センスの哲学

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163918273

感想・レビュー・書評

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  • 口語でゆっくりと論が展開されるのでかなり追いやすい。哲学への橋渡しが丁寧なので、学習の起点としても有意義だと思う。
    他方、自分はどちらかといえばセンスがある(美的感覚についての関心が強く、インプット量が多い+楽しみ方を知っている)と自負している人間なんだけど、記載内容についてはある意味腑に落ち"すぎる"というか、どうもセンスのよさを自認している作者が自分のアプローチを定式化した内容ではという気がしてしまう。
    たとえば、裾の折り返しがチェックになっている七分丈パンツは2024年現在どんなコーディネートでも取り繕えないようなダサアイテムなわけだけど、あれはあれでラウシェンバーグ的リズムが働いていると捉えられるわけで、ではなぜ世間一般で「センスが悪い」扱いなのか?という疑問には本書のフレームワークだけだと回答できない気がする。「センス」という言葉の持つ他者性への言及がないので、センスっていうよりは芸術に関する手引書と言ったほうが正しいのかな。
    まあ、一気読みして消化不良を起こしているかもしれないので、また読みます。

  • センスが良く以前に、そもそもセンスとはどういったものを指すのかということから話が進んでいく。話の軸となるリズムとは、人固有の揺れ動きを表していて、人間であるがゆえのブレのようなものが滲み出るところにセンスが宿るのかなと思った。漠然としたセンスという印象の輪郭を浮かび上がらせてくれるような本だった。

  • モデルの再現から降りることがセンスの目覚めである。

    楽しさには、実は快が含まれている。

    脱意味化 モデルからの脱却? メッセージ性からの解放

    GPTの語りが面白くないのは大意味しか伝えないからか。

    映画のショット、モンタージュ 

    予測誤差

    純粋ランダムを純粋ランダムとして見ることはできないから意味は生まれてしまう

    偶然性ベースのゆるい状態から締めていく

    可能性の余り「自分から湧いてくる偶然性で何ができるか?」

    典型性とは、そこで人が匿名になるものです。、、、それを手放しで肯定するのはファシズム的です。

  • 「これはセンスがよくなる本です」の言葉の真偽のほどはわからないけど、センスとは何か、センスを生活の中でどうとらえていくかという事はよくわかった。
    本の内容には直接関係ないけど、4章まで読み終えたところにあった「前半のまとめ」がよかった。
    論説文をフムフムと読んでいて、途中で「それで結局どういうことだったっけ?」となることがあるのだけど、まとめがあったお陰でそこまでの内容がしっかり整理されて、後半もスムーズに読めた。
    このスタイル、広まってほしいなぁ。

  • 悪くはないのだが、何かしら自分の期待しているものや自分の考えていることとの微差が良い意味での微差でないためか、心のなかで疑いながら読んだ。いささか冗長とも感じるが、哲学専門書ではないだろうからしょうがないのか。それをそう捉える背景と理路に納得いかない、というか。
    他方で、実際的に、そういう見方もできるか、と腑に落ちる記述もあり、私にとってまるで合わない本というわけではない。同じ部署だと相性悪いだろうけれど、別の部署の同期くらいなら、ちょうどいい距離の本。

  • 納得。私が、2つの方向性が違うものを摂取しようとしてきたのは、無意識なのか意識的なのか。高校時代に読んでしまったら、いろいろネタバレ。最近、文化資本についての言及を目にすることが増えたなあと。

  • 自分に固有の偶然性

    何かをやるときには、実力がまだ足りないという足りなさに着目するのではなく、「とりあえずの手持ちの技術と、自分から湧いてくる偶然性で何ができるか?」と考える。規範に従って、より高いレベルのものをと努力することも大事ですが、(中略)いつかの時点で、「これで行くんだ」と決める、というか諦めるしかない。



    デモーニッシユな反復

    人は、より自由になろうとする一方で、何らかのモデルや枠組みに頼っている。その間にジレンマがあり、切実さがある。人間の魅力というのもそうかもしれません。バランスがとれた良い人というだけでは魅力に欠ける、というのはよく言われる話で、どこか欠陥や破綻がある人にこそ惹きつけられてしまうことがある。その破綻というのは、その人固有のものというより、「ある種のテンプレのその人なりの表現」だったりする。固有の人生がなぜか典型的な破綻に取り憑かれてしまう…(後略)



    今日も今日とて「仮固定」

  • 難解な純文学や映画、現代美術に触れたとき
    意味を求めすぎないとはどういうことか
    そこにリズムを感じるにはどうすればよいのか

    哲学者による世界の見つめ方。
    著者のこれまでの本より遥かにわかりやすく書かれてあるが、後半の実践はやや難しい
    でもおもしろかった!

  • 普段の日常生活において、見聞きする「センス」という曖昧なワードに引っかかり、購入した本。

    「センス」や「地頭」という用語が、人を振り分ける文脈で使われる排他的なワードである、というのはまさしく自身の体感に基づいてる。

    文章全体として、哲学的な話しが多いので、所々よく分からないところがあった。

    要するに、鑑賞する作品の意味ではなく、0→1に移りゆく際の多くの次元の波のうねり(=リズム)を見出すことが、センスとのこと。

    であれば、この本自体を読了することで、センスを向上させる・磨くなどの意味を求めるのではなく、文体や扱う例などの見えにくい点を見出して揺らぎを楽しむことこそがセンスなのだろう。

  • いやー良い本を読んだ。
    映画や音楽、美術を題材に、なるほど、そうだったのか、そういう見方もあるのかという発見が多々あった本。書かれている文章も難しくないし、誰でも来いよ!と言ってくれている様な気配もする。
    もっと早く読みたかった。いや〜この本きっかけで美術に興味湧く人増えるでしょ。
    千葉雅也さんのNote購読してみようかな。

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著者プロフィール

1978年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。
著書に『意味がない無意味』(河出書房新社、2018)、『思弁的実在論と現代について 千葉雅也対談集』(青土社、2018)他

「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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