遊動論 柳田国男と山人 (文春新書)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609536

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  • (01)
    柳田国男が用いた「実験」あるいは「実験の史学」をヒントに,1960年代以降,た評価が左右に揺らいでいる柳田の立場を擁護し,柳田テキストの新たな読みに挑んでいる.
    柳田が一貫して「山人」の実在を手放さなかったこと,それが「一国民俗学」や「固有信仰」となって,当時の国際情況が国内事情(*02)に合わせ批評的に持ち出された概念であることが本書で主張されている.
    民俗学や一国民俗学については誤解されることも多い柳田であるが,農政学や経済「経世済民」との関係により,柳田がその学をどのあたりに位置づけしようとしていたのかが分かる.著者は,柳田が「先祖の話」で説いた魂のゆくえの先を見極め,海と山の同位性や,平田国学や国家神道への批判性にも言及している.
    タイトルにある「遊動」とは何か.柳田自身が使ったわけではないキーワードであるが,現代哲学のノマドや網野史学の成果も踏まえ,柳田のテキストにあった遊動の解明を試みている.しかし,著者が提唱する遊動や交換様式にもいくつかの内実や分類があって,この試論は批判的に継承されていく必要があるだろう.

    (02)
    家の延長に国家があるわけでないこと,オヤコ関係が遊動の双系制にあっては血縁関係に結ばれた親子に限らないことなども本書に指摘されている.おそらくそれは未来の社会に向けた著者の意見でもあるだろう.

著者プロフィール

1941年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学大学院英文学修士課程修了。法政大学教授、近畿大学教授、コロンビア大学客員教授を歴任。1991年から2002年まで季刊誌『批評空間』を編集。著書に『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社 2021)、『世界史の構造』(岩波現代文庫 2015)、『トランスクリティーク』(岩波現代文庫 2010)他多数。

「2022年 『談 no.123』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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