天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎 (文春新書 1066)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610662

作品紹介・あらすじ

歌舞伎界屈指のサラブレッド、名門の天才坊やとして早くから注目された勘三郎と、渋い脇役の家に重い期待を背負って生まれた三津五郎。相次いで世を去った二人の名役者は、奇しくも同学年に生まれた──。勘三郎と三津五郎が並んで踊っていると「フジテレビとNHKが踊っている」と三津五郎の叔母に冷やかされたという。明るくてひょうきんな持ち味の勘三郎がフジテレビ、端正で基本に忠実な美しさを湛えた三津五郎さんがNHK、というわけだ。生い立ちも、性格も、藝も、すべてが対照的だった二人は、しかし、他人には窺い知れない絆で固く結ばれていた。「名人はどんなに曲がった形になっても、お尻の穴から頭の上へ、一本の棒が通ってますよ。寿さん(三津五郎)がそうで、僕もそれを心がけてる」(勘三郎)「幼い時から切磋琢磨してお互いに競ってきました。もう二度と一緒にやれないかと思うと、人生の半分をもぎ取られたような、何とも埋めようのない喪失感に襲われています」(勘三郎が亡くなったときの三津五郎のメールより)天真爛漫な天才が人生ではじめて抱えた鬱屈、謙虚な名人が覗かせた譲れない意地。宿命の星の下に生まれた二人は、藝の世界で、短くも激しく火花を散らしてこの世を去った。生前、親交の深かった劇評家が明かす不世出の役者たちの知られざる物語。

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  • 名門の天才坊やとして注目された歌舞伎界のサラブレッド、勘三郎。渋い脇役の家に重い期待を背負って生まれた三津五郎。二人の名役者は、奇しくも同学年に生まれた。生前親交の深かった劇評家が描き出す、宿命の星の下に生まれた二人の物語。
    (2016年)

  • 私にとって歌舞伎の入口となったお二人。もうこの世にいないということが、実はいまだに信じられない。

  • 初読。図書館。勘三郎と三津五郎が亡くなった後に書き始められたためか、「もう二人の芸を見ることはできないのだ」という無念さや悲嘆が通奏低音のように全編に流れていて、その思い入れに引きずられるように涙する。人はいつかは死ぬものだが、二人にはまだまだこれからの未来が楽しみであったし、また伝えるべき芸が伝えきれなかったという心残りもあり、はやり「早すぎた」としか言いようがない。ここ数年、襲名、初お目見え、初舞台と華やかな話題には事欠かない歌舞伎界。大きな星を失いながらも連綿と続いていく歌舞伎の底力を信じている。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。演劇評論家。東京藝術大学教授。紀伊國屋演劇賞選考委員。著書に『4秒の革命』『野田秀樹論』『菊五郎の色気』『菊之助の礼儀』、蜷川幸雄との共著に『演出術』などがある。

「2015年 『野田秀樹の演劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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