの企画でチャレンジしてみた、との体験記。面白くこれらを書き下すのは難しい。

  • 読んでいてクスッとなる。那覇マラソンの所を読むと私も走ってみたくなる。角田さん体力ありますね。

  • 私も今すぐ走りたいと思った

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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