愛が嫌い

著者 :
  • 文藝春秋
3.26
  • (3)
  • (12)
  • (10)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 205
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910444

作品紹介・あらすじ

おおきくなる、つよく逞しく、この夜を越えてゆけ。自分の、ひとつひとつの輪郭がぼやけて、危機感をもてないまま今日も一日をやり過ごす。就職して恋愛結婚して、その先に何があるだろう。地震に金融崩壊。カタストロフに満ちた社会で、丁寧な明日をうまく保てない。ある日、夜の川のたもとで出会った少年。女友達の幼い子ども。そして舞い込んできたルームメイト。時を重ねて、夜の時間がほどけてゆく。黄昏日本の、みずみずしさをたたえた青春物語。「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」の3作を収録した新芥川賞作家の飛翔作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • おだやかな日常の中に確かに存在する、寂しさや、言い様のない不安、暗さ、ねじれとも呼べないくらいのねじれ。日向と日陰のあわいを読む印象。

  • 三つの短編集。「しずけさ」は引きこもりの青年と家庭に問題のある少年の2人の深夜の交流。「愛が嫌い」は文芸誌で読んでいたけど、また感動した。「生きるからだ」は働きながらも感慨を突然失った青年の日常。どの作品も難しくはない言葉を使ってはいるが、言葉になりにくいことを描写し続けるのはさすが。景色が浮かぶ。

  • ひらがな表記が多かったり、表現がすらすら読めないところが多いが、うつ病や精神的に悩みがある人の思考回路を表現しているのかな?

  • 2022.05.08
    短編集だが、かなり読みにくかった。
    筆者のこだわりかと思うが、普段漢字で書く単語がひらがなであったり、その逆があって難しく感じた。
    そろそろ面白くなってきたぞ!って所で終わってしまうので消化不良であった。

  • 読書開始日:2022年3月12日
    読書終了日:2022年3月19日
    所感
    自分には合わなかった。
    多分経験した人にしかわからない部分が多い。
    自分はそういった人に寄り添えないのかと悲しい気持ちになった。
    いつもの読書のような共感が本作からはどうしても得られなかった。読む速度がそれを物語る。
    いざそういった人と対峙するとこんな感じなのだろうと思う。
    ただ【生きるからだ】でも一文「人格より優先したいものが強くある」と言う部分はわかる気がする。ここ数ヶ月だ。自分も自己同一性をロストして、人格の不必要の可能性に気付いたのは。ただ上松程掘れてはいない。
    書いているうちに共感がたくさん出てきた。以前の自分に戻るのが怖いこと、人格を失くすことで支障をきたすものが少なからずあること、人間味がなくなること
    でも、自分が好きだと思える範囲を大切にするなら有効な手立てだと思う。
    また読みたい。

    【しずけさ】
    大人ってのは、自我がない
    話を自分で拓いていく人は、どれだけ語っても自分に辿り着けない。終着点が向こうから来ると思ってる。その逆はある程度が終着だと折り合いがつけられる人
    粒子のこぼれで字を見る
    ゆううつがために自分の欲望に沿った浪費ができないのがいま。だからこそ逆、適度な浪費
    寝袋
    【愛が嫌い】
    感動
    喃語
    地震や不倫や金融崩壊。そういったカタストロフを想像せず築く丁寧な明日をうまく保てない
    鬱は今が強い
    ただそう言う雰囲気のことを言いたいだけ
    憩えない
    惹句
    世間からすると「ふつう」の域に閉じ込められ、その中で稼ぎに育児にとフル稼働する真菜加
    ひろ
    【生きるからだ】
    感慨の記憶
    鬱はかなしみすら感じることの無い無感覚の蓄積
    営業は相手の欲望を言語化し、それを叶えず自分の願いを相手に通すスキルが要求される
    モネ、睡蓮
    しろいうつわの底で水に浸っている鱈を見て、身につけた白い半袖シャツからのびた腕が涼しい
    困難宗教という磁場
    自己同一性なんてくそ、幻の自分でいい
    人生の自己同一性をロストしている
    なんかだれかを手本にして生きたくなった
    仰臥
    むした
    生きがいで誰かを虐げている場合じゃ無い
    生きがい=自暴自棄
    夕餉
    人格より優先したいものが強くある

  • 変な本だったな 2話が好みでした

  • 埼玉、少年期に過ごした昭和のマンション、元荒川、出版社勤務、男性、ゆううつ。
    条件を共有した三つの"かれ"は、もしかしたら同一人物でないのかもしれません。そのぐらい自己同一性を失ってしまったという暗喩なのかも。
    かれが語る言葉は、ぶつ切りになった時間の中を漂うように虚ろで幼く感じました。身体は新陳代謝されるのに、思考や感覚や記憶が代謝されないとは限らないよね?と問われた気がします。
    過去と現在と未来、昨日と今日と明日。
    実家と自宅と会社、家族と友人と恋人。
    ペルソナを使い分ける社会性のほうが、もしかすると不健全だなあと思います。記憶や関係性や、誰かに同化してしまえたら楽なのに・・・そんな自我のゆらぎを捉えた連作でした。

  • すべての輪郭が溶け合って、また年が明ける。

  • #愛だとか憶えるからだ思い出すからだ何度も生まれ直して

全21件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1983年生まれ。2016年『青が破れる』で第53回文藝賞を受賞。2019年『1R1分34秒』で芥川龍之介賞受賞。その他の著書に『しき』、『ぼくはきっとやさしい』、『愛が嫌い』など。最新刊は『坂下あたるとしじょうの宇宙』。

「2020年 『ランバーロール 03』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町屋良平の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×