おもちゃ絵芳藤

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906423

感想・レビュー・書評

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  • 先日国芳を描いた作品を読んだのだが、その流れで今回は弟子の芳藤の物語。
    時代が江戸から明治に代わり、版画から活版へ、読売から新聞へ、そして絵は写真に取って変わられるのかという背景の中、芳藤始め芳年、河鍋暁斎など、様々な絵師たちのもがく姿が描かれる。
    筆を折って別の生業を探す者、浮世絵でない新しい絵を描く者、海外から浮世絵の評価を得て注目される者、そんな中、芳藤は愚直に低評価な玩具絵を描き続け、弟弟子たちを思いやる。
    テーマは良いのだが、物語の展開や表現が地味で読み進めるのに時間がかかった。
    芳藤は決して無名な絵師ではないのでもう少し盛り上げても良かったのでは?と思った。が、当時はこの程度の評価だったのかな。

  • 江戸時代末期から激動の明治を生きた歌川国芳の弟子・芳藤の半生を描いた作品。作品は国芳の死後、浮世絵師として生きていくのが難しくなった新時代を、主人公を含め、月岡芳年・河鍋暁斎たち浮世絵師や版元が、どのように生き抜いていくかにスポットを当て描いている。軽いタッチで読むことができる本だが、読み応えのあるいい作品だと思う。

  • 他の本に出てくる芳藤のキャラが好きな上に、最近展覧会で芳藤のおもちゃ絵をたくさん見てきたところだったので、とっても楽しみにしていました!芳藤が生きたのは、江戸から明治にかけての激動の時代。浮世絵が流行らなくなり、多くの絵師が筆を折っていく。不器用で、時代に取り残され、それでも芳藤は絵を描くしかない。絵筆を握ったまま死んだ芳艶。版元を裏切って新聞社を立ち上げた幾次郎。狩野派最後の絵師として、死ぬ気で博覧会の絵を描き上げた芳艶。皆が皆、必死で、絵師として生き抜こうとしていた。 とても良かったです。

  • 人気絵師になれない葛藤を抱きながら,おもちゃ絵を丁寧に描いて一生を送った歌川芳藤.誠実な人柄で弟弟子や兄弟子の面倒を見,国芳塾を支え,幕末から明治へと変わる時代を不器用に生きた.しっかり名前は残っているよと伝えられるものなら伝えたいです.

  • 浮世絵師に興味がある
    歌川芳藤といえば「子猫を集め大猫にする」の寄せ絵
    の浮世絵師ですね。
    時代が、幕末から明治にかけての激動期であることにも
    また興味深い。
    歌川国芳、河鍋暁斎、月岡芳年、落合芳幾、小林清親、
    実在の絵師たちが作者の想像のフィルターを通して物語を進めていく。その人物たちのキャラクター仕立てもまた楽しませてもらいました。

  • 河鍋暁斎と関わりもあり月岡芳年の兄弟子という、好きな作家と関わり深い芳藤を描いた作品。
    いい題材だ、興味あり!...と思って読んだのだが、個人的には正直ストーリーや絵師の描写、絵に向かうこころ根などの描き方が消化不良で足りない足りない
    、非常に残念な後味だった。
    ゴテゴテと要らぬ表現などは無いし、スムーズに展開するんだけども、時代や求められる作風に取り残されてしまう焦燥感や絵師として、周りの一流とは自分は及ばないという残酷な評価の享受について、なんかもっとありそう...と素人ながら読んでて感じた。

    著者が、「絵を描くこと」をもっと掘り下げてみて、十分咀嚼してから挑むべき題材だったんじゃないかなーなどと偉そうにも思うのは、曲がりなりにも美術を学んだ者として思うところだった。

  • 偉大な大絵師達の間で地味に生きた、歌川芳藤。イイなあと思ったけど、ググったらそれなりに名を成してるんじゃないの、騙されたw
    一つだけ気に入らないのは、ジョサイア・コンドルのセリフ。「…なのデス」「…しまシタ」ってか。語尾だけカナって、ノンネイティヴを舐めとんのかっっ、ふざけんな。

  • 出だし、初めて読む作者の日本語がどうにも引っかかって、なかなか前に進まない。二章のまんなかすぎて、お清さんが亡くなったあたりからぐっと引き込まれ、ジレッタイけど読ませます。

  • 明治に入って浮世絵錦絵が廃れていく中で生き抜こうとする絵師たちの物語。
    ちょうど暁斎展や龍馬展での芳年の絵を観たばかりでタイムリー。

  • 書き下ろし

    やっと納得できる絵を描けるようになったというのに、死に瀕した絵師は思う。「あたしの人生は空っぽだったかもしれない。それでもあたしの筆先にはすべてが詰まってるんだねえ。だから、絵師はやめられないんだねえ・・・。」

    伝統的な浮世絵が廃れていく幕末から明治を生きた浮世絵師、歌川芳藤。新しい道を見つけて売れっ子になっていった弟弟子たちに比べて、純粋なゆえに生き方が不器用で、遊んでは捨てられる子供向けの「おもちゃ絵」を描いた。

    これを読んでいて『ねこのおもちゃ絵:国芳一門の猫絵図鑑』を見つけ、芳藤の絵に接することができて良かった。

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著者プロフィール

1986年東京都生まれ。2012年『蒲生の記』で第18回歴史群像大賞優秀賞を受賞。2013年『洛中洛外画狂伝』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』で第7回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。演劇の原案提供も手がけている。他の著書に『吉宗の星』『ええじゃないか』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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