放射能は怖いのか: 放射線生物学の基礎 (文春新書 177)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166601776

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  •  低線量・体内・長期的被曝の生物学の専門的知見が知りたいと紐解く。が、これでは期待外れ。
     最も大切な点の頬っ被りである。

     また、害意ある核兵器と非意図的な原発とを同一視できないとは、理系的発想とは程遠い。要因如何を問わず近似事象が生じた場合、その帰結が同一・近似か、全く違うか、違うとすれば何がどう違うか。これらを追試可能な証拠・データに基づいて解説するのが役割で、意図如何の議論は法的・道義的責任帰属を問題にする場合のこと。
     畑違いも甚だしい。

     ただし、細胞や遺伝子(DNAも)への放射線の影響と修復を含む多元的影響の記述は丁寧である。

  • タイトルの疑問文の答えは、「No」である。怖いのは放射能ではなく放射線(衒学的かもしれないが事実だ)。放射能=radioactivity を放射性と訳してくれれば、だいぶ誤用も減っていただろうと著者は言うが、まさにその通りなので悔やまれる(ちなみに中国語ではちゃんと「放射性」と訳している)。
    電子や陽子というレベルの飛翔物が、分子や細胞のような大きな存在にどうやって影響を与えるかという、ずっと抱いていた疑問がすっきり解けた。またその後のDNA の自己修復についての解説もあり、生物に仕込まれたこの素晴らしい仕組みには、ちょっとした感動すら覚える。本書は、東海村の臨界事故('99)の2年後に発行された本なので、3.11や福島第一の話は出てこない。しかし、確定的影響と確率的影響の話や集団線量の話など、今現在、メディアで見聞きする話題は概ねカバーされているように思える。福島関連の余計なノイズやバイアスが含まれないので、逆に冷静に読むことができたかもしれない。このご時世に読んでおいて損はない一冊であるのは間違いない。
    過去の事故・被害の事例が紹介されていて、チェルノブイリを含めても意外にも死者数は2桁台に留まっているそうだ(広島・長崎は事故ではないので除く)。もし本書の改版があれば、事故事例の紙面に大きな追加がなされるのは間違いなく悲しいことだが、いまのところ、死者数の増加は改版後も変わらなそうなのが不幸中の幸いだ。

  • 資料ID: C0027502
    配架場所: 本館2F文庫・新書書架2

  • 4166601776  237p 2001・6・20 1刷 

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著者プロフィール

さとうみつひこ 1933年山形県鶴岡市生まれ。1956年、東京大学理学部植物学科卒業。62年、同大学院博士課程修了。64年、都立大学理学部生物学教室勤務、助教授、教授を経て、97年定年退職後、非常勤講師に。専攻:植物生理生化学。 著書『”放射能”は怖いのか 放射線生物学の基礎』(2001 文藝春秋)『科学好事家列伝』(2006 リフレ出版)など。2011年没。 

「2020年 『ガリレオの求職活動 ニュートンの家計簿 科学者たちの生活と仕事』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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