自然、文化、そして不平等 ―― 国際比較と歴史の視点から

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163917252

作品紹介・あらすじ

世界的ベストセラー『21世紀の資本』のトマ・ピケティが、「格差」について考察。「r>g」の衝撃から10年。戦争、気候危機、経済不安などを受け、世界は”第二次ピケティ・ブーム”へ。その最新思想エッセンスを、ピケティみずからコンパクトな一冊にまとめたのが本書である。・「社会は平等に向かうべき」との思想はいつ始まったのか・所得格差が最も少ない地域、最も多い地域は?・「所得格差」と「資産格差」について・累進課税制度の衝撃・世界のスーパーリッチたちの巨額税金逃れ問題について・ジェンダー格差をどう考えるか?・環境問題の本質とは、「自然資本の破壊」である・炭素排出制限量において、取り入れるべきアイデア・「戦争や疫病が平等を生む」という定説は本当かーー「持続可能な格差水準」は、存在するのだろうか?

感想・レビュー・書評

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  • 「自然、文化、そして不平等」書評 データを示し政策批判|好書好日(2023.07.29)
    https://book.asahi.com/article/14968277

    経済格差の解決 政治参加が鍵 [評]根井雅弘(京都大教授)
    <書評>自然、文化、そして不平等:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/895648/

    『自然、文化、そして不平等 —— 国際比較と歴史の視点から』トマ・ピケティ 村井章子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163917252

  • トマ・ピケティの著作が、さまざまな場面で取り沙汰されるのを見るにつけ、「21世紀の資本」を読まなくてはなあと思ってはいた。
    だが、いつも後回し。読みたい本がたくさんありすぎて腰を据えて読む気になかなかなれず。
    そんな時に、この講演録は、章立てが細かく、データを駆使してわかりやすくピケティの分析を披露してくれているので、経済学に暗い自分でも十分に読める。

    データは中央値や平均値を見るのでは実態が掴めないこと。データ分析が鮮やかでさすがだ。
    そこから浮かび上がる格差について、ピケティはあらゆる格差をゼロにしようと思っているわけではなく、一部の富裕層と圧倒的多数の一般庶民の格差を5対1.あるいは10対1くらいに抑えたいと考えていること。資本主義社会の枠内の現実路線を目指しているなと思う。これは意外。

    そして地球温暖化と経済格差の相関性も鮮やかにデータで示している。
    気候変動の影響はこの暑い夏でひしひしと感じることだが、これまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性があるという仮説を立てている。
    確かにその萌芽はすでにあると思うが、やはり一筋縄でないいかないだろうな。
    私はこの件に関してはとても悲観的だ。
    知れば知るほど、日本は、世界は、人類は決して解決できないと確信してしまう。
    確信がひっくり返されることを願ってまた次の本を読んでいくのだが。さて。

  • 講演録なので、分かりやすかった。所得格差と資産格差をどうにかしないと格差はなくならない、とわかった。教育もすごく重要だし、ジェンダー格差もなくさないと日本に未来はないと思った。

  • 世界中で起きている現代の不平等は、自然や文化の変化だけでなく、政治によって大きく変化する。特に所得格差の拡大や富裕層の税逃れなどが不平等を助長している現実があり、これらの問題に対処するためには、個々の専門学者の取り組みだけでなく、政治的な施策が不可欠だと、言う事だ。日本においては、特に所得税や相続税が他国に比べ既に高い利率がかけられていることを認知しておくべきだ。

  • あまり新鮮な意見では無かった。
    多分皆んながなんとなく感じてる「格差が無くなればいいのにな」って事を具体的な数字で示してくれている。
    だからこそ格差は今後も無くならないと思う、だって皆んなそう思ってるはずなのに、過去から格差が拡大していってるから。
    特に資本主義が最強のイデオロギーのうちはね。かと言って共産主義はありえない。
    で、エコ社会主義!ってのもありえないだろ。
    資源の消費速度が早くてそのうち枯渇するだろうけど、その時は適当に人間が間引かれて、それに適した数の人類が生き残って、「そういう環境」がまた出来上がるだけだとおもう。
    私ができるのは悲惨な間引きが行われない事を願うだけだろう。

  • 講演録のため、浅い感じがするが、ポイントは十分に押さえられているので、ここから広げていけばよい。
    歴史では政治体制による不平等。政治参加することで変えられるだろう。
    所得格差は制度による格差。自然が大きな要因ではない。
    資産は富の再分配の問題。上位から中位へはなされたが、下位までは届いていない。
    ジェンダーは家父長制度的経済システムによる。
    二酸化炭素排出量は既に十分に偏っている。
    これらは経済だけの問題ではなく、今後は専門家に任せるばかりでなく、広い視野を持って問題を見、解決のために話し合わなければならない。

  • オーディブルで聴いたのは失敗だったかもしれない。豊富なデータ比較や諸外国の事情についてなので、オーディブルだと分かりづらいように感じた(わたしの理解力の問題かもしれない)。

    翻訳本なので日本との比較が少ないのも個人的にはイメージしづらかった原因のひとつかなと思う。でも調べないと分からない海外の事情を知れるのはいい機会になった。

  • 2022.3.18にケ・ブランリ=ジャック・シラク美術館で行われた講演の原稿を加筆訂正したもの。講演は民族学会の招きで行われた。

    ・不平等を生む体制が社会によってどれほど異なるとしても、過去数世紀にわたって基調的な流れ~社会的な平等へと向かう底流はあった。18世紀末という特定の時期に水脈が現れ、政治的・社会経済的平等の実現をめざして勢いを増したていった。
    ・不平等を生む体制は社会によって大きく異なるが、自然、文化、不平等の間にはまったくちがう種類の関係性が存在する
    ・気候変動問題は、現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては解決できない。それは「民主的でエコロジカルな参加型社会主義」である。

    ・スウェーデンは今日きわめて平等的な社会だといわれるが、20世紀初頭はそうではなかった。1920年に普通選挙が実現し、社会民主労働者党が1932年に政権党となり以後2000年代までほぼ切れ目なく政権を担当し、税収は教育や医療へのアクセス拡大に充当された。

    ・不平等に関しては二つの問題がある。累進課税と環境破壊だ。

    ・経済成長の真の原動力となるのは教育だ。

    ・単に金銭的な再分配だけが福祉国家の仕事ではない。

    ・自然の破壊とは自然資本の破壊にほかならない。

    ・気候変動の影響がこれまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性は十分にある。
    ・不平等の問題は経済学者だけでは解決できない。狭い視野ではなく、歴史学者、社会学者、政治学者、人類学者、民俗学者たちの力が必要だ。経済や歴史の知識と知恵を共有することで、より民主的な社会と権力のよりよい配分をめざす運動の重要な一翼を担うことができるし、またそうしなければならない。

    2023.7.10第1刷

  • ピケティさんの書籍はどれも読むのが大変だが、本書は講義内容の文字起こしなのでサクッと読める。格差(所得、資産、ジェンダーなど)や環境問題(炭素排出制限量の南北問題、自然資本の破壊など)についての彼のスタンスとその結論に至った経緯が簡潔に記されている。ピケティさんご自身による「ピケティ入門書」という位置づけの本。

  •  2022年3月18日のジャック・シラク美術館で行われた講演録。
     「社会的不平等の違いや度合いや構造は・・・・参政権をはじめとする政治参加のほうが大きな要因だったかもしれない。その一方で、「自然」の要因、たとえば個人の能力であるとか、天然資源などに恵まれているといったことが果たす役割は、思うほど大きくない。」

     スウェーデンの例は「ある国が本来的に不平等だとか平等だということはないと示した点で興味深い」「肝心なのは、政権運営を担うのは誰か、何を目指すのかということである。」

     そして「不平等の大幅な解消無くしては、また現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては、気候変動問題は解決することはできない」と結論づける。

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著者プロフィール

フランス国立社会科学高等研究院の研究所長、パリ経済学校の教授、ならびにグローバル不平等研究所の共同主宰者。とくにLe capital au XXIe siècle (2013)(山形浩生・守岡桜・森本正史訳『21世紀の資本』みすず書房、2014年)、Capital et Idéologie (2019)、Une brève histoire de l’égalité (2021)の著者として知られる。

「2023年 『差別と資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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