- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163911052
作品紹介・あらすじ
「水たまりをのぞいたら、そこに映っていたのは青い空だった」べらぼうとは漢字で「篦棒」と書く。「あまりにひどい」「馬鹿げている」「筋が通らない」といった意味の他に、端的に「阿呆だ」という意味がこめられているところが気に入った。 どうにもうまくいかぬ男の、十歩進んで九歩下がる日々をまるっと包みこんでくれるようで、あの頃の蒼白い顔をした自分に「よう」と呼びかける気持ちで、『べらぼうくん』とタイトルを決めた。(あとがきより)未来なんて誰にもわからないのだ。川べりを俯き歩く万城目青年は、いかにして作家としての芽を育てたか。万城目ワールドの誕生前夜を描く極上の青春記であり、静かに深く届けたい人生論ノート。
感想・レビュー・書評
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面白かった。ブクログの読書家さんの本棚から見つけ、内容紹介を見て図書館で借りて来た。著者・万城目学こと『べらぼうくん』の浪人生~京大生~就職・無職に渡る期間のエッセイ。結構悲惨な状況でもこれだけ笑いに変えられるのは、過去の出来事だからか、著者の「腕」か?気分が落ちていた時期だったが、とても明るくなった。
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著者、万城目学さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。
万城目 学(まきめ まなぶ、本名同じ、1976年(昭和51年)2月27日 - )は、日本の小説家。
大阪府出身、東京都在住。京都大学法学部卒業。『鴨川ホルモー』『プリンセス・トヨトミ』などの、実在の事物や日常の中に奇想天外な非日常性を持ち込むファンタジー小説で知られ、作風は「万城目ワールド」と呼ばれる。
で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)
「水たまりをのぞいたら、そこに映っていたのは青い空だった」べらぼうとは漢字で「篦棒」と書く。「あまりにひどい」「馬鹿げている」「筋が通らない」といった意味の他に、端的に「阿呆だ」という意味がこめられているところが気に入った。 どうにもうまくいかぬ男の、十歩進んで九歩下がる日々をまるっと包みこんでくれるようで、あの頃の蒼白い顔をした自分に「よう」と呼びかける気持ちで、『べらぼうくん』とタイトルを決めた。(あとがきより)未来なんて誰にもわからないのだ。川べりを俯き歩く万城目青年は、いかにして作家としての芽を育てたか。万城目ワールドの誕生前夜を描く極上の青春記であり、静かに深く届けたい人生論ノート。
著者の作品を手にするのは初めてかと思っていましたが、4年前に『プリンセス・トヨトミ』を読んでいました。
その『プリンセス・トヨトミ』のレビューに、「内容が奇抜すぎて、ついていけないというか(-_-;)」などと、書いておりました。 -
大学受験に失敗し、浪人生になった瞬間から、小説家デビューするまでの回想エッセイ。
「週刊文春」連載の書籍化。
おもしろかった。
浪人生、大学生、就職、そして無職と、職業のステージの変化。
文章を書くことに目覚め、作品を書き、新人賞に応募し、小説家になるまでの道のり。
ふたつの柱が分かちがたく、作家〈万城目学〉をつくりあげていく過程を知ることができる。
就職にしても、小説家になる過程にしても、分析や計画の立て方がしっかりしていて、頭のいい方だなと改めて感じる。
「デビューするまでが厳しく、苦しかった」青春時代だが、ちょこちょこ笑える話があり、全体的にユーモアがあって、読み手としてはたのしかった。
同世代で、時事エピソードも自分の感覚と重なるため、懐かしく感じる。 -
大学受験失敗から憂鬱な大学生活、就活失敗・留年から2年間のメーカー工場勤務、そして退職・上京して雑居ビル管理人をしながら執筆に励む日々、その3年の雌伏期間を経て「鴨川ホルモー」で新人賞を受賞し小説家デビューを果たすまでの、著者の苦節の日々を赤裸々に描いた渾身のエッセー。著者曰く、「大学受験に失敗した瞬間から、小説家としてデビューするまで、ひたすらうまくいかなかった日々を時系列に沿ってしたためる」連載エッセーとのこと。
大学受験に失敗して一浪、大学に入ったらもはや根つめて勉強する気が失せていた。かといって他にこれといってやりたいことも見つからず、無為に過ごしたという著者の学生生活、分かるなあ(自分の場合は著者よりもっと酷かったけど)。とはいっても、浪人時代難い読んだ「深夜特急」の影響で、大学時代は毎年欠かさず1ヶ月程度海外を放浪していたというから、興味の赴くままアクティブに過ごしていたみたいだし、三回生の秋「自転車に乗って大学の正門を出たところで、正面から風が吹いてきた」のを感じた瞬間にものを書きたい、という突き上げられるような衝動に襲われ、漠然と "ものを書く" という目標を見つけたとのこと。著者の場合、一流企業に就職してビジネスマンになる、普通のレールには乗り損ねた(敢えて乗らなかった)が、大学の5年間で得るものは大きかった、ということなんだろうなあ。ある意味羨ましい。
本書を読むきっかけになったのは「バベル九朔」。本書には、会社勤めを辞めて上京、母親が所有する雑居ビル管理人をやりながら小説家の卵として作品を書きまくった頃のエピソードも描かれている。毎月光熱費を徴収して回ったり、大型のネズミの死骸や汚物の処理をしたり、と「バベル九朔」のベースとなる管理人の実体験も綴られていて、興味深かった。
著書の作風(いわゆる万城目ワールド)からして、著書が元々、芥川龍之介、菊池寛、夏目漱石、中島敦、安部公房に憧れていたというのは意外だった。これら文豪の作品を目標に執筆して一向に芽が出ず、アゴダ・クリストフの「悪童日記」、タニスワフ・レムの「虚数」、ガルシア=マルケスの「百年の孤独」、チャールズ・ブコウスキーの「パルプ」を読んで、作風にこだわりが消えて、自由で新しい作風に目覚めた(これまでの、自分ライクな無職男を主人公とした暗い話を封印し、「大きな嘘」を使って膨らませた話に変えた)のが成功のきっかけだったとのこと。雌伏期間に一体どんな作品を書いていたんだろうか。この辺りの作風の変化も興味深い。
若い人達に向けた、「もしも、あなたが将来について、手がかりが見つけられずに悩んでいるのなら、他人の成果を見て「こうすればいいのに」と自然に、もしくは簡単に発想が湧いてくる分野に注目してみよう。同じ視点を他人が持ち合わせていないようなら、その対象に関し、あなただけの源泉がささやき始めている可能性が高い。」というアドバイス、共感できた。いいこと言うなあ。自分の常識がいい意味で他人に通用しないことって意外とあるもんなあ。
思わず吹いてしまうような冴えた喩えも健在。読みごたえのあるエッセーだった。 -
万城目学さんによる、エッセイ。
大学受験の失敗から、小説家としてデビューするまでの「ひたすらうまくいかなかった日々」について振り返り、そこから、今だからこそ感じられる意味や活かし方に触れている。
誰でもなにかしら挫折を経験している。
そこから逃げずに、向き合い、痛みも苦しみも劣等感も無力感も受け止め味わう。そうすると、そこから出てくる言葉が変わる。
「私が自分の言葉というものを生み出し始めたのは、浪人生のときからだろう。つまり、私の人生が始まったのだ。」
うまくいかないことが続いても、そこから学んだり、よりたくましくなることができる。
「何より、自分の傾向として、『一度目はうまくいかない』というパターンを把握したことが大きかった。」
そうすると、落ち込みにくくなる、と。
柳のようなしなやかさを後天的に身につけることで、より楽に楽しく生きられるようになる。
ベストセラー作家にも、先が見えない時期があった。それだけでも、なんだかちょっと励まされる気がする、大阪のおばちゃんがくれるあめちゃんのような一冊だった。 -
大学受験に失敗した瞬間から小説家としてデビューするまで、ひたすらうまくいかなかった日々を時系列に沿ってしたためた著者渾身のエッセイ。この国の今の歪みを作った超就職氷河期。災難続きの世代のど真ん中を生きた著者自身が伝えるこの時代の空気と世相。不景気を前にあきらめているわけでもなく、モラトリアムの延長をもとめているわけでもなく、何とも不思議な自由な空気。価値観の急激な変化に社会が対応する前に世間に放り出された若者たちが何もない荒野さえ自由と錯覚し無為に過ごした報いが今重くのしかかる。
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鴨川ホルモーの原風景を見ることが出来た。そして、新人賞をとるまでの暗中模索はバベル九朔だ。一冊の小説を作るのに、こんなにも力が注がれている。万城目作品を一段と深く味わうことができそうだ。
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最近ご無沙汰していた著者だが、初期作品は全部読んでいたし同じ京大出身の森見登美彦とちょっといけ好かないが平野啓一郎を京大三羽烏としてホローしてきた。著者の奇想天外な作風から、あれよあれよという間に売れた作家とばかり思っていたが、けっこう紆余曲折苦労もしてきたんだとちょっと安心したりなんかしてしまった。未読のまま積読にしてる著者の本もあるので時間があれば読みたいが、最近は著者以上の奇想天外な物語を描く作家も多くおり、いつ読めるかは未定、最近ではこの著者はラノベ作家とも競い合わなきゃならない状況にありそうだ。
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万城目学氏の自伝的エッセイ。
浪人生になった時から、小説家になるまでの期間が興味深く綴られています。
私は『鴨川ホルモー』を読んで「ヤバイ、これ好き!」と万城目ワールドのファンになったのですが、この『鴨川ホルモー』の原版(?)が1回落ちていたということに驚きでした。(落とした出版社がどこなのか気になります。)