Phantom

著者 :
  • 文藝春秋
3.31
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本棚登録 : 653
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913971

作品紹介・あらすじ

外資系食料品メーカーの経理事務として働く華美は、
人付き合いはほどほどに倹約に励み、
資産を増やすべく日々株投資に勤しんでいる。
同僚で恋人の直幸は「お金儲けよりも自分に投資すべき」と華美を笑うが、
スエという人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。
「ムラ」の中では贈与の報酬としてのポイント「シンライ」が付与され、
そのアップデートされた新たな物々交換の世界は、
マネーゲームに明け暮れる貨幣経済の現実を乗り越えてゆくのだ、と。

やがて会員たちとともに集団生活を始めた直幸を連れ出しに、
華美は元恋人の傭兵とともに長野の村へと向かうのだが……。
大切なのは信頼かお金か、それとも?
高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。
年収250万円台カップルが繰り広げる羽田圭介の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • Phantom/羽田圭介

    初めての羽田圭介さんの小説を読みました。

    先ず題名に惹かれたのですが、想像とは違う角度からタイトルの理由かわ分かり驚きました。
    主人公が、命の価値やお金で買えるものの
    意味を考えた印象的な場面でした。

    主人公の華美と恋人の直幸は、共に
    年収200万円台の恋人同士。

    価値観には大きな違いがあり、それが顕著化して
    きていたが、どこか惰性で関係を続けていた。

    華美は昼は真っ当な食品会社の事務員で、
    夜は米株取引にのめり込みむトレーダー。
    お金の稼ぐ事に執着し、人間関係も金銭に換算する。

    直幸は年齢と共に容姿という武器も薄れ、
    お金ではなく信頼を通貨の代わりと考える
    情報発信者の末(スエ)に傾倒してのめり込む。

    二人の考え方の溝はどんどんと深まり、
    心地良かった関係には次第に歪んでいく。

    人にとって必要なものは何か。
    今すべきお金の使い方はどんなか。
    今を充実するために必要なものは何か。

    合理的でドライなだけの思考から、
    人との関係の必要性にも秤のバランスが
    触れていく過程を見た気がします。

  • 投資関連よくわからず少々齧っているからか華美の心情、理解できてしまう。
    対して、直幸のオンラインコミュニティもどきに傾倒していく現実も存在している。

    と、現実世界をデフォルメしているものの、忠実に描いている問題作とみた。
    そして本質的には昔も今も同じ過ち、思想が繰り返されるということか。

  • 初羽田さん作品。思っていたより読みやすかった。

    前半の平凡な日常とは裏腹に、後半が破茶滅茶でハラハラさせられる展開だった。

    将来のために、今は少し無理をしてでも貯蓄する。
    将来のことは考えず、お金に執着することなく今を楽しんで生きる。
    お金だけではなくて、例えば仕事とか食事とか、生き方そのものに当てはまることだと思う。
    どちらが正しいとか、そうすべきだとかは決められない。欲張りだけど、私は将来のことを考えつつ今を楽しむ生き方を選びたい。

    「紫外線を避けること以上の究極のアンチエイジングは、今を生きるということだ。今を未来に先送りしても、その未来でなにもやらないのなら、意味がない。今やっていることは、今しかできないことだった。」

  • 株式投資に没頭するOLの設定は面白かったが後半の今カレ奪還計画は盛り上がりに欠けた。経済的豊かさと心の充足の対比がテーマだったのだろうが、どっちつかずになってしまった印象。

  • 羽田さんの本を初めて読みました。
    面白い本を書く方なんだと思いました。

    主人公の人柄、生活行動が細かく描かれていて、
    素晴らしい。

    起承転結で言うと 『転』がなかなか激しく、
    これが小説って感じです。

    楽しめた一冊でした。

  • 「将来お金によりもたらされるであろうと予想された効用は、どこまでいっても実体のない頭の中の可能性でしかなかった。それが思いきって使うことで、今そのものになった。」

    投資に回すために節約をしている同じ身分であり、お金の価値についてよく考えるので興味深く読めた。
    人それぞれ考え方があるから使わないお金を死んでいるとも思わないが、自分の大切な人や経験のために自分の意思で使うお金も決して無駄ではないと思えた。

  • この「ファントム」というタイトル、何なのかと思っていたが主人公が事故現場を通り過ぎたロールスロイス・ファントムが無理(無視)に交差点を右折して軽自動車が衝突、片方は小破、もう一方は事故死したニュースから。
    この作家の本を読んだのは3作目だけど、賞をとった作品は微温的に感じたが、その後に読んだ二作は最新のノイズキャンセリングイヤホンをつけて「ゾーン」に入ったような登場人物の世界の描写が深化しているように感じる。

  • お金の価値って何なんだろうと考えさせられる作品。話のテンポが良く、読みやすかったです。恋愛的な要素が含まれていたり、ハラハラドキドキするシーンがあったり、楽しめました。

  • 羽田さんらしい作風でワクワクしちゃった。偏り方が。

  • 一気読みしてしまった。
    承認欲求とカネの話。
    羽田圭介の作品は以前も何作か読んでいたけど、そこで感じた文体のヘンなもどかしさも取れてめちゃくちゃ読みやすかった。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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