ナインストーリーズ

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913933

作品紹介・あらすじ

満足? 後悔? 愉悦? 絶望? 
人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。
長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、
定年間近の独身男の婚活、
還暦過ぎの女友達二人、
かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。
乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。

時代小説から現代に小説の舞台を移してからも大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、島清恋愛文学賞など数々の評価を得ている筆者による9つの物語。

感想・レビュー・書評

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  •  外国での仕事・暮らしが絡んだ中年男女の恋愛、離婚、再婚など、9話が収録。著者、乙川優三郎さんは房総が一番のようですがw。「ナインストーリーズ」、2021.6発行。第2話「1/10ほどの真実」、第3話「闘いは始まっている」、第8話「あなたの香りのするわたし」がお気に入りです。

  • ホテルの上階は音も絶えて、そろそろ若い人たちが睦み合う時間であったが、亜希子はもう来ることのない海を眺めるために部屋の明かりを消してみた。曇天なのか月も星もなく、海原は暗く澱んでいたが、薄明かりの眼下に白い波が寄せているのが見える。すぐ近くで同じ海を見ている男を感じながら、彼女は終わったことにいくらかの寒さを覚え始めた。このあてどない地点に立つまでの長い長い軌道の虚しさを、それぞれの窓から見つめることに意味があるとしたら、そうして始まるらしい二つの自我の蘇生だろうと思った。そのことに男もなにがしかの意味を見出してほしい、と願わずにいられなかった。

  • また、読み終わりたくない時間があっという間に過ぎてしまう。なんでなのかな。話自体は九篇あるうち、もの珍しいのはそれほど多くないのだけれど。しかも、それぞれの登場人物から見れば悪いばかりではない終わり方なんだろうけど、話としてのハッピーエンドではない話も多いしな。でも逆に、これからのことを考える話ばかりだから、それぞれの読後感は悪くなくて、眠いはずの帰路の電車の40分余り、全く寝なかった。

  • 図書館で借りた本。
    乙川さんは、ずっと名前だけは知ってたけど読んだことがなかった作家さんです。
    子どもたちが二人とも自転車に乗れるようになったので、図書館によくでかけるようになってます。
    その時にふと目についたものを借りるようにしているのですが、今回はこちらでした。
    赤い表紙に、ナインストーリーズというタイトルだけ見て借りました。
    とっても端正な文章で、岐路に立った男女の物語を色少なく、陰影深く描いた作品集でした。
    読んでいるとお酒を飲んでいるような、ゆったりと揺られているような心地になって本当に気持ちよかったです。
    夫が膝の皿の靭帯を切ってしまい、その病院で読んでいたのですが、時間を忘れて読んでいました。

  •  語り口の巧みさは、この人の現代小説の持ち味。
     ほろ苦さ。その味付けから外れない。
     そこは魅力ではあるが、無い物ねだりしたいところでもある。

  • 【Entertainment】ナインストーリーズ / 乙川優三郎 / 20220101 / (3/922)/<198/161633>
    ◆きっかけ
    日経書評
    ◆感想
    ・男女の間の機微の描写が秀逸。いつかこんな物語を書いてみたい。

    ◆引用
    なし

    ナインストーリーズ 乙川優三郎
    さまざまな中高年の男女がさまざまな人生を生きる9つの物語だ。後悔と断念と諦観。人生の黄昏(たそがれ)を生きる姿と思いにどんどん引き寄せられていく。心に染みる作品集だ。

  • 「毎日顔を合わせている夫婦が私より幸せとは限らないわ、お互いの欠点に触れて憎み合ったり、夫婦をつづけるために大事なものを犠牲にしたり、そんな十年ならひとりでいる方がましでしょう」p26

  • 歳を重ねれば、人に疲れも見えてくる。その戸惑い、戸惑いに流れてくる冷たい風。
    そんな風があちこちに吹く九つの景色が書かれている。

  • 現代小説へと舞台をギアアップした氏の短編9編。
    何れも人生黄昏期を迎えた男女の来し方行く末を偲びやかな辛口であったり、乾いた文体で・・あたかも俯瞰する視点で見つめている。

    あれ、乙川さんって・・直木賞だったよねと思うほど、最後の作品は芥川賞っぽく、それを読む私も・・あれ?(芥川賞系は合わないので)

    同じテイストばかりでだれないと言えば嘘になるが、職種、設定の多様さは筆のの冴えを見せる。
    「安全地帯」「海の~」は昨今、一番よくありそうな話・・男は自分一人では帳尻を成功へは持って行けない。
    「六杯目~」はなかなかでこのラスト、さ―て丁か゚半か
    筆者の生活スタイルから「都会の人生」が前面に出ているのはやむを得ないが、登場する人物・・男女ともに「知り合い」であっても「友達になりたくないか」という臭いばかり・・翻る自分も同類かと鼻白んで。。

  • 満足? 後悔? 愉悦? 絶望? 
    人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。
    長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、
    定年間近の独身男の婚活、
    還暦過ぎの女友達二人、
    かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。
    乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。

    時代小説から現代に小説の舞台を移してからも大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、島清恋愛文学賞など数々の評価を得ている筆者による9つの物語。

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著者プロフィール

1953年 東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年「脊梁山脈」で大佛次郎賞、16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。

「2022年 『地先』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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