音楽が鳴りやんだら

著者 :
  • 文藝春秋
3.19
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本棚登録 : 252
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915814

作品紹介・あらすじ

作詞・作曲の天賦の才に恵まれた、福田葵。彼が幼馴染と組んだバンド「Thursday Night Music Club」・通称サーズデイが、とうとう大手レコード会社の目に留まった。デビューの条件は、ベーシストを入れ替えること。

「君には音楽の才がある。代償を恐れて自分で才能の芽を潰すことは、音楽への裏切りにもならないか」

プロデューサーの中田の言葉を受け入れ、メジャーデビューを決断した葵は次第に変貌し――。
芥川賞作家の新境地、圧巻のバンド小説。

感想・レビュー・書評

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  • 前半があまりにも冗長で、投げ出したくもなったが、後半はさすがの高橋弘希さん節が炸裂していた。
    ロックスターの光と影。通して傑作かと言われれば、そうといいづらいが、らしさを感じるうちは追っかけたくなる作家であるのは、はっきりそうと言える。

  • ロックだ。音楽に魅入られ、音楽に取り憑かれ、音楽に狂わされていく人間の姿がある。
    幼馴染4人グループで始まったThursday Night Music Clubという一つのバンドが、どんどん変貌を遂げていくさまは、さながら音楽のよう。
    フィンランドに滞在する場面が思いがけずあったりして嬉しかった。
    終盤、彼らバンドメンバーが知らないデビューをめぐる真相と過去が明らかにされるのだが、鳥肌が立った。音楽を愛してしまった人は、その音楽が生まれるためならどのような手段でも講じられるのだろう。

    〈 ロックに日常性なんて必要か? 必要なのは衝動と破壊と混沌だよ、俺はそういう気分でいま音楽を作っているんだ 〉

    それにしても、狂乱のライブシーンなど各所ぐいぐい読ませる鬼気迫る文体で、高橋弘希さんのこれまでの筆致とはまるで違うので驚いた。
    言わずもがな両方好きです。夕焼けの描写が多く、とてもよかった。

  • 何でこの本を読んでしまったんだろう。後悔。
    バンドの成長物語のような、ただあらすじを追ってるような淡々とした前半。それでも続きが気になって読んでいた。中盤以降、段々と精神が崩壊していくような展開に。終盤ついていけなくなり読むのを断念。

  • バンドサクセス小説ですが、純文学要素が多大に入っているのでちょっと何言っているか分からないという部分も沢山ありました。でもバンド小説として序盤はとても興味深く、あるある要素も含めて面白かったです。
    次第に訳の分からないバンドになってしまって、読んでいてどんな音楽やっているのか分からなくなってしまいました。
    序盤はオルタナ系で曲がメロディアスで歌謡曲っぽい親しみやすさがあるようだったので、ウイーザーなんかを想像していましたが、シアトリカルな要素が多くなってきて、ゴスっぽくなったり、ナパームデスなんて言葉が出て来たり、どう考えてもリスナーはドン引きだと思います。牛の頭蓋骨被ったりようわからん。

  • 高橋弘希著『音楽が鳴りやんだら = when the music stops』(文藝春愁)
    2022.8.10発行

    2023.3.18読了
     高橋弘希氏の作品は、そのほとんどが暴力や死に満ちている。この作品も同様である。しかしながら、本作は初の長編小説ということもあり、これまでの高橋作品にはなかった要素が取り込まれている。

     その一つはところどころに挟み込まれている笑い要素である。高橋弘希氏は、エッセイなどで、よく面白いのか面白くないのかよく分からない笑い要素を滑り込ませてくるが、この小説にはその文体がいくつか紛れ込んでいる。特に4章まではその傾向が強い。私は高橋作品に笑いを求めてはいないので、正直、「高橋弘希も、ついに大衆受けを狙うようになったのだろうか」とがっかりした気分に陥った。

     しかし、中盤に入ると、高橋弘希氏の真骨頂である、残酷でグロテスクな描写が入り、まさに神業としか言いようがない筆さばきに圧巻させられてしまった。ニッパーで自分の腕の静脈を毟るシーンなど目を背けたいくらいだった。

     主人公の福田葵はロックスターであり、ゆえに作中で語られる音楽もロックが中心となるのだが、私はロックに興味がないので、作品を本当には理解できないかもしれない。しかし、全てを犠牲にしてでも音楽を追求しようとする姿勢は、どこか芥川龍之介を彷彿とさせられたし、「俺は死なない音楽を創りたい」という葵の発言からは、三島由紀夫『金閣寺』を想起しなくもない。高橋弘希氏は、音楽も小説も作り方は似ていると文芸誌のインタビューで答えたこともあり、葵を高橋弘希その人と見て解釈することもできるだろう。

     葵は、当初、果たして自分がロックスターとして本物なのかどうかについて、恐ろしく強迫観念に囚われていた。本物のロックスターであるならば、警察沙汰を起こしたり、自殺したりしなければ、ロックスターとは言えないのではないか? 葵はそうした強迫観念に囚われて事実そのような行為を続けて身を滅ぼしていく。しかし、それに比例して素晴らしい音楽が創造されていくという皮肉。そのような生活を続けることができるはずもなく、だからロックスターが自殺するのは正しいことなんだと最後は引金を自分の口腔に向けて引くことになる。

     この作品は、今日の小説表現としては過激すぎると思われる描写がふんだんに盛り込まれている。もともとアンダーグラウンドな描写を得意とする高橋弘希氏が、薬物やセックスといった題材を取り上げるのは時間の問題だったのかもしれない。救いがないわけではなく、展開としては『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』に似たような構造を持ち合わせている。高橋弘希氏はただ底なしの絶望を描きたいわけではないのだ。

     この小説は、間違いなく高橋弘希氏にしか書けなかった。高橋弘希氏がやらないと意味がない小説だった。

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/032292031

  • 高橋弘希さんご自身もバンド活動をされていたそうで、彼の音楽に対する情熱は充分伝わりました。が、葵が作る歌詞やライブ中のMCが長舌と感じられ、最後まで私は作中のバンド、サーズデイのファンにはなれなませんでした。

  • 序盤はともかくバンド周りのエピソードがリアルで面白くさくさく読み進めるうちに途中からとんでもない純文学に変容してきた!
    エモエモにエモいバンド小説な文学作品
    ラストの落とし所はどうなんだろうとまだ考え中
    何回も読み返すであろう本
    昔聴いてた洋ロックSpotifyで見つけてたくさん聴いた 懐かしい
    一度心を揺らされた音楽は時を置いて聴いても心が動く時があると再認識

  • ほんタメ!から。どんどん濃くなっていって純文学なんだなと思った。
    主人公がペラペラ話すのですごく薄っぺらい人間に見える。自分もよく話す人間だからこうならないように気をつけようと思った。キザなところもきつい。言葉がトレンディドラマみたい。

    作者は音楽がすごく好きなのかな。

  • これは…高揚感と切なさに胸がしめつけられて堪らない。

    言葉が溢れ出し止まらなかったんだろうか。だんだん加速して終盤へと向かう勢いがすごい。それに登場人物が皆おもしろい。

    読む前から「音楽が鳴りやんだら」というタイトルになぜか惹かれていた。その意味が解った時、惹かれた意味も解った気がした。私も考えたことがあるよ、音楽が鳴りやんだら、と。

    高橋さんは色んな題材で作品を書かれているけど、テーマは一貫しているように思う。私はずっとそう感じている。

  • 2022.10.25 図書館

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著者プロフィール

「指の骨」で新潮新人賞を受賞しデビュー。若手作家の描いた現代の「野火」として注目を集める。同作にて芥川賞候補、三島賞候補。「日曜日の人々(サンデー・ピープル)」で野間文芸新人賞受賞、「送り火」で芥川賞受賞。

「2019年 『日曜日の人々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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