お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード ジェンダー・フェミニズム批評入門
- 文藝春秋 (2022年6月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163915609
作品紹介・あらすじ
貞淑という悪徳、“不真面目な”ヒロインたち、
不条理にキラキラのポストモダン、
結婚というタフなビジネス……
「男らしさ」「女らしさ」の檻を解き放て!
注目の批評家が贈る〈新しい視界がひらける〉本
・ジュリエットがロミオにスピード婚を迫った訳とは?
・フェミニズムと優生思想が接近した危うい過去に学ぶ
・パク・チャヌク映画『お嬢さん』の一発逆転!〈翻案の効用〉とは
・『マッドマックス』の主人公がもつケアの力と癒やし
・「マンスプレイニング」という言葉はなぜ激烈な反応を引き起こすのか……etc.
閉塞する現代社会を解きほぐす、鮮烈な最新批評集!
感想・レビュー・書評
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ジェンダー・フェミニズム入門とあるけど、エッセイ的な書き方で取り付きやすいけど、教養的な知識を下敷きにしないと、ややしんどかった。
批評の先に見えてくるものに、辿り着きたかったけど、やや挫折。
タイトルすごくいいのに。 -
すごく良かったし、北村さんのファンになった。わたしは「ジェンダーよくわからん」みたいなタイプなのだが、本の中では専門用語あるけど喩えが上手くて、ジェンダー論がわかりやすく載ってた。
軒並み映画を題材にしてたので、映画をよく見る人はもっと楽しめそう(わたしは映画を全く見ないので)。
斯くいうわたしはフェミニストになるつもりはないけど、ジェンダーでの論点は知っといて損はないと思った。 -
前作「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」の頃から気になってはいたものの、なにぶんこれまでに観た映画は片手で足りるという人間なので手を出しかねていたが、今回初読み。
「お嬢さんって何だよ、バカにしてんの?」というのがひっかかっていたが、映画のタイトルだったのね。大変失礼いたしました。
前述のとおり映画も観なけりゃグラムロックも聴かない、著者との共通点はスラッシャーだということくらいで取り上げられている作品もほぼ未見だったが、期待どおり非常に面白く読んだ。
本題の批評もさりながら、リアルタイムの・最先端のフェミニズムについて日本語で手軽に読める点が非常に貴重。ガラパゴス日本にどっぷり浸かった手合いには、あるいは「いちいち細かい」「うるさい」と思えるかもしれないが、この島国を一歩出た世界はいまや「そう」なっているのだと知るべきだ。
また、その論考に上京後の華麗な経歴と同じくらい影響を与えているのが「地方の共学校で女子として生き(させられ)たこと」で、著者の書くものに独特の陰翳を与えている。個人的に大変興味深く、ときに痛ましく読んだ。
2022/9/12〜9/17読了 -
初読
批評ってやっぱり面白いな…と改めて興味を持った次第。
ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」も
2006年当時、リアルタイムで映画館で「あれっ…」と肩透かしをくったような、期待外れのような、でも何がどう…とモヤモヤしながら観たので
こちらのポストモダンでピンタレスクという評と
そして私には全然読み解けない筈の80年代ロックの引用との解説で、鮮やかに完敗ぶりを自覚。
一方、パク・チャヌクの「お嬢さん」と「荊の城」の翻案の妙についてはだよねー!とハイタッチしたいような同意 -
フェミニスト批評で注目を集める批評家による批評集。海外文学や映画をジェンダーの観点から鋭く切り込み、作品の新しい見方を提示してくれる。批評の面白さを体感できる一冊。
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はーー面白かった!すぐに『お砂糖と〜』も借りた
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北村さんはTwitterで時々お見かけしていたものの書籍は初めて読んだが書きっぷりが非常に面白かった。とても聡明で深く思考する方なのだろうということが文章から感じられた(学者なので当たり前か)。本書は文芸、映画にまつわるエッセイのような感じで、知らなかった作品も半分以上あったが見てみたい・読んでみたいと思った。ウィキペディアの男子文化の話はさもありなん。ロミジュリをジュリエットの名誉の観点で読むのはなるほどと思ったし、その流れでヴィクトリア朝文学のハッピーエンドとしての結婚を、なんとかヒロインにとっての抑圧的要素を取り除こうとしていると言う話も言われてみれば確かにと思った。物語をただ受容するだけで無く、こんな風に批評できたら面白いだろうな。もっといろいろ見て、読んで、感じて学びたいと思った。
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映画を中心に舞台や小説などの作品を題材に、フェミニズム的視点から書かれた批評集。
➤ 私は近年になってフェミニズム的要素を取り入れてアップデートしようとしている中年男性。本書に書かれているような視点がようやくすんなりと受け入れられるようになってきた。それでも、男性間性暴力と「男らしさ」に関する考察とか、ウィキペディアや『スター・ウォーズ』のファンダムが男性優位な構造になっていることなど、初めて聞くこともたくさんあって勉強になる。
➤ 「結婚というタフなビジネス」の章で度々出てくる、「結婚は家父長制に基づくビジネスであり、女性にとっては不利で抑圧的にならざるを得ないが、いろいろなプロット要素を動員して、ヒロインの結婚から抑圧的な要素を取り除こうとした」という考察は、なるほどと思った。これはヴィクトリア朝の小説の話だが、マシになったとはいえ本質的には今も続いている。
➤ 映画『SKIN / スキン』で、青年ブライオンが白人至上主義団体を脱退するために必要な「全身のタトゥーをすべて消す」ための費用を寄付した匿名の女性の話が出てくる。この個人的な見返りを求めない女性の行為について、「おそらくこの寄付者女性が求めている見返りは、社会からもう少しだけ人種差別がなくなることだ」という考察がなされていて、なぜか少し感動した。自分もこの女性のようにありたいと思ったのかもしれない。