私たちの世代は

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163917276

感想・レビュー・書評

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  • 瀬尾さんの紡ぐ世界はいつも優しくて温かい。
    希望を感じさせてくれる。

    コロナ禍をきっかけに不登校になった心晴と、親の仕事のことでいじめられていた冴。コロナ禍を生きた二人の小学生が大人になるまでが綴られています。

    これまでの常識、当たり前だったことが何もかもガラッと変わってしまった世の中。大人も不自由だったけど、学校で過ごす子どもたちはきっとそれ以上だろう。
    「もしコロナ感染がなかったらーー」
    誰もが考えてしまったと思う。

    もう二度と同じようなことは起きてほしくない。
    哀しいことも嫌なこともあったけど、でも、だからこそ出会えた人、得られたことも確かにあって、未来に繋がっていることもきっとあるーー。
    瀬尾さんは、そんなふうに思わせてくれました。

    冴ちゃんのこれからが本当に楽しみです!
    いつかスピンオフとか読みたいなぁ。

    コロナ禍を描いた作品はたくさんあるけど、これは代表する作品になると思う。
    瀬尾さんの作品のなかでも特別な1冊になりました。どんなふうに感じるのか5年後、10年後にまた再読したい。
    コロナ禍を学生として過ごした若い世代の人たちには、特に読んで欲しい作品です。


    『明日が怖いものではなく楽しみになったのは、あの日からだよ』

  • 正直いうと登場人物がコロコロ変わるので慣れるまでとても読みにくかった。しかも時間も現在と未来を行き来している。よくある書き方なのだけど…ちょっと苦手。すごくたくさん主人公がいるのかと思ったら結局二人だった。苦笑

    …コロナ禍、小3だった二人の主人公たち。
    何もかも取り上げられて我慢の日々に何を楽しみに思い過ごしていたのか。そしてその後どのようになっていったのか…。全然接点のなかった二人が23歳で出会う。二人が過ごしてきた日々に共感しあえて、互いに高めあうことができるような関係を築く。感染症のせいで土の中にこもっていたような生活だったけれども『あの日々があったからこそ…』と思えるのは素敵なことだと思う。

  • そう、私たちの世代は……

    これからそうやって語られるようになるのだろう。
    奪われた時間、経験。
    それは自ら放棄したわけではないのに、一括りにまとめられる。

    ちょうどその頃に小学3年生だった子どもに焦点をおく。
    不安や不満を感じながらも日々を送る。
    この「小3」という年齢が絶妙で、何もわからない幼児ではなく、何が起こったか理解できる年でもなく、でも自我が出てきつつある。
    大人の言うこともなんとなく分かるけれど、不安や不満はある。親の保護下にあるから、自分でかってに動くことはできない。

    作品のなかでは、二人の女の子の小学生から20代までを時間軸を行ったり戻ったりしながら進んでいく。
    一人称で語られるが、誰なのか明確に分からないので混乱する。

    家庭の対比はわかりやすい。
    親のいない施設出身のシングマザーで夜の仕事をする母のもとに暮らす冴。
    経済的に余裕があり私立小学校にかよい、幼児教育に関わってきた母がいる心晴。

    ストーリーは先が読めてしまうけれど、温かいものが残る。
    親の愛をうけて育った子、親に反抗反発してきた子、育児放棄でまわりに助けられた子、、
    感染症によって変わってしまったのかもしれない人生……
    いじめや不登校、育児放棄、感染症がなくてもずっと起こっている問題。

    きれいにまとめられて、読み終えると、サイダーを飲んだときのような爽快感。
    感動ではあるが、作品のなかの話に終ってるようにも思える。

  • エピソード ★★★★★
    読後感 ★★★★★
    読みやすさ ★★★★★
    どんでん返し ★★★☆☆
    人生への影響 ★★★☆☆

    感染症によって、壊された思い出もあるし、それを自分に都合がいい理由にして言い訳をつくったことも沢山ある。この期間が果たして良かったものなのか、一概には言えないけど、この期間だったからこそ、出逢えたこと、人、物、気持ちがあると思う。それを噛み締めて、自信を持って、踏み出していこうと思えた作品でした。

  • 最初は視点の切り替えに追いつかず登場人物が錯綜していく。途中からだんだん、2人の少女の話だとわかってくる。色々紐づいた瞬間、すごく綺麗な一本の線に繋がる。最後には、瀬尾さんの作品だわ、って思える結末でした。

    コロナ禍に小学生だった少女たちのお話。
    コロナは今現時点で過去になりつつあるが、あの時期の捉え方、反応の仕方は本当に人それぞれ。もう2度と嫌だという人もあれば、あの頃が懐かしい、という人も。あの時誰かが咳をちょっとでもしようものならすんごい距離を取る人や早々にマスクを外してしまう人もいたし。個人的思想が登場人物やそれぞれ随所に現れるので、誰かしらには共感がしやすい。

    母親と子供の関係性の対比、支えてくれた男の子との関係、周りの人との関係。閉じられた社会だったからこそ作られた関係もあるのは確か。

    このお話では、コロナによって社会全体が機能不全に陥った時に取りこぼされる人がいる、というという側面もあり、これはうーん自分の人生を普通に生きてるだけなら気が付かなかったことだな、と思いました。

    個人的には心晴のカテキョをしてくれた先生が神だと思ってます。あんな人おらんー!

    とあれこれ思うところが溢れる作品でした

    2023.11.13
    180

  • 過去の些細な、行動、言動が、今を作っていて、どんなに苦しくて辛い事があった過去だったとしても、それがあったから、出会えた事や人がいるんだなと改めて思えた。

  • コロナ禍をまざまざと思い出させられる物語と共に、人がもつ優しさ、そしていやらしさなどが、すっきりと書かれていると感じた。

  • コロナ禍で失ったもの、えられなかったものは確かにある。コロナ禍の子供達に焦点を当てた作品。家族以外の人の温かなつながりに支えられる描写が良かった。

  • "どの時代だってそこにいる人はさして変わらないのに、何かと理由をつけて世代でくくるなんてばかげている"

    "泣いていても時は進む。
    どれだけ悲しい出来事が起きても、大事なものを失っても、止まるものは何一つないのだ。"

    "愛も幸せも形はない。だけど、それが見える瞬間は本当にある。"

    "誰かと交わす言葉がどれだけ支えになるのかを、そして、その人と会える喜びが何ものにも代えがたいことを、知った"

  • このコロナの時代を過ごした児童や生徒は、かわいそうだなって思っていた。

    その思いも間違っていたかもと、 そんな気持ちになりました。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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