- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166600878
作品紹介・あらすじ
「ユダヤ人論」が好きなわりに、われわれ日本人はその実際をよく知らない。「ユダヤ陰謀説」などは論外としても、ユダヤ人といえば、みな熱心なユダヤ教徒で一枚岩を誇る民族、と思いがちだ。しかし例えば、建国半世紀のイスラエルは、百余国からのユダヤ人移民をかかえるマルチ・エスニック社会であり、ヨーロッパ系とアジア・アフリカ系の対立も激しい。世俗化、脱宗教化が進む一方で、宗教回帰現象もおきている。中東和平に対する考えも一様ではない。拡散するアイデンティティに揺れるイスラエルの行方を探り、現代における国家と民族、宗教の問題を考察する。
感想・レビュー・書評
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2度目の読了。ニュースでは伝えられない、イスラエルのユダヤ人の多様性に光を当てる本です。
イスラエル・パレスチナ問題は外から見るとどうしてもユダヤ人vsパレスチナアラブ人の対立構造へと単純化されてしまいますが、実はそうではありません。イスラエル国家のあり方、和平交渉や二国家共存への姿勢、さらにユダヤ人とは何かにわたるまで、ユダヤ人の中にも様々な派閥があり、多様な価値観があることを、この本はとてもわかりやすく説明してくれます。
ユダヤ・アイデンティティの多様性に加え、この本では、現代(2000年当時)の世俗化し多様化・断片化するイスラエル社会がいかに変わってきているのかについて、政治や宗教、過去の記憶などからもアプローチしています。
ただ、2000年の本なので、イスラエル・パレスチナの和平構築プロセスに関してはやや古い印象が否めません(それゆえ星4にしました)。今はネタニヤフ政権のもと大イスラエル主義が再び台頭し、二国家共存への道は現実的にかなり険しいものとなっています。20年を経て、イスラエルの政治がまた大きく変わっているのだと強く感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
11/28読了
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中東系ユダヤ人は労働党などシオニスト主流派によって作られたイスラエル社会への入場を拒絶され、リクード党の過激なナショナリズムにすがりイスラエル国民としての一体感を得ようとした。リクードの政治手法としてナショナリスティックなシンボルを全面に押し出し、イスラエルの外敵との対立を強調する。
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あとがきによると、本書の執筆理由は3つある。
1.イスラエルをユダヤ人のアイデンティティという視点から検討する。
2.ユダヤ教徒やユダヤ人の多様性に触れる。
3.ナショナリズムと宗教の関係を論ずる。
決して「わかりやすく」書かれた本ではないが、イスラエルの多様性については漠然と掴むことができた。 -
2008年65冊目
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日本ではあまり報じられることとの無いイスラエルの多様性。シオニズムによって建国されたイスラエルは、現在ポストシオニズムの時代を迎える。イスラエル内部の現状をとらえ、複雑なエスニック・グループで構成されているイスラエルの人々のアイデンティティにせまる。