大学入試問題で読み解く 「超」世界史・日本史 (文春新書 1111)
- 文藝春秋 (2016年12月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166611119
作品紹介・あらすじ
現代を知るための記述式入試問題の良問23ナチス政権誕生の背景 慶応大1920年代の米国がつくった国際秩序 京都大清朝近代化の失敗 早稲田大オランダ400年史から見える近代 東京大大日本帝国憲法と日本国憲法 一橋大一向宗とキリスト教 東京大 ほか【補講】キリスト教はなぜ世界を支配できたのか
感想・レビュー・書評
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h10-図書館2018.2.24 期限3/10 読了3/5 返却3/6
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とても面白いし、わかりやすい。他の本も読んでみます。
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私が歴史に本格的に興味を持つようになったのは、予備校時代に河合塾の石川晶康先生の講義を受けたからである。「歴史に流れなんてない、っつうの」が口グセ。実はそれは現代のパラダイムで過去を安易に語るな、ということを言っていたのだと思う。これ出るぞ、は本当に出題されていたが、要するに学会誌に丹念に目を通して出題者の関心を捕捉していたんだろう。「聖と賤はコインの裏表だからな」なんてことを板書して力説していたし(これはのちに網野善彦を読み漁ることにつながった)、「7-8世紀の対東アジア外交は押さえとけ」の教えは今、娘に引き継いでいる。
さて本書は、そもそも小学校から一貫校で大学受験自体未経験という著者が大学入試の記述問題に解答していくという内容。これを読むと、本格的に学問をする上でこの程度の歴史の知識はある意味基礎インフラであって、暗記も何も自然に憶えてしまって当然のレベル、ということがよくわかる。
個人的には隋から共産革命に至るまでの中国史を「華北と中原のせめぎあい」と捉える視点が面白かった。そして多くの入試問題が、それに気づかせよう、という裏テーマを持っていることも再認識できた(このあたり、東大と京大の学派的違いへの言及などもあり興味深い)。
「改めて感心するのは、これらの問題を解くために必要な知識は、すべてとは言い切れないけれど、およそだいたいは高校の日本史と世界史の教科書に載っているという事実ですね」(「おわりに」より)。歴史に限らないがAI時代だからこそ「知識」の大切さをこどもに伝えないとなあ、という感想。 -
こうして読んでいくと、つまらなかった受験の歴史もすごい面白く考えられる。むしろ、ここまで高校生に考えろというのが無理か。
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・十字軍は、政治的な影響、経済的な影響、文化的な影響をもたらした。
・教皇と諸侯の力をそぎ、王と商人の力が伸長した。中世が崩壊し、絶対王政が幕を開ける。
・ヨーロッパはユーラシアから見れば「辺境」であり、進んだ東方の文明やイスラム帝国やモンゴル帝国からは放っておかれた。そのおかげで、自分のペースで近代化を進めることができた。後の日本は西洋列強からの植民地化の危機感で慌てて近代化が必要だった。
・宗教改革は諸侯に都合がよく、皇帝権と結びついていたカトリックから干渉を受けずに領域を統治できるようになった。
・ルターが聖書をドイツ語に翻訳し印刷技術で頒布したことにより、教会抜きに神と人間が直接対話できるようになった。教会の中抜き。
・普段話している言語で聖書を読むことにより、共有言語をもとに「民族」「国民」意識を高め、後の国民国家の創生に寄与。
・夷狄である清の冊封体制化に入った朝鮮の屈辱感が、「小中華思想」を生んだ。
・「中華」文明の中心であった明が夷狄である清に滅ぼされた。「中華」文明なき後、朝鮮がもっとも儒教精神を保ち、朝鮮こそが「中華」の後継者であり守護者である。清に従属しながらも、腹の中では清を見下すという屈折した感情を抱える。
・北から南に攻め入って中国全土を平定するのか中国史の必勝パターン。江南が中国を統一したことはない。南宋と元。共産党と国民党。
・農民を味方にしなければ最終的な勝者にはなれない。農村から都市を包囲する共産党と、支持基盤が硬軟の浙江財閥だった国民党。言い換えれば、農民の前に敵を設定してそれを乗り越えて、農民が実際は搾取されていても自分たちが主役だと錯覚すれば倒れない。 -
大学入試の試験問題を答えながら、歴史を物語のように読み解くというもの。知らないことだらけだったので、とても面白い本だった。
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普段この類の本は読まないのだが、片山杜秀先生の名をみて購入。大学入試の歴史の問題(最難関大学の記述式)を入り口に、社会人や大人が歴史を学び直すきっかけになれば、という目的で構成された内容。
問題に対する片山先生の詳細な解説があるので、分かりやすく世界史・日本史の概略を学べる。(ほとんどの難問に片山先生がスラスラ答えているのが凄い。研究者だから当たり前といっちゃ当たり前だけども。ね。。)
しかし、どれもヘビー級な問題ばかりで、読みながら解いてみたが、得意の近代史分野以外ろくに答えられず知識の偏りを痛感しました。特に中国史に関してはさっぱり。
歴史以外の発見は、やっぱり大学によって入試問題の特徴というか特色があるのだな、と。東大は教科書の内容をちゃんと覚えてる?ときっちりと王道な作り。慶応は時事に絡めて大きな歴史の流れを問うものが出る。京大は東洋史学の学統があるのか、中国史の細かな知識を必要とする問題が出る。一橋は日本近代史を必ず出すそうだが、出題意図にイデオロギー色が強い。特にここの大学はそもそも高校生がこんなこと答えられるの?と首を傾げる問いもあり面倒くさい。
著者が最後に記しているが、歴史をアクチュアルに学ぶために、大学入試問題と受験参考書を大人の教養書として、あるいは頭の体操として使うのもありだろう。自分の苦手な歴史分野や偏りも自覚できるし。
学生の頃は分からなかったが、社会で働くようになり初めて歴史を理解し役立てようと思い始めた人にとって、歴史の入試問題に挑んでみるのは大変いい方法。と、いうわけで、まずは高校で使った山川の歴史教科書を読み返してみるかな。 -
2017/1/7
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【大学入試の良問は、大人のためにある!】東大、京大、一橋、早慶の歴史記述問題に片山教授が挑戦。イスラム世界を遡り、帝国憲法を読み解き、中国史の肝を掴む良問を厳選。