脱ニッポン富国論 「人材フライト」が日本を救う (文春新書 951)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609512

作品紹介・あらすじ

彼らは、なぜ日本を見限ったのか?――現在、日本人の海外移住者は118万人に上る。中でも急増中なのがミャンマー、マレーシア、シンガポールといった新興アジア。富裕層はもちろん、中小企業経営者、金融専門家、IT起業家、学生など多くの日本人が移住している。著者が、かつて描いた「資産フライト」は第二ステージ「人材フライト」を迎えているのである。例えば、年収1億円の人がシンガポールに移ると日本との税金の差額は、2540万円とか。あるいは日本人の不動産投資が盛んなマレーシアには住民税・相続税がない。こういった節税、投資、起業に有利なことは知られているが、グローバル教育のレベルが高い現地校へ母子留学とか、富裕層の暮らしやすい住環境をはじめとする生活のクォリティ等、「新移民」たちの目的は様々。これらのカネ・モノ・ヒトの流出の実態を描きながら、彼らの稼いだ在外マネーを日本に還流する方法を提起する。

感想・レビュー・書評

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  • 資産フライト(お金の海外流出)の第二弾としての人材フライト。
    海外流出とは言え、基本的にはアジア各国と日本の生活水準、インフラ、教育などの比較が主体であるため、海外に行くか否かにかかわらず、アジアの現状を知るのには役だった。

  • 【なぜ、彼らは日本を見限ったのか】富裕層、IT起業家、中小企業経営者、金融専門家、学生……。多くの日本人が海外へ移住する「新移民時代」。その実態と背景を描く。

  • 人口減、移民を受け入れないなら、海外進出・移住を奨励し、富を還流してもらうしかない。

    まずは、できる人の足をひっぱるなってことかな。

  • ■書名

    書名:脱ニッポン富国論 「人材フライト」が日本を救う
    著者:山田 順

    ■概要

    彼らは、なぜ日本を見限ったのか?――現在、日本人の海外移住者は
    118万人に上る。中でも急増中なのがミャンマー、マレーシア、シ
    ンガポールといった新興アジア。富裕層はもちろん、中小企業経営
    者、金融専門家、IT起業家、学生など多くの日本人が移住している。
    著者が、かつて描いた「資産フライト」は第二ステージ「人材フラ
    イト」を迎えているのである。例えば、年収1億円の人がシンガポ
    ールに移ると日本との税金の差額は、2540万円とか。あるいは日本
    人の不動産投資が盛んなマレーシアには住民税・相続税がない。こ
    節税、投資、起業に有利なことは知られているが、グローバル教育
    のレベルが高い現地校へ母子留学とか、富裕層の暮らしやすい住環
    境をはじめとする生活のクォリティ等、「新移民」たちの目的は様
    々。これらのカネ・モノ・ヒトの流出の実態を描きながら、彼らの
    稼いだ在外マネーを日本に還流する方法を提起する。
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    ■気になった点

    なし

  • 移動時間に読むものをなにかと本屋を彷徨い、日本の未来について論じている本を探していたところを発見し手に取る。


    富裕層が日本から海外へと住居の拠点を移し、優秀な人材が海外でベンチャー企業を立ち上げる近年の動向などを踏まえて、現在の日本が他国と比較してどのような問題を抱えているかについて焦点をあてて説明している。

    他の海外諸国から指摘があるように資本主義国として日本は評価されておらず、社会主義国のようなできるだけ多くの人が平等に満足度を得られるような所得税のシステムなどを嫌い、シンガポールなどの移民を受け入れる安い所得税、海外の住民への平等な配慮に富裕層の世帯が魅力的に感じているとのこと。

    それだけではなく、日本では受けられない高い水準でのグローバル教育システムをとりいれる高等教育機関や、日本以上の水準を誇る富裕層に対するサービスも要因であり、夫は妻や子供を海外に住ませ平日は日本で働き、週末に妻子のもとへ帰るといった世帯も増えている。

    また背景には日本が抱える莫大な債務へのリスクを筆者は挙げている。

    またシンガポールは富裕層だけでなく、優秀な学生の起業支援も日本より盛んで、頻繁に日本のベンチャーキャピタルにも足を運んでは自国でのビジネス支援を行っている。


    彼らは決して日本を見捨てたわけではなく、自分達の資産を守り、自分達にとって最適な環境での選択をしているにすぎない。資産運用をしない日本人の割合は海外と比較してもかなり多く、こういったリスクを管理することは合理的な選択であると述べる。

    企業のオフショア開発もグローバルな環境では避けられない。コストがかからずリスクを分散することは国家の存続にとって必要であるという。


    筆者は今後の国家は人材や資源が地理的に分散したネットワークのような国家を目指している。グローバルな社会では情報技術を駆使することで変化に応じた資源配分、企業の戦略策定がコストを抑えたりリスクを分散するといった今後の展開にも重要であると述べる。

    またそういったオフショア開発を積極的に行い、技術を自国で生産するのではなく、海外への投資を中心としたビジネスモデルの構造転換が現在でも多く行われているし、今後も必要であると述べている。

    また日本の抱える問題として少子高齢化問題を移民の受け入れを積極的に行うことで解決しようとしている。
    日本は移民の受け入れが非常に少なく、おもてなしの精神があるとはいえ非常に海外の人にとって住みにくいとのこと。

    このように、日本の未来について様々な見方からあるべき姿を提唱している。

    感想としては、全体的に取り上げる話題は面白いものが多いが、自論を展開するにあたってはその根拠の列挙が弱い印象。

    個人的には、すでに投資立国としての日本のプレゼンスは高いように思われる。もちろん海外と比べて利益が多いかどうかは別であるが、本当に海外の途上国などに意義のあるようなインフラ産業の発展には日本人の特性は相性がいいように思う。(宗教的な観点にも繊細に対応でき、インフラのようなリスクを管理する必要があるから)

    一方で投資やオフショアによって日本の産業は空洞化が進んでいて、国内で働く人の雇用がなくなるといった問題には国内の人々でしかできないようなアウトプットの質が高いものを少なく作っていくしかないように思う。
    文化で圧倒的に優位にたてば、決して真似することができないから。

    個人的にはもっと文化と産業の間にあるような人間の生産性について議論したりする研究機関を増やした方がいいように思う。アートや人文学ではそのような議論はあるが産業や工学の分野であるのかな?


    それと、移民の受け入れは少子高齢化に対しては根本的な解決方法ではないと考える。
    問題なのは多様化したキャリアとのマッチング機会の創出がカギだと思っている。


    やはり最大の問題は教育の改革に帰着するなとおもいます。
    グローバルな学校を作ることができないというけれど、本当に大切なのはそういう環境をある一定の期間だけ体験することと勉学におけるアウトプットの質を時代に求められる能力に合わせているかどうかの2点でしかないように思う。

  • 【メモ】
    1.国内はサービス産業中心の経済。
    ・サービスは地産地消。その場で作られその場ですぐ消費される。
    ・例)小売、外食、流通、宿泊、金融、コンサル、通信
    ・貿易収支かま赤字でも経常収支が黒字なら良し。

    2.地球上に広がった「人間のネットワークこそが国家」なのである。
    〜海外人口比較〜単位:万人
    ・華僑 6000
    ・英国 1000
    ・韓国 700(中国250、北米250)
    ・日本 118(中国14、北米40)

    3.海外のコミュニティに日本政府や行政のサポートはほとんど無い。
    ・中国や韓国と違って、海外の邦人を大事にしない国。
    ・一旦外に出た日本人は日本人でないというメンタリティ。
    ・ウチとソトを分けてしまう「村社会メンタリティ」は捨てるべき時に来ている。

  • 人口の減少する日本を富裕層の人たちは、シンガポールなどの、より税制や生活環境が整った、成長見込みのある国へと移る。日本が、貿易立国でなく、投資立国に近づいている現実や、日本国内で資金を運用するよりも、海外で利益をあげて、日本に還流させるスキームが必要だとのこと。

    愛国心のない人は、海外に出ていってもらいたいと言う声もあるみたいです。彼らがいなくなることでおきる海外への人材流出などの不都合への代替案を示してもらいたいし、無責任とも感じました。

    ただ、お金がある人から見た見解みたいなところもあるので、相続税の彼らの考え方には、不満もあるんですがね。世代間の格差には納得できないかな。

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著者プロフィール

1952年、神奈川県横浜市に生まれる。立教大学文学部を卒業後、光文社に入社。「光文社ペーパーバックス」を創刊し、編集長を務めた後、2010年からフリーランスになり、国際政治・経済・ビジネスの分野で取材・執筆活動を展開中。
著書には『出版大崩壊』『資産フライト』(以上、文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『「中国の夢」は100年たっても実現しない』(PHP研究所)、『円安亡国』(文春新書)、『地方創生の罠』(イースト新書)、『永久属国論』(さくら舎)、翻訳書に『ロシアン・ゴッドファーザー』(リム出版)などがある。

「2018年 『東京「近未来」年表』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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