嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609864

作品紹介・あらすじ

「小保方さんなんてかわいいほうですよ」世紀の大発見のはずが一転、論文不正やねつ造の報道にとってかわられ、世間を驚かせたSTAP細胞をめぐる騒動。しかし、バイオの研究者たちの実感はというと、「もっと真っ黒な人たちがいる」というものだった。iPS細胞の発見にはじまり、再生医療や難病の治療、食糧危機や絶滅した生物の復活まで様々な応用可能性が期待され、成長産業の柱として多くの予算を投入されるバイオ。しかし、生命現象の未知の可能性と崇高な目的が謳われるその裏で、バイオ研究を取り巻く環境は過酷さを増している。若手研究者たちの奴隷のような労働実態、未熟で自己流の研究者が多数生み出される大学院の実態、絶対の存在である大学教授、続発する研究不正……。STAP細胞騒動の背景には何があったのか。一連の騒動によってあぶりだされた知られざるバイオ研究の虚構の実態を、かつて生命研究の一端に身を置いた科学ジャーナリスト賞受賞の病理医が、あらゆる角度から徹底検証。バイオの未来を取り戻すための提言を多数盛り込んだ決定版の1冊です。

感想・レビュー・書評

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  • STAP細胞のニュースが話題となったが、バイオ研究分野がこんなにもブラック企業化しているとは知らなかった。研究にはお金がかかるという点が、科学に携わる人を歪めてしまうのだろうか。201409

  • 入試で物理を捨てた結果、選択肢がせばまって、さしたる知識も意欲もないまま生化学の大学院に進み、結果としてピペドとなるしかなくなる。耳の痛い指摘だ。学生の扱い方には放牧型とブロイラー型があって、最も深刻な放牧ブロイラーというのが衝撃的。さらに背景にある国家戦略、事業仕分け、高名な学者の弊害等の問題は読ませる。単に煽り貶めるだけの告発本でなく、本来の研究の楽しさに戻ろうと呼びかける著者の想いがいい。

    [more]<blockquote>P157 研究不正=ミスコンダクト。捏造/改竄/登用の3つが主なものとされている。英語の頭文字を取ってFFPと呼ばれる。

    P211 チャンピオンデータ=奇跡の一枚 たまたま出たチャンピオンデータだけを貼り合わせるとあたかもその仮説が証明されたかに見えてしまう。
    大胆な仮説・大発見と研究不正の間の距離は近い。

    P248 殿様生物学2.0 今の時代、普通の人たちは昔の殿様以上にいろいろなことができる。バイオを取り戻せ。奴隷にならず自分でやりたい研究をやろう。</blockquote>

  • これもありきたりの、STAP事件便乗本。

  • ピペドの闇の深さがわかった

  • 現在理系の中でもドル箱産業になりつつある生命科学への警鐘を鳴らす一冊。

    実際に研究職に携わっていただけに非常に説得力があった。

  • 捏造シリーズの最後一冊。
    捏造だけでなく、社会全体のポスドク問題を捉えていて私自身は非常に納得できる一冊であった。
    女性研究者が厳しいというのも納得できた。
    研究者の週あたりの勤務時間は80から100時間も15パーセントはいる、うんうんと頷いてしまう。
    そして、休みの間も研究について考えていないといけない。休みはあってないようなものだ。
    それでも、やらないという選択肢は見つからず、休みなのに実験のために出勤する本日。

  •  
    ── 榎木 英介《嘘と絶望の生命科学 20140718 文春新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4166609866
     
    ── 榎木 英介《医者ムラの真実 20131012 ディスカヴァー・トゥエンティワン》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4799313991
     
    …… 繰り返し言う ~ 研究不正と「STAP現象」のありなしは別次元の
    問題「刺激で脱分化」は知られた現象(略)たとえ仮説を考えた時期が
    先だとしても、証明できていないのならなんの説得力もない(20151213)。
    http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1450025755/
     
     榎木 英介 病理医 1976‥‥ 横浜 /http://researchmap.jp/enodon/
     
    …… 折り紙を用いると、0度から90度の任意の角の3等分は可能で
    あることが知られている。
    ── 高木 隆司《かたちを科学する 1991‥‥ 神奈川県数学講座》
    http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/angle.htm
     
    ── 矢野 健太郎/一松 信《角の三等分 198404‥ 200607‥ ちくま学芸文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4480090037
     
    …… コンパスと定規だけを使って、任意に与えられた角を三等分せよ。
    古代ギリシア以来有名なこの作図問題に、多くのアマチュア数学者が魅
    了され、あたら人生を棒に振った。なんと、数学的にきちんと解決され
    たのは、ギリシアから二千数百年も後のことで、しかも答えは「不可能」
    だった。その「不可能」を証明するためには、幾何学にとどまらない、
    一歩高い次元の数学が必要だったのだ。
     
     角の三等分は、実用範囲の近似値なら定規とコンパスで作図できる。
     だからといって、幾何学的に作図可能を証明できるわけではない。
    (寺田先生講義録 1955‥‥ 虚々日々)
     
    (20151214)
     

  • 筆者はバイオ系博士課程から、医学部に転向した現在医者である。バイオ系の大学院生、ポスドクを取り巻く就職状況や労働状況を分析した。年収や就職先、就職率など統計的なデータを用いており、客観的な分析を行っているが、ところどころに筆者の呪詛が。。。
     完全に距離をおいた分析の書として熟読するより、筆者の呪詛が含め楽しむつもりで読む本。

  • ブラック企業化する大学の研究室。程度は違えど、どこの研究室でも起こっているだろうし、起こって当たり前の環境だ。教授たちや学生たち一人一人が気を付けて、どうにかなることではないので、制度から変えなきゃな。

    研究界、特に生物学界、にこれから入っていこうという人は現状を知っておくためにも読んでおくべき本である。

  • 追試をやっても科学者はあまり得をしないから、追試されないままの論文が沢山ある、とか。

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著者プロフィール

病理専門医。細胞診専門医。医学博士。
1971年生まれ。95年東京大学理学部生物学科動物学専攻卒。同大学院博士課程中退後、神戸大学医学部医学科に学士編入学。04年卒。医師免許取得。06年博士(医学)。09年神戸大学医学部附属病院特定助教。兵庫県赤穂市民病院を経て近畿大学医学部で病理解剖と研究倫理を担当。2020年フリーランス病理医として独立。
著書に『博士漂流時代』(DISCOVERサイエンス、科学ジャーナリスト賞2011受賞)『嘘と絶望の生命科学』(文春新書)ほか。

「2021年 『病理医が明かす 死因のホント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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