芥川賞全集 第三巻

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784165071303

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  • ▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
    https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/319719

  • 満州国グランドホテル で出てきたりょうかんふうを読んだ。 昭和の短編小説のしっとりとした味わい。

  • 平賀源内、長江デルタ、青果の市、連絡員、纏足の頃、和紙、劉廣福、登攀、雁立

  • 『平賀源内』 櫻田常久 著
    ★★★★☆

    芥川賞第12回受賞作(1940下期)

    平賀源内というと変わり者で孤高の天才というイメージを持っていたが、この小説の中の源内はとても人間らしい弱さや恥の心、素直さや人助けのための熱い思いを持っており、非常に好感の高い登場人物であった。通常の源内の人物像に縛られず、自由に書いている点を評価して★4つ。

    佐藤春夫氏、川端康成はこれを単なる歴史小説でも描写至上主義の自然主義小説でもなく、近代(当時なので明治〜大正時代を指す?)日本の知識階級の生き方について象徴的手法を取った観念小説とし、その点を評価するとともに、直木賞ではなく芥川賞に相応しいとしている。
    対して小島政二郎は「私には更正後の源内の生活に、あれ程科学狂だった彼の性癖が少しもにじみ出ていないのが物足りなかった。〜略〜開墾事業の中にも、彼らしい性格が畳み込まれていてこそ平賀源内ではないか。〜略〜小説である以上、私はやっぱり彼の性格の追求を求めたい」としている。



    --
    『長江デルタ』 多田裕計 著
    ★★★☆☆

    芥川賞第13回受賞作(1941上期)

    「今日はそれでも、非常に静かな日だ。」この終わりの一文で、この話は支那事変後の中国内の抗日運動やそれに相対する和平運動など政治的なものがテーマなのだが、より作者が大事にしたものは描写に徹した詩的なものだとわかった。
    詩的なので、どこの描写も物足りなく、登場人物同士の会話も上滑り感があった。美しい風景ではあるのだけれど。
    ちなみに、長江デルタは三角関係の象徴。



    --
    『青果の市』 芝木好子 著
    ★★★★☆

    芥川賞第14回受賞作(1941下期)

    女にして一家の青果業を一手に引き受け商売をうまく切り盛りする八重を中心に、ごく普通の民衆の暮らしが活き活きと描かれている点を評価する。
    また、著者の市場と労働に対する考えが八重の幼なじみであり淡い片恋の相手である末次の言葉を借りて述べられている点もよい。(選評委員の佐佐木茂索は、肉付けが乏しいとしているが)
    「市場へ来て最初にこれは行けないと思ったのは、労働条件と雇用制度が非常に悪いという事だった。こういうことでは、市場組織もいつか無理が来ると思っていた。」「それは、十年一日の如く同じ商品を同じ商人が商売する単純な行為だから、ここの人間はなんらの進歩も思想も必要でないんだ。雇主は愛も変わらぬ昔ながらの旦那根性だし、被用者は非経済的で卑屈で、なんらの自覚もないんだ。それが劣悪の雇用条件をもたらしたと思う。ここには福祉施設は何もないし、社会的な目を開いて青少年を指導する文化的なものや教養も全然ない。工場なんかよりずっとひどい所だと思うよ。」

    八重は金銭的な理由から女学校を退学したものの、家業で一端の成功とやりがいを手に入れ、非常に強く逞しい女性と感じる。一方弟は夜間大学に通いながらも、うだつの上がらないままで、線の細い印象がある。この対照的な二人をメインの登場人物に据える事で、著者は市場や労働の「汗をかき地道に取り組み小さなことに一喜一憂する」民衆の逞しさと時なる無力さを描いていると思うが、八重の健気さが物語全体を悲観的に見せないでよいものに仕上げていると思う。



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    『連絡員』 倉光俊夫 著
    ★★☆☆☆

    芥川賞第16回受賞作(1942下期)



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    『纏足の頃』 石塚喜久三 著
    ★★★☆☆

    芥川賞第17回受賞作(1943上期)



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    『和紙』 東野邊薫 著
    ★★★☆☆

    芥川賞第18回受賞作(1943下期)

    まずしい和紙作りの話なのに、妙に色っぽい。



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    『劉廣福』 八木義徳 著
    ★★★★☆

    芥川賞第19回受賞作(1944上期)



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    『登攀』 小尾十三 著
    ★★★★☆

    芥川賞第19回受賞作(1944上期)

    教師北原と朝鮮人寿善の山登りのシーンが良い。手紙というスタイルも効果的。



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    『雁立』 清水基吉 著
    ★★☆☆☆

    芥川賞第20回受賞作(1944下期)

    「戦前」最後の芥川賞作品。
    出兵する日本人青年の、私小説的な「恋愛小説」であるが、やわやわした文学青年の自己反省文を読んでいるようで、好みではなかった。

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