それは誠

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163917214

作品紹介・あらすじ

第169回芥川賞候補作に選ばれた、いま最も期待を集める作家の最新中編小説。修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言われぬ感動がこみ上げる名編。

感想・レビュー・書評

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    1.感想
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    ちょっと、私にはあわなかったです。
    非常に読みにくいし、少年たちの会話の流れがとてもわかりにくく、178ページがとてもながく感じました。

    冒険感もよくわからず、何がしたいのかもよくわらず、とにかくストーリーに入り込めませんでした。
    もう、純粋さとかわからないから、入り込めなかったかもな…

    ざんねん。


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    2.あらすじ
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    修学旅行で東京に行くことになった佐田誠は、自由行動の1日を利用して、日野に住むおじさんに会いに行く計画を立てる。
    最初は反対していた3班の男子メンバーが、行動を共にすることになっていく。


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    3.主な登場人物
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    ■3班
    佐田誠 目立たないキャラ

    井上奈緒
    班長、

    蔵並研吾
    勉強できる、まじめ

    大日向隼人
    スクールカーストで上位キャラ、サッカー部、王妃

    松帆一郎
    松、なんらかの障害持ち

    畠中結衣
    おとなしい

    小川楓
    明るい、リーダー的キャラ、人気女子

    ■先生
    名取先生 担任
    高村先生 細くて美人、女子生徒に人気

  •  『旅する練習』以来、乗代雄介さん2作目でした。4度目の芥川賞ノミネートも、結果的に受賞に至らず残念でしたが、『旅する練習』の清々しさは好みで、本作は先入観なしに読みました。

     物語の語り手は、高二の佐田誠。回想する形で綴られています。複雑な家庭環境の佐田こと〝僕〟は、修学旅行のグループ別自由行動から抜けて、生き別れの叔父に会う計画を立てます。
     登場人物も、高二の同じ自由行動グループの男女が中心で、青春群像劇になっています。
     
     元々仲がよかったメンバーではなかったのですが、佐田の生い立ちや過去を知り共有することで、心情が変化していきます。
     結果的に男子3名が佐田の傍に寄り添い、女子も協力(口車を合わせ)し、読み手もスリルと背徳感を味わいながら、メンバーに不思議な友情が芽生えていく、その変容が読みどころと思います。

     叔父さんの扱いやかなり大胆なことをしている割に軽い(青い)高校生に、少々響いてこない面もありましたが、若者の瑞々しい会話・心理描写は、改めて上手だなあという印象を強くしました。

     まだ2作品しか読んでいませんが、乗代さんは登場人物(主人公)に「書かせる」ことにこだわりをもっているのでしょうか? 他作品も読みながら、今後も注目していきたいと思います。

  • こういう冒険譚好きだ。
    高校の修学旅行で東京に行くことになった、誠は
    ある人に逢いたくて、密かにある計画を自分の中で考えてた。その計画を班員とともに実行していく。教師たちには、バレずに日野市に住む叔父のもとへ。班員たちの絆に涙するし、叔父に逢いたいかった理由とは。第169回芥川賞候補作となっている本作は、心に残る傑作となっています。

  • 修学旅行の自由行動を友達と抜け出して、生き別れたおじさんに会いに行く。
    簡単に言ってしまうとそれだけのことが、それがこんな青春小説に仕上がってしまうのはさすがだなと思った。
    高校時代の笑いや、クラスメイトとの距離が縮まるきっかけってこんな感じだったなと思い出しながら読んだ。
    こういう出来事って、大人になっても不思議と鮮明に覚えている。
    誰しもが持っている感覚を呼び起こされる小説だと思った。

  • 主人公だけでなく、登場人物たちがそれぞれの何かを抱えて、なんらかのこじらせぶりがあるところを描くのが上手い。登場人物たちが少しずつ歩み寄っていくのを、保護者のように息を詰めて見守りつつ読む。挿入された宮沢賢治の話が、後から実際の話にリンクした時、泣けた。

    芥川賞の選評で、「話を作った感がある」というのを読んだので、先入観ありありで読んでしまった。豊崎由美はこの小説を高く評価していてその選評に対してとっても怒っていたので、どっちかな?と思いつつ読んだ。そういう読み方は正しくないかもしれないが、こういう読み方もまあ面白いかなと思って。
    で、読んでみたら、どっちもありでした(笑)

    確かに、こう持って行きたい、という作者の意図を感じるんだよね。それは、前回も芥川賞の候補になった「旅する練習」にも感じた。確かにその仕掛けのせいで、最後には泣かされるんだけど。作者は、そんな気はないんですけどね、ってそっけない書き方をしてるところが、なかなか憎いというか、そこが鼻につくっていうか(笑)今回は、はなっから、たぶんここは伏線で泣かせるんだろうなと、わかって読んでたから、予定調和というか、そんな感じだった。
    豊崎さんは、創作なんだから、そういう仕掛けはあるだろうと言ってた。確かにそれもそう。
    そして、その仕掛けが鼻についたとしても余りあるくらいの出来でもある。
    仕掛けはいくつかあるのだけど、その一つは、吃音で病弱な松くんの存在。種明かしに至る最後まで、この存在が効いている。
    この松くんの存在感たるや!
    (でも、松くんみたいな存在を持ってくるの卑怯だろうという見方もおそらくあるだろうと思う。障がい者を「善なるもの」として配置することに対して、安易じゃないかという見方もよくわかる。)
    でも松くん魅力的で泣かされちゃうんだよね。

    ということで、正月の読書小説の在り方について考えることができて、楽しめました。
    この小説自体も好きですし。

  • 高校の修学旅行で、東京に行くことになった佐田誠たち。友だちがおらず、目立たない佐田の主張に班員たちが示すさまざまな姿が興味深い。

    ただ、高校の出欠は結構シビアなので、そんなに休めるのかなという現実的な疑問は……野暮なのだろう。

    饒舌体というのか、切れ目のない文体は苦手なので、読むのが辛かった。途中でやめようかと思ったほど。『旅する練習』の著者なので、なんとか読んだ。

  • 乗代さん、やっぱりめちゃくちゃ好きかも…
    去年読んだ『パパイヤ・ママイヤ』は、実は去年のベスト3として本屋大賞に応募したんだけど、この作品も、青春のまばゆさが溢れていてすごく好き。

    高2の佐田くんの、東京への修学旅行の手記。
    もったいをつけるような、照れ隠しのような、本当はとても大事に思っていることをさもなんてことないかのように書く、ユーモアの織り込まれた文章がすごくよかった。
    急いで読んだから、また本がたまってない時にもっかい読みたい。

  • 乗代雄介さん、とても良い。「皆のあらばしり」がとても好き。
    青春だと思う。高校生のリアルな感情がよく書けていて、共感できる。
    おじさんがよく歌っていた曲に出てくる歌詞。ギターを弾きながら歌う。「それは誠」タイトルの意味を知る。
    学校にバレたら特進解除。ハラハラする。
    大冒険で、先生にバレないように、作戦を練って?
    修学旅行の班行動を抜け出す男子4人。
    はじめは、全く仲良しとはいえない雰囲気だったのに。
    でも女子を含め、班の連携が良かった。
    警察と話したときもドキドキした。
    こんな修学旅行は、絶対に忘れないよね。
    松くんのお母さんも素敵。
    じわじわくる(泣)
    背伸びして成長するのだと思った。
    いい話だった。
    芥川賞は残念だったけど、これからの乗代さんの話も楽しみに待ちたい。

  • <トヨザキ社長の鮭児(けいじ)書店>乗代雄介「それは誠」 知的な筆致 胸震わす:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/954341/

    乗代雄介さん「それは誠」インタビュー 子どもたちに伝えたい“確かに在る”青春「この世界は捨てたもんじゃない」|好書好日(2023.09.23)
    https://book.asahi.com/article/15004269

    『それは誠』乗代雄介 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163917214

  • とてもよかった。高校生たちの距離の変化、何気ないしぐさの描写、最後に感動の波がくるその展開。最初は時系列がバラバラで無秩序な感じがあったが、それも構成の巧みさと思えた。主人公佐田誠による修学旅行記は、まず班決めからスタート。メンバーのクラスでの立ち位置、背景、すべてがさまざまだ。そんな彼らが佐田の「おじさん探し」を通して少し近づく。佐田のために学校側に嘘をついて修学旅行の自由時間に「別行動」をとる男子4人。女子メンバーと口裏を合わせる様子にはチームワークの良さを感じてしまう。最初には予想もしない光景だった。

    松くんのお母さんと佐田の電話でのやりとりが、私の中では特に印象が強い。吃音をもつ松くんから、いつも優しくしてくれる佐田のことをきいていたと、母親が感謝の言葉を伝える場面だ。佐田にとってみれば思いがけない展開だった。そしてわざわざ街角ピアノの話題を出して自分を「悪く」表現しようとするが、松の母親にはお見通しだ。互いに人の気持ちがよくわかるのだ。

    そうそう、おじさんの話題だった。夕方に近づいていく日野の光景は忘れられない。

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著者プロフィール

1986年北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年『十七八より』で「群像新人賞」を受賞し、デビュー。18年『本物の読書家』で「野間文芸新人賞」を受賞する。23年『それは誠』が「芥川賞」候補作となる。その他著書に、『十七八より』『本物の読書家』『最高の任務』『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』等がある。

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