猫に教わる

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915111

感想・レビュー・書評

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  • お医者さんだけど、芥川賞を受賞した作家でもある。医者として患者の死に真摯に向き合われていたのだと思う。パニック障害やうつ病も克服して、今。素敵な奥さんや家族、同僚との交流も素敵だなと思う。
    いきるということは、いつも一生懸命生きることを親子の猫の姿から学んだ。自分ができることをできる範囲で一生懸命、生きれたら良いな

  • 朝日新聞の書評欄で知ったのか、なんのきっかけで図書館に予約したのか忘れてしまった。

    久しぶりに随筆らしい随筆を読んだ気がする。作家は自分の文章に厳しいようで、それでわりに寡作なのかな、という印象を受けた。

    医者としての職責も全うし続け、芥川賞受賞後も二足の草鞋を精力的に履き、うつ病を発症したとのこと。そういうところから、より人間味も増されたのではないかと推察する。

    若い頃、父の進言に反し続けたというエピソードが胸に痛かった。

  • 滋味深く、人間味にあふれた本
    地味でも不器用でも良いんだと、否定することなく背をそっと押してくれる。モスグリーンの一冊。

    □治る病気で死ぬのは喜劇ですよ
    □小説には全体をおおう色がある
    □騙りへの傾斜

  •  芥川賞の作品は寝て書いても完成させられるが、直木賞の小説はトラック数台分の資料を集めて読み込まないと書けない。一家統合の要の存在として15年生きたトラの命日は4月26日。南木佳士「猫に教わる」、2022.3発行、36編のエッセイ集。①脳の血流を良くするべく歩くには、ある程度の速度が必要だが、無理をすると膝を痛める ②65歳で定年退職後は、月~木、各4時間の非常勤勤務。金曜日は蕎麦と酒 ③里でのヤマツツジの開花と山のタラの芽は時期がほぼ同じ。ヤマツツジの花が咲けば、タラの芽を採りに。

  • 新聞の随筆欄に寄稿した文章を再推敲してまとめられたエッセイ本。

    身の回りの出来事や思い出が淡々と、鮮明に綴られている。信州の田舎で非常勤医として暮らす筆者の生活が目に浮かぶようだった。

  • 南木佳士さんの最新エッセイ.日経新聞および北海道新聞連載.
    退職後も古巣に非常勤で人間ドックの医者として働きながらの日常.どのエッセイも変わり映えしないといえばしないがそれが好きで読んでいるわけだから,これでいい.できればなんとか小説を書いて欲しい.(前の本のときも同じことを書いた.)

  • 好きな文章

    生きなおすための小説
    語れば騙る
    石仏との対話
    作家の定年

  •  著者作品、お初。芥川賞作家さんだったのね、知らなかった。

     新聞に連載していたエッセイをまとめたもの。2020年から2021年の秋ごろまでの連載なので、読む前にコロナ禍の当時の世相を活写した高村薫の『作家は時代の神経である』や、真山仁の『タイムズ』、あるいは庶民目線の山田詠美の『吉祥寺ドリーミン』的な内容を期待した。当時をの振り返りになるかなと手に取ってみた。

     が、思ったほど時代に寄り添った記述はなく、コロナについても隣家の延焼で自宅の改築が「コロナ禍で建材の手配が遅れた」とか、「長男も次男もコロナウィルスの流行の影響で結婚式を挙げられなかった」と、2か所程度か。
     もっとも、小説家の前に医者でもある著者、「病院や自治体の要請に応じる新型コロナワクチンの接種や問診担当医であるのを優先し、小説は書いていない」と、なによりコロナ禍の影響は受けてはいた。それでも、その間に医療に従事していたという緊迫感もなく、『臨床の砦』の夏川草介と同じ長野県下での医療関係者の筆致とは思えない長閑さがある。

     いずれにせよ、コロナの影響下、上記の「小説は書いていない」は、本書を通底するテーマにも関連する。
     それは、如何に人生という山を下山するか、作家という仕事を終わらせるか、そんな終活年齢にさしかかった著者の人生観が随所に滲み出ていて興味深かった。
     逆に、時代を超えて、いつでも読める内容になっているのかもしれない。

     老境に入らんとする今も、日々健康に留意し、歩くことを自分に課し(血流を促すことがうつ病やボケ防止に繋がる)、信州の山村で千曲川沿いを元気に闊歩する。
     また表題の「猫に教わる」の章でも、「生きのびるための智恵を身をもって子猫に教える母猫の姿」を見て、

    “静かに逝きたいだと?  
     いま、この瞬間を懸命に生きる春の野生が、老いてしたたかになった身の傲慢さを浮き彫りにする。
     微かに反省しつつ、ふたたび、ただ、歩く。“

     と、自然からの教訓を得て、また人生の活力を見い出していく日常が力みなく描かれている。自然が豊かな地方での暮らし、樹々や野生の生物や山林から享受できるものは、けっして山菜や農作物といった物的なものだけでなく、精神的な恩恵も大きいのだと感じさせてくれた。

    「放した鳥の行方なんて知らないよ。
     できればそんな文章を書きたいのです。」

     「いまは小説を書いていない」著者の、新たな作品に期待しよう。

  • ぽつぽつと寡作で地味な作家さんですが、新しい本を見つけると気になって読んでしまう。
    今もお元気で非常勤の勤務医をされているようで、そんな日常の一コマや、医者と作家という二足の草鞋時代の体調を崩した苦しい思いの綴りだったり、もっとさかのぼって幼い頃に母親を亡くし、思春期時代の新しい家族との葛藤や進学に関することなど、もうすでに知っていることも含めて、生きているといろいろあるけれど、それを乗り越えると穏やかな日々もあると思わせてくれると、人の人生でしみじみ感じさせてもらった。

  • ネコに引かれて手にしたが、ネコは2篇だけ。それでも懐かしい信州の山の暮らし楽しめたから、マッいいか。「未来は明日ですら完璧に隠されていると了解し、夢など抱かず、とりあえずいまを生きる」NHK郵便屋さん姿の中島みゆき見たけど先崎さんの涙は気が付かなかった。

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著者プロフィール

南木佳士(なぎ けいし)
1951年、群馬県に生まれる。東京都立国立高等学校、秋田大学医学部卒業。佐久総合病院に勤務し、現在、長野県佐久市に住む。1981年、内科医として難民救援医療団に加わり、タイ・カンボジア国境に赴き、同地で「破水」の第五十三回文學界新人賞受賞を知る。1989年「ダイヤモンドダスト」で第百回芥川賞受賞。2008年『草すべり その他の短篇』で第三十六回泉鏡花文学賞を、翌年、同作品で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する。ほか主な作品に『阿弥陀堂だより』、『医学生』、『山中静夫氏の尊厳死』、『海へ』、『冬物語』、『トラや』などがある。とりわけ『阿弥陀堂だより』は映画化され静かなブームを巻き起こしたが、『山中静夫氏の尊厳死』もまた映画化され、2020年2月より全国の映画館で上映中。

「2020年 『根に帰る落葉は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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