BOOKSのんべえ お酒で味わう日本文学32選

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916835

作品紹介・あらすじ

文学のとなりには、いつもお酒がある。

『茄子の輝き』のレモンサワー、酔わない山本周五郎、センセイの美しいお酌、太宰治とりんご酒、『しらふで生きる』、武田泰淳が助手席であける缶ビール、内田百間の「お酒運」、名前はまだない「猫」が飲んだビールの味……。

ツボな選書で味わうおいしいブックエッセイ!

★★★

『BOOKSのんべえ』は、
おいしいお酒と、ぐっとくる肴、
のんべえと、のんべえにひとこと言いたいひとの登場する、
小説と随筆を集めた本屋さん。

なにかと極端にふれがちなお酒との、
「ちょうどよい距離」を探して、
今日も店主はページをめくっています。

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  • 木村衣有子(yuko kimura)|note
    https://note.com/yukokimura1002/

    YUKO KIMURA 木村衣有子(@hanjiro1002) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/hanjiro1002/

    『BOOKSのんべえ お酒で味わう日本文学32選』木村衣有子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163916835

  • 文学は『不健康』、落語は『スカタン(粗忽)』と相性が良い。

    中でも純文学は、出自・不遇・無学・犯罪・薬物…を赤裸々に綴る私小説というジャンルが確立されており、明治の田山花袋から令和の西村賢太までその松明は絶やすことなく受け継がれている。

    書き手自身の経験だけに、そら克明に、時に酸鼻極まりないシーンもありありと書け、少々文章に粗さがあろうが、荒々しい文体と好意的に解釈され、『個性』という融通無碍の言葉に併呑され、ダンマリを決め込むしかない。

    無頼派作家 町田康は『面白い文章を書く秘伝は、本当のことを書くこと』と喝破。自著『しらふで生きる』では、30年間名うての酒飲みとして鳴らすも、2015年より断酒。そこに至る経緯とビフォーアフターを縷々語る。

    その本も含め、本書には32の作品を通じて『酒と対峙する』様々なシーンが紹介される。〈色恋・依存・経済・戦後・酒場・鯨飲・酒肴・断酒・下戸・闇酒…〉。

    そこに通底するのは『酒のある風景は時代を映す』ということ。

    内田百閒は『百鬼園戦後日記』では、終戦の翌年新潮社と〈原稿料と酒1合〉を物々交換する約束するほど酒の入手は困難を極めており、開高健は『続・食べる』で、日本酒のベタベタした甘さは許されないと当時出回っていた三倍醸造酒の人工的な甘さに辟易し、武田百合子は『富士日記』に、夫の泰淳が故障中の車の助手席で缶ビールをあけたと記したのは昭和41年のことで、金原ひとみの『ストロングゼロ』の主人公である若き女性編集者はアルコール度9%のストロングゼロをのべつ幕なしに飲みまくる。目覚めに飲み、出社時にはコンビニのアイスコーヒー用の氷入りカップにストロングを入れれば、炭酸水に見えるから社内ても堂々と飲めると画期的アイデアを思いついた自分を褒め讃え…。

    そうそう、この本の巻末には〈お酒と文学の100年〉と題する、酒にまつわるトピックと本書で紹介された本が舞台となった年代もプロットされ、この年表だけでお酒が飲める。

    アテか活字だなんて、いよいよ私もかなりの依存性ですな。ビール会社に勤務する友人は語る。『これからどのビール会社も目指すところはノンアルコール飲料でシェアをいかに獲るか』。

    ノンアルコール飲料にお酒の味わいを求めること自体が、やがて健康上の都合でフェイドアウトしていく酒飲みのセーフティネットであり、メーカーも必死であり、のんべえに依存してまっせ!というのは暴論か…

    表紙だけを見れば、酒精に翻弄された文豪たちのかくもマヌケな泥酔譚かと思う方が多いかも。でも、それは早合点。一編一編が中々読ませる内容のブックガイドとなっており、脱稿後のお酒はさぞかし甘露だったことでしょうにと思うぐらいの力作です。

  •  宮沢 賢治や谷崎 潤一郎などが書いた小説の舞台がどんな感じの飲み屋でどんな人をモデルにして書いたのかが読んで行くと良く分かります。

  • 文学のとなりにはいつもお酒がある。お酒に関する小説と随筆を集めた読書エッセイ。お酒っていったっていろんな飲み方・楽しみ方、いろんな考え方があるわけで。時代が古くなればなるほど男と女でだいぶ全てに違いがあって時代を感じる。興味をそそられた作品多数。「小春日和」「放浪記」「センセイの鞄」「神様のボート」。あ、女の人のやつばっかり。でも宮沢賢治も夏目漱石も谷崎潤一郎も村上春樹もまた読み返したい。

  • お酒を呑む人にはもちろんお薦めですが、いろんなモノとのキッカケが欲しいような人にもお薦めです。本作品では本以外にもお酒の銘柄、舞台となる土地や実際に存在する飲食店、過去の流行など魅力的なモノが沢山紹介されていて数珠繋ぎに触れていけるような気がします。

  • 【あの本の、あの一杯が、気になってしかたがない!】『吾輩は猫である』から『しらふで生きる』まで、文学の隣にはいつも酒がある。のんべえ心に刺さるツボな選書で味わう読書エッセイ。

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著者プロフィール

随筆家。1975年栃木生まれ。東京・浅草に暮らしながら、盛岡通いを続ける。生活哲学を映したエッセイに定評がある。著書に『京都カフェ案内』『猫の本棚』(平凡社)、『あのとき食べた、海老の尻尾』(大和出版)、『味見はるあき』(木村半次郎商店)などがある。

「2018年 『味見したい本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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