今、ミステリ界一の曲者といえば、早坂吝さん以外にない。前作『双蛇密室』は色々な意味で呆れる作品だったが、はるかに呆れる作品が届けられるとは。
主人公は、身長130cmの、ドローン探偵こと飛鷹六騎。本人は、≪黒羽を継ぐ者≫だと主張しているが…。ドローンとは、もちろん、テレビでも話題になったあのドローンである。ドローンを駆使して事件を解決するから、ドローン探偵なのだ。
最先端の技術を取り入れた本格は、意外と少ない。正直、保守的なジャンルではある。冒頭の読者への挑戦状によると、早坂さんは、推理小説のトリックは出尽くしたという意見には与しないという。ドローンを使ったトリックであると、堂々明言している。
一発ネタ的作品であることは、書いてもいいだろう。ありがちな舞台と、ありがちな嵐の山荘パターン。登場人物の背景描写は薄っぺらいし、北欧神話ネタはこれまた薄っぺらい。終末思想みたいなのもどこかで読んだことがある。焦点はトリックだけ。トリックに相当の自信があるに違いない!
…などと、本気で思ったわけではない。過大な期待はしていなかった。いざ、真相が明かされてみると、ドローンの使い方が予想と違っていた。確かに、ドローンを使ったトリックではあるが……。釈然としないまま、とりあえず調べてみた。
なるほど、僕は知らなかったが、これなら本格の古典的ルールに違反はしていない。ルールを逸脱しない範囲で、トリックは無限であることを、早坂吝は示してくれたと言えるだろう。もしかしたら、後世に語り継がれる作品かもしれない。
それなのに、何だろう、この拭えないもやもやは…。星0個にすべきか、それとも5個にすべきか。ここまでもやもやさせるのは、ある意味、すごい手腕ではある。なぜか癖になるんだよなあ。
本作を受け取ったとTwitterで語っていた、綾辻行人さんの感想はいかに。