最終飛行

著者 :
  • 文藝春秋
3.15
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本棚登録 : 214
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913728

作品紹介・あらすじ

世界中で愛される『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリ。彼は作家であると同時に、飛行機乗りでもあった。

自由奔放で、時に子どものように純粋なサン=テグジュペリは、ナチスドイツ占領下でドゴール派とヴィシー派の政治抗争に巻き込まれる。苦渋の選択の末に渡ったアメリカで書き上げたのが、自身唯一の子ども向け作品『星の王子さま』だった。
『星の王子さま』はすぐにベストセラーとなるが、彼は志願してナチスドイツとの戦闘に復帰。偵察飛行中に地中海上空で消息を絶ってしまうのだった――。

かけがえのない愛と友情。困難な時代に、理想を求めて葛藤する姿。サン=テグジュペリの半生を精彩豊かに描く長編小説。

感想・レビュー・書評

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    • 猫丸(nyancomaru)さん
      サン=テグジュペリのラストフライト
      作家で飛行士だった彼の生涯
      インタビュー=佐藤賢一
      読書人WEB
      https://dokusho...
      サン=テグジュペリのラストフライト
      作家で飛行士だった彼の生涯
      インタビュー=佐藤賢一
      読書人WEB
      https://dokushojin.com/reading.html?id=8218
      2021/06/23
  • 祖国愛の強い流行作家、のっぽでやんちゃな飛行機乗り、アントワーヌ・ドゥ・サン・テグジュペリ(サン・テックス)。貴族の出でもあり、女性関係はことのほか自由奔放。政治への関心は高いが、あまりにストレートで不用意な言動のかは数々。その作品、人物ともに周りから愛されるが、良くも悪くも目立ち過ぎ、誤解を受けることも多い人物。

    愛人ネリーの言葉「あなた、相変わらずの王子さまだから」、「王子なの。素敵なくらいに我儘なの。高い理想を求めてしまうのも、そのためね。うまく受け入れてもらえなくて、そのたび傷ついてしまうのも同じこと」がその人となりを端的に表している。

    本書は、そんなサン・テグジュペリの半生(第二次世界大戦勃発以降、偵察飛行に出たまま帰らぬ人となるまで)を描いた異色の作品。

    可愛いらしいものの、気が強く御しがたい妻、コンスエロ。この妻を身近には置きたくないがさりとて手放したくもないサン・テグジュペリの身勝手も行動は呆れるほどだが、コンスエロにしても取り巻きの芸術家達と日夜パーティー三昧。こういった夫婦関係、自由の国フランスならではなのかな。

    パリ陥落後、南フランスに樹立されたドイツ傀儡のヴィシー政府に見切りをつけ、自由な執筆活動を求めてニューヨークに渡ったサン・テグジュペリ。ヴィシー政府を支持するペタン派、自由フランスを支持するドゥ・ゴール派の二派に別れた亡命フランス人達は、それぞれ彼を都合よく利用しようとするが、ヴィシー政府に与するでもなく、一方でド・ゴールを罵倒し、自由奔放に独自の論陣を張る彼は、結局両派から罵声を浴び、孤立を深めることに。幸いにしてアメリカ人からの作品の評判は上々で、大物作家として活動することはできたが、彼の心は満たされない。

    やがて、空軍パイロットに復帰し、祖国解放のため貢献したい、という焦燥やみがたく、周囲の反対を押しきって関係者への働き掛けを繰り返すようになったサン・テグジュペリは、数々の障害を乗り越えて強引に現役パイロット復帰を果たす。

    「飛んでいなければ、何も書けない。戦わなければ、何もいう権利がない。ええ、飛ぶこと、戦うこと、命の危険を逃げずに引き受けること、それが僕の強みなんです。飛びもせず、走りもせず、自らは安全な場所に留まりながら、ただもっともらしい言葉だけ吐いている連中に対する、絶対の武器になるんですよ。」

    パイロットとして北アフリカで元隊復帰し、偵察任務に従事することとなったサン・テグジュペリは、何度外されかけてもめげない、諦めない。挙げ句、同僚の任務を強引に奪い取ってまで飛び、遂に最後の時を迎える。

    原稿執筆中に時々子供の絵を原稿の隅に悪戯書きしていたサン・テグジュペリ。「金髪の坊や。草色から服を着て。首にマフラーを靡かせて」。その子を主人公とした子供向け絵本があの『小さな王子』(星の王子さま)。主人公の少年は「僕の守護天子というべきかな、でなければ僕の化身。もし僕に子供がいたなら、こんな感じかもしれない」。「星の王子さま」には、コンスエロとの夫婦関係を含め、いろんな寓意が含まれていたんだな。

    時代を感じさせるいい作品だった。「星の王子さま」、読み返して見たくなった。

  • <地>
    作家サン・テグジュペリが二次大戦時,元フランス空軍飛行機乗りだった事を本書で知った。 名作『星の王子様』なんて,もっとずっと昔の作品で作者も19世紀中頃の作家かなあ,と今まで漠然と思っていた。そして僕は『星の王子様』をまだ読んだ事がたぶん無い。(で,少し調べた。『星の王子様』はもちろん小説本なのですが,本書には「『The Little Prince』 は絵本だ」と書いてあって,どうやら確かに1943年にアメリカで発行された ”初版本” には47カットものサン・テグジュペリ自身による挿絵が付いていたらしい・・・。ああ,その ”初版本” が読みたい見たい!!)

    作者の佐藤賢一。昔作品を読んだ事が有ると思ったので調べたが読書記録は無かった 。これはもしかすると僕の苦手とする ”純文系” の作家さんなのかも知れない。ドキドキ。

    読み始めてまずフランス製と思しき双発3座の飛行機に興味を持ってしまって,その ”ブロック MB174” の事をネットでずっと調べていた。二次大戦中のフランス軍に有名な飛行機など無いと思っていたが,とても興味津々な内容だった。すまぬが本の方は最初の3ページ目位を開いたままおろそか(疎か)にしたままだった。最近は何でもネットで調べられるし,ともすればその本に出て来る ”場所” もGoogle Earthを使えばでかなり詳細な様子が視れてしまう。つい読書中でもそっち方面へ行ってしまう。気づくとかなりの時間が経っている事が多い。ま,僕はそれで良いのだがあまりに時間が掛かるので今は読書中は出来る限りPCは閉じる様にしている,がまあむなしい抵抗であることはなんとなく自覚してきた。

    佐藤賢一。は直木賞作家である。純文学系であるのだが直木賞作家なのだ。まあ純文系の賞と言われている? 塵ゴミ芥川賞が新人しか獲れない賞なので,そうなったのやも知れないのだが。 先に僕は純文が苦手だと書いたが本作はまづまづいける。文体はフランス語で書いた原作を翻訳した様な感じをわざと漂わせながらも,ちゃんとした日本語なのでイライラはせずに読める。むしろそれがちょっと変わった語り口になっていて結構面白い。これかなり良いんじゃないでしょうか。

    それにしてものっけで表紙を見た時に,そこに憎きロッキードP-38の機影が有るのはどう言う訳だ!-と僕は思ったのであった。-しかしサン・テグジュペリの生涯において,この ”ロッキードP-38” という双発の戦闘機がどれほど重要な役割を果たしたかが本書を読んで良く分かった。ちなみに”憎き” と書いたのは我が日本海軍の宿敵と云う利己的意見でした。すまぬ。

    読書感想後記。 僕はこの本を読んだ事がきっかけで新たな興味を激しく覚えてしまった。それは 『BMW製の空冷エンジンを積むドイツ戦闘機 ”Fw190「フォッケウルフ」” の「2段加速ギア」とはいったい何なのだ!” ということ。出来れば本書のような小説もので味わい深く読みたい。更に可能ならばそれは枢軸国の著書ではなくて連合国側で同ドイツ戦闘機の恐怖を味わった著者の手による書がベストです。読者諸兄各位,どうかそうい本を僕に紹介してください。但し日本語翻訳か英語版・・・いや無理,日本語版に限ります。すまぬ。

    • yuu1960さん
      佐藤賢一さんの本は昔読みました。
      「王妃の離婚」、「カルチェ・ラタン」、「褐色の文豪」
      暫くご無沙汰でしたが、この本も面白そうですね。
      ...
      佐藤賢一さんの本は昔読みました。
      「王妃の離婚」、「カルチェ・ラタン」、「褐色の文豪」
      暫くご無沙汰でしたが、この本も面白そうですね。
      お勧め有難うございます。
      2021/09/15
    • ryoukentさん

      yuu1960様。
      どうもコメントをありがとうございます。
      はい,本書かなりイカスと思います。

      yuu1960様。
      どうもコメントをありがとうございます。
      はい,本書かなりイカスと思います。
      2021/09/15
  • サン=テグジュペリの半生を描いた長編小説

    『星の王子さま』の裏話、口述形式の創作活動など…N.Yでの破天荒な作家生活が意外でした

    「軍に戻って、戦争に参加したい、何かの役に立ちたい」その精神は、昨今でも戦地へ赴く愛国者の思いを代弁している様です

  • 「星の王子さま」私のバイブル。始めはさすが空を制したサン・テグジュベリと思っていたが、人間的な部分にショックを受けた。妻のコンスエロの扱いには怒りすら覚える。たとえ彼女が我がままな薔薇の花としてもだ。ヨーロッパ戦線が詳しく分かっただけでもヨシとすべきか。

  • 【世界中で愛される「星の王子さま」の作者の半生】『星の王子さま』作者サン=テグジュペリは飛行士でもあった。ナチス占領下で偵察飛行に志願した彼の葛藤や友情を精彩豊かに描く。

  • 「星の王子様」は,何度も読んだ
    作者サン=テグジュペリの生き様を知ることで、今までとは違う「星の王子様」を感じるだろう

  • 主人公が良い味出してました。ラストあたりの雰囲気は結構好きです。

  • 星の王子様のイメージが強いが、飛行機乗りとしての作品がメインなんだろう。ヒトとしては、けっこう困ったちゃんのようで、それがまた、魅力的でもある。

  • なんと分類すれば良いのか良くわからなかったけど、星の王子さまの著者のサン=テグジュペリの人生を描いた本。元の知識ゼロで読んだので、まさかこんなにルーズで感情が激しく自由奔放な人だとは・・・という驚き。しかも星の王子さまが唯一の子供向け作品だったことも知らなかった。あの作品が生まれた背景にあったのは、こんなにも大変な、戦争の時期。知らないことだらけでした。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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