- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166602698
感想・レビュー・書評
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さすがに牛熊先生のご本はわかりやすく読みやすい。10年前に書かれた本ですので時事な情報は古くなっておりますので、今日の情勢を踏まえて改訂版を出版してほしいですね。
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8年も前に書かれている本なので迷ったのですが、「日本国債は危なくない」という根拠を知りたくて読んでみました。
その理由だけで本が成立するのだろうかというのが読んだ本心でしたが、案の定、その根拠は最後の5章に数ページにわたって書かれているもので、ポイントは日本人が保有しているので格付けが下がっても大丈夫(p148)が結論のように思いました。それに至るまでは、国債の歴史や償還の方法、根拠法等が解説されていました。
以下は気になったポイントです。
・日本国債の格下げ発表のたびに売りを仕掛けていた海外の大手ヘッジファンドは、何度かの仕掛け売りに失敗し、日本の債権市場から徹底していった(p20)
・シンジケート団には、引受額に応じて一定の手数料が国から払われる、2002年5月発行分からは100円当り39銭となったが、それ以前は63銭であった(p31)
・日銀が国債の直接引き受けは財政法で禁じられているが、日銀が国債の買い切りオペによって市場から購入した国債が償還を迎えた場合に限って、これに対応する借換債を日銀が引き受けることは、インフレを招かないとの理由から例外的に認められる(p34)
・1985年度からは建設国債だけでなく、赤字国債にも借換債の発行が認められる事になった(p40)
・借換債の発行方法を例にとると、10年国債は10年後に償還されるが、6分の1だけが現金償還されて、残りの6分の5はあらたに借換債が発行される(p41)
・財投債で全部賄おうとすると債券市場に大きな影響を与えるので、2001年から7年間は、郵貯・公的年金・簡保により直接引き受けがされた(p44)
・国債の保有者別内訳(2001年末)として、民間金融機関、財政融資資金、日本銀行、年金、郵貯、簡易保険等である(p73)
・日銀は2001年に金融政策方針を変更して、金融調節目標を、「金利」から「量:日銀当座預金残高」に変更した(p129)
・格下げにも拘わらず日本国債が暴落しないのは、1)日本国内の投資家が購入、2)日本の長期金利が低位安定している、3)ペイオフ対象外(政府保証)である(p149) -
日本の国債の格下げや入札未達など不安材料が取り沙汰されていた頃に書かれた国債の入門書で、国債がいかに安全な投資商品かを説明しています。
国債について不必要な不安を抱く必要はなく、むしろ財政の規律という側面が非常に重要なことを説いており、戦後の日本経済と国債発行の歴史に関する記述は特によくまとまっていますので、国債について色々な角度から広く浅く知りたいと思っている方に最適の入門書だと思います。 -
2011/9/15読了。
古本屋で購入したものの10年前の本であるため、その間に社会と経済が変容していることを強く感じさせた。将来の見通しなど、当てにならない部分もあるが、10年前に日本政府が立てた財政再建の見通しの甘さを知るにはもってこいの一冊であるかもしれない。 -
国債の基礎知識から解き興し、実際に国債を買ってみるときの手続き、注意点が述べられる。国債の流通市場の説明と債券の先物市場の解説が丁寧になされる。こうした丁寧な記述が著者の誠実さが偲ばれるところである。
国債の歴史が、戦後から語られる。とてもその記述が分かりやすく日銀の量的金融緩和、政府のペイオフの導入まで述べてある。
そして最終章は、国債の安全性である。実務家、国債の専門家としての知識は、著者は一流ではあるだろう。
国債を買ってみようという人たちには薦められるが、マクロの経済、特に、インフレターゲット論についての誤解には、かなり失望である。
■「1998年2月 米国の長期金利と日本の長期金利が接近した。資金は金利の高いところへ流れる。日本の生保などは、日本国債の価格下落による損失をカバーするため、保有する大量の米国債を売却する恐れもあった。これを当時のルービン財務長官が危惧。日本の長期金利の上昇の懸念により、金融緩和が日本に要請された。
宮沢蔵相が「ツイストオペについて日銀においてお考え頂く時期だ」と述べた。ツイストオペとは、短期国債や手形を売り、資金調達すると同時にその資金でもって長期国債を買うオペを行うことである。
政府関係者から長期金利上昇抑制のために、財政法で禁止されている日銀による国債引受が要請されていた。日銀速水総裁は「国債引受は日銀の選択肢にないし全く考えていない。」とこれを拒否。p120
2001年
日銀 金融政策決定会合で追加緩和策。日銀当座預金残高5兆から6兆。長期国債買い入れ、月々4000億円から6000億円。
2002年金融政策決定会合2/28
政府の総合デフレ対策をフォローするために日銀当座預金残高目標を10兆から15兆へ。長期国債の買い入れを月8千億円から一兆円ベースに。
2001年8月
「資産インフレの後遺症が、今の景気低迷に繋がっていることも忘れてはいけない。もし仮に日銀がインフレターゲットを採用したとすると、日銀はこれまでのように物価上昇に側面から働きかけるというより、直接自ら働きかけて物価を上昇させなければならなくなる。物価を上昇させるのだから、期待インフレ率が高まり、長期金利が上昇する要因ともなる。もし、その政策に日銀による国債の直接引き受けが入っていれば、財政の規律が失われ、これにより日本国債が暴落、つまり長期金利が急騰する危険性すらある。」p132
「日銀包囲網の急先鋒だった塩川財務大臣は、この後、インフレ目標に対して経済を壊す恐れもあると慎重姿勢を示す。長期金利の上昇、つまり、財務省が発行の責任を持っている国債の暴落リスクを感じ取ったためであるだろうか?」p132とあるが、長期金利が、前半では、日銀の国債引受により下がることにほぼ異論を示していないのに対して、後半のp132では、日銀の国債引受は、財政上の規律の溶解に繋がり長期金利は上昇するとしている。実質金利=名目金利−期待インフレ率だから、長期金利を流通利回り、すなわち実質金利として考えた場合でも、インフレ時には長期金利は上がらないのではないか?日銀の国債引受を鮮明にすることによって、国債が危ないのではなく国家財政を日銀が保証するから、財政を優先した財政措置ではなく、国民経済の向上、名目成長率、裏を返せば消費者物価指数の押し上げについて年次目標と同時に目標とする指数を鮮明にすることによって、インフレ期待を国民に持ってもらう政策が必要なのではないのか?インフレであれば、財政収入は増えることはあっても、減ることは無い。もし5パーセントのインフレであれば、消費税は、単純計算で10パーセントとなり、財政収入は増大するだろう。一般会計の国債依存率も減るということになる。よって、日銀の量的緩和による国債引受も減らしていく手立てが出来ることによって、国債の信頼感も生まれることになるだろう。