- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163917214
感想・レビュー・書評
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高校生のリアルな会話はずっと映画のワンシーンを見ているかのようだった。叔父に会えるのかという引きもあったり、蔵並が間に合うと主張するシーンはあたかも鉄道ミステリーに出てくる時刻表トリックの謎解きのようでもあり、純文学が苦手な人でも最後まで飽きずに読めるのではないだろうか。最後の列車内でもシーンは旅の終わりのホッとする気持ちもあいまって爽やかな感動がこみあげてきた。
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修学旅行を抜け出して親戚のおじさんに会いに行く話。
前半が読みづらいのは、ワザとなのかも知れない。後半一気に引き込まれて、自分も日野にいる気分でした。
斜に構えてる主人公が魅力的だし、周りの友達と打ち解けて行く様子が蒼くて、こそばゆく感じました。 -
共に旅する友達でも他人でもない絶妙な距離感のクラスメイトたち。甘くて酸っぱいひそやかな恋心。家族と社会への諦観などなど、田舎の高校の空気感だったり、思春期の心の機微なんかが一人称の繊細な筆致で鮮やかに描き出されていて、ほうっと溜息が出た。たくさん小説を読んでいるわけでない自分でも、「上手いっ!!」と思った作品。
等身大でひねくれものの主人公のささやかな冒険が、軽快な疾走感を伴って語られるロードムービー。
自然に感情移入できて、だからこそ、主人公の小さな冒険が自分をどこか遠くへ連れて行ってくれるような気がしている。成長していく主人公と、ゆっくりと芽吹く確かな友情に強く胸を打たれる。
これ以上無いと思える青春の小説でした。 -
友達なんて、なろうって言ってなるもんじゃないぜ。
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高校時代は勉強しかしなかった。と思おうとしてきたが、やはりいろいろなことがあった気もする。そんなことを思う読後。
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2023年の芥川賞の候補作品。初めての作家さん。直木賞候補と勘違いしていて読み始めたが、読み進むにつれて、どう考えても違うだろと思って調べ直したら、芥川賞候補だったので納得した。そういうことで、私の中では芥川賞らしい雰囲気をもつ小説。
高校生の修学旅行の話を、主人公の男の子の視点で描いていく。この描き方が最初は読みづらく、また登場人物の名前が覚えにくいというのも加わり、中盤までは挫折しそうになったが、後半からは盛り返し、結末にむかってのワクワク感がつのっていて一気読み。最後は劇的なファンファーレではなく、しっとりと余韻を残して終わる。素晴らしい。登場する10代の若者たちのひねた感じ、そこに隠された優しさが上品に書いてあって、青春時代をしみじみ思い返して感動した。 -
不器用で人との関わりが苦手な主人公が、修学旅行で同じグループになったクラスメイトとの関係を通して、自分自身の過去と向き合い、何を感じるのか。
思春期ならではの潔癖さや不器用さがなんだか懐かしく、まぶしかった。 -
乗代雄介さんの小説は本作を入れても4冊しか読んでいない。
それでも『それは誠』がいちばん好きとハッキリ言える。
高校二年生の修学旅行の思い出を綴る佐田誠。
自由行動の予定を決めるとき
「音信不通になったおじさんに会いたい」という思いを
同じ班の皆に伝える。
誠は同行してくれる(?)という男子と、おじさんのアパートを目指す。
P91
疲れた友達を休ませるため大きめの公園に立ち寄る。
そこで出会った園児の何気ない様子を乗代さんは綺麗に切り取る。
私の頭の中でカシャカシャと映像が映し出され素早く消え去っていく。
まったく私の語彙力の無さといったら...。 -
素敵!!爽やか!!
登場人物みんながとても素敵であんなクラスがあったら幸せだろうなぁ。3班のらみんなも先生もなんて素敵なんやろう。
一緒に修学旅行に行って一緒におじさんを待ってる気持ちになる位引き込まれる。
松くんがまた素敵で、松くんのお母さんも素敵。
落ち葉の描写が綺麗過ぎて、本を読みながらもキラキラした光が見えて本当に幸せなった。
やっぱり素敵な本を読んだら元気になるなぁとほっこりしました。 -
自意識過剰な高校生が照れつつカッコつけてる文体が、読んでいて遠い昔の恥ずかしさと懐かしさを喚起する。修学旅行で冒険する高校生4人が気持ちを繋げてゆく過程がじんわり心地よい。協力する女子生徒たちもとても素敵。