スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915340

作品紹介・あらすじ

「あの監督なら、全国大会に行ける」
部活やジュニアスポーツの現場で絶えることがない、指導者による暴力・性虐待事件。そこには子どもを護るどころか率先して追い込み、事実を隠蔽しようとする〝毒親〟たちが存在した――。徹底取材で描く衝撃ノンフィクション。

〈7月上旬。理子への暴力は、日本小学生バレーボール連盟(日小連)の傘下である大分県小学生バレーボール連盟(県小連)へ通報された。(中略)そこから「誰がリークしたのか」と犯人探しが始まった。
母と娘の地獄は、そこから始まった。
 7月16日18時半、町内の公民館でチームの保護者会が開かれた。日ごろからチームの祝勝会や慰労会などを行う部屋で20数畳近い広い和室。座布団も出されず、現役選手の親たち15人ほどがコの字型になって腰を下ろした。Bの姿はなかった。
「悪くすれば、B先生が指導できなくなります。裏切りは許せません。このなかに絶対に(リークした親が)いると思っています」
保護者会長の男性がおもむろに立ち上がり、「一人ひとり、話を聞かせてください。じゃあ、そっちの端から」と口火を切る。自分がリークしていないことを証明したい親たちは、犯人探しに躍起になった。〉(第2章より)


目次
第1章子どもに土下座させる監督に服従し続けた親たち――全国上位の少年バレーボールクラブ
第2章口止め誓約書を書かせた親たち――大分少女バレーボール暴力事件
第3章性虐待に鈍感な親たち――高校女子バスケットボール部セクハラ事件
第4章不正に手を染める高校生ゴルファー――親に抑圧される子どもたちの辛苦
第5章少年球児をうつ状態にした父――大阪府「お父さんコーチ」の懺悔
第6章少年野球当番問題――来られない親に嫌がらせをする母親たち
第7章毒を制した親たち――暴力指導を向き合った全国柔道事故被害者の会

感想・レビュー・書評

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  • 〈子どもの成果で自己承認欲求をアップしたい。
    人生の敗者復活戦を子に託したい。
    そのような理由で、スポーツ親は子を抑圧する〉

    ではどうすればいいのでしょうか?

    著者島沢優子さん自身もそういう毒親でした。
    どのように「解毒」するか。
    島沢さんは悩んでいたころ池上正さんに出会いました。
    『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』は
    池上さん初の著書で、発行8万部のペストセラーとなりました。

    同書でいうところの「魔法」は、指導者や保護者といった大人を変えるための心得です。

    〈「肯定する」「上達する」「楽しませる」「気づかせる」「考えさせる」
    そして、大人自身が「進化する」。
    子どもの集団に「和をつくる」重要性も説いた。
    続いて、「夢を持たせる」「余裕を持たせる」「自立させる」。
    最後が、子どもと対話する際の鍵になる「問いかける」ことの重要性とその方法を伝えた〉

    スポーツでの活躍への憧憬と熱意が親の心を狂わせる。
    似たような感情は、自分も何度ももってきました。
    「どうして、あの時、あんなに夢中になっていたのだろう」

    ちょっとでもおかしいと気づいた時に
    こういう人や本と会い、冷静に判断できるようになれば
    親も変わり、子どもを不幸にすることはないのだろうと思いました。

  • スポーツをする子どもの環境の中で、「指導者」と「その親」は大きな影響を与える。その「大人たち」が正しい知識もないまま、自身の承認欲求を認められただけに、子どもにきつくあたる、ときには暴力、暴言、性の捌け口とするような、「人としてあるまじき」行動を、この本では紹介されている。
    スポーツをやってきた上で、「自分が暴力を振るわれるなど厳しい指導を乗り越えたからこそ、今の自分がある」と生存者バイアスを感じる日本人の大人たちは非常に多い。その経験を子どもたちにもしてほしいと思うこと自体が、もう時代遅れであると言える。
    主体的に、自発的に、自ら考えられる子どもを育てる前に、大人がそれを体現しなくては、子どもは大人が思うように育たない。これは心に刻みたい。

  • 子供以上に競技に熱中するスポーツ毒親。全国大会出場と引き換えに子供の楽しいはずの人性を奪う親や指導者の暴力など問題提起の書。

    バレー、バスケ、ゴルフ、野球、サッカー、柔道。競技を問わず続く毒親と暴力コーチの問題を描いたノンフィクション。

    ついつい親が子に課題な期待をかけてしまうことから生ずる問題。日本はジュニアスポーツの分野では世界でも上位だが子供の成長と共にランクは落ちていく。スポーツとは本来解放の意味、楽しんでやるのが基本のはずだが、周囲の課題な期待に押しつぶされていく。

    パワハラ、セクハラなどおそらく氷山の一角。日本のスポーツ界の負の部分に光をあてた作品。親として思い当たる節はたくさんあるはず。

  • 自分の夢を子供に託すな。お母さんたちのやじの品のないことやまの如し。(これは本とはあんまり関係ないかな?)

  • 親の欲求を満たすために、子供を道具として扱っている。野球、サッカー、バスケ、バレー、これらは非常にメジャーなスポーツであり、かつ深刻なパワハラ、暴力等が蔓延している事は間違いない。
    親の意識を変えていかなければならないが、こういった情報をもっとマスコミは流すべきだ。全国大会を中継し、賞賛するだけでは、間違った親を生み出すだけだ。連投や厳しい長時間練習を非難するべきだが、逆の報道ばかり。
    小学校、中学校の全国大会は禁止すべきではないか。また、高校野球等の高校スポーツについても、球数のもっと厳しい制限や、試合数の制限が必要である。

  • 毒がまわってしまうと、狭い価値観から抜け出せなくなり、子どもを虐待していることに気づかない。
    恐ろしいことだ。

  • 親は「全国大会」という魅力に洗脳されている。
    コーチや監督は自己顕示欲の為に子供を利用している。
    自分の頃はまだ普通だったかもしれないが、現代においてもまだあるのかと感じた。
    加害者(しかも被害者が重大な後遺症を残している)の為に親達が署名を集めるのはショックだった。

  • ふむ

  • なかなか良いテーマだと思うんだけど、毒親よりも酷い指導者たちの話メインで毒親性についての考察が薄いなと思った。まあ自己肯定感が低い、敗者復活戦ってのはほんとそうだよね。どう育てたいかではなくどう育つかだってのはこの人の言葉じゃ無いけどこの本で一番良かったかな。

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著者プロフィール

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学などを経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1993年~96年までジェフユナイテッド市原(現在は市原・千葉)を担当。98年よりフリー。スポーツ及び教育の現場を長く取材。著書に『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート』(小学館)など。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』をはじめ、ジェフで育成部長等を務めた池上正氏の著書8冊を企画構成した。公益財団法人日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員。

「2023年 『オシムの遺産(レガシー) 彼らに授けたもうひとつの言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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