ウクライナ戦争の200日 (文春新書 1378)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613786

作品紹介・あらすじ

今回の戦争によって、米国一極のもとに世界が安定しているのではなく、複数の大国がそれぞれ異なる世界観を掲げて「競争的に共存する」世界に変化した――。

ロシアのウクライナ侵攻は、ポスト冷戦時代の終焉を告げる歴史的な転換点となった。
「理解できない世界秩序への反逆」の続発を予感させる今後の世紀を、複雑な世界を私たちはどう生きるのか。
戦争が日常化する今、思考停止に陥らないために。

気鋭のロシア軍事・安全保障専門家が、評論家、作家、映画監督らと「ウクライナ戦争200日」を多角的に見つめ直す待望の対談集。

感想・レビュー・書評

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  •  著者は、ロシアのウクライナに対する蛮行が時計の針を百年戻しており、ロシアの蛮行を許すべきでないという個人的なスタンスをとりつつ、ロシアや中国といった専制国の価値観を自由主義陣営の価値観に当てはめて、ロシアを一方的に断罪して追い詰めることの危険性を論じている。
     国際的な政治力学は善悪だけで決定されないし、感情を差し引いたリアリティで考えなければならないものだと改めて気付かされた。
     本著は感情を超えた政治のリアリティを論じており、著者と有識者の対談形式により難解なテーマが理解しやすく記されている。

  • 文藝春秋社の関連雑誌で対談した5人とこの本のために語り下ろしたもの1件を収録。対談時期は4月から9月。

    対談相手は
    ・東浩紀:1971生、批評家・作家 株式会社ゲンロン取締役
    ・砂川文次:1990生、小説家。元陸上自衛隊で対戦車ヘリコプターの操縦士。
    ・高橋杉生:1972生、防衛省防衛研究所防衛政策研究室長。
    ・片淵須直:1960生、アニメ監督。「この世界の片隅に」
    ・ヤマザキマリ:1967生、漫画家
    ・マライ・メントライン:ドイツ人 翻訳者、通訳、エッセイスト。2008より日本在住
    ・安田峰俊:1982生、ルポライター 天安門事件など中国を多くルポ

    「ロシアは絶対悪なのか」(文藝春秋2022.7月号 4.11対談)×東浩紀氏と
    東:ウクライナの仕掛けている戦略は必ずしも敵国ロシアには向かっていない。・・「ハイブリッド戦争」対「非ハイブリッド戦争」という状況になっているようにみえるのですが・・
    小泉:その通りですね。ハイブリッド戦争の理論はあくまでも敵国が民主国家である場合を想定していす。・・ロシアは権威主義体制でメディアもネットもプーチンの支配下にある。プーチンが(ロシアで)支持されている限りはロシアは戦争を継続するはずです。
    小泉:今回つくづく感じるのは人間とはそもそも非合理な存在だ、ということ。
    小泉:今回の戦争によって、米国一国のもとに世界が安定しているのではなく、複数の大国がそれぞれ異なる世界観を掲げて「競争的に共存する」世界に変化したのだと思います。・・ロシアは孤立するようにはなるでしょうが、瓦解していくとも思えません。

    ヤマザキマリ:プーチンは、思惑通りの自分を象ろうと誇張し過ぎた為に実態が消えてしまった人という印象があります。イソップ童話の身体を膨らませて大きく見せようとして破裂してしまうカエルを思い出します。
    ヤマザキマリ:イタリアの私の家族は、イタリアは他民族や他宗教との争いの歴史の中で生きてきた歴史があるから、またやってる、でもいつかは終わる、というような客観的かつ長いスパンで考えている。

    「シベリアの掟」ニコライ・リリン著 小泉氏が紹介
    イタリアでベストセラーになった本。かつてシベリアに犯罪流刑地があったが、彼らはスターリン時代にモルドバに強制移住させられた(今の沿ドニエストル地域らしい)。著者の自伝的小説。モルドバでは犯罪共同体の掟を守りながら育つが嫌気がさしイタリアに移住した。
     ・・映画化もされたようだ「ゴッド・オブ・バイオレンス」2013イタリア ジョン・マルコヴィッチ出演

    2022.9.20第1刷 購入

  • 大変読み応えがあった。対談ごとに、違ったアプローチから今回のウクライナ戦争の背景を知る事ができる。深刻な内容ながら、時にユーモラスになる対談になるのが、小泉氏の真骨頂。

  • 講演会でサインしていただいた自慢✌
    全裸先生は憧れでもあり呪いでもあります。なぜ私はこうなれなかったんだろうと思いながら、それでも何かできるはずだと元気づけられもしています。

  • 内容は特に示唆に富む、とは思わなかったが、現在進行形の事柄についての対談をまとめられたのは意義深いと思う
    数年後、再読したい

  • ロシアの軍事・安全保障研究者の小泉氏と7名の著名人との対談
    対談した方は以下の通りです。(敬称略)

    東浩紀(評論家・作家)
    砂川文次(小説家)
    高橋杉雄(防衛研究所防衛政策研究室長)
    片渕須直(アニメ映画監督)
    ヤマザキマリ(漫画家・文筆家)
    マライ・メントライン(エッセイスト)
    安田峰俊(ルポライター)

    マニアックな軍事の作戦・戦術の話から国家間のパワーバランス・外交の話、国民生活と戦争という日常と非日常の交わり方まで、対談した方々の特性に応じた様々な切り口でウクライナ戦争の初戦を切り取って対談してました。

    今、読んでももちろん面白いですが、10年後、20年後にウクライナ戦争を振り返った時、開戦当初はどんな熱を帯びていたのかを知ることができる非常に参考になる面白い書籍となりそうです。

  • 著者があとがきでも書いている通り、啓蒙的ではない=初心者向けの解説書的な立ち位置の内容ではない。この戦争を様々な角度から語られており、自分の中でこの戦争を咀嚼するのには非常に有益。一番面白かったのは最後のドイツ、中国の専門家を交えての対談。500日、1000日とか続編希望。もちろん一刻も早く戦争が集結するのが一番ではあるが。

  • 対談モノでテンポよく読めました
    ニュースでは得られない情報もあり、複眼的に理解できたと思います
    シベリアの掟は機会があれば読んでみたいですね

  • 混迷が続くロシアとウクライナの戦争。本書はロシア軍事研究の第一人者である小泉悠と各分野の識者が、様々な角度から現在までの情勢を見つめた対談集である。

    戦争や軍事関係の識者以外にも東浩紀やヤマザキマリ等の対談も収録。しかしこうして他分野の視点を用いることで、今回の戦争を俯瞰して見ることができ、より全体像を把握しやすくなっていると思った。

    すでに古くなった情報もあるが、日本に住む私たちがこの200日間でどのように戦況をキャッチし、その時々でどのように感じていたのか。今年2月に始まったウクライナ戦争の現在までの流れをつかむという意味で価値のある本だと言える。小泉悠のバランスの取れた視点と、たまに出る軍事オタクとしての暴走が本書の肝。

    以下、特に読み応えのあった対談について。

    小説家であり元自衛隊員である砂川文次との対談では、戦術論や兵器についてのマニアックな応酬が面白かった。というか良くも悪くもただの軍事オタクの会話になってる箇所も。だがそうした観点からの情報も有効だろう。非対称戦争とその戦法として有効な戦術、ゲリラ戦術を上手く活用しているウクライナ、非合理な戦争等々…。元自衛隊員の話って意外と聞く機会がないので新鮮だった。

    防衛省に勤め、軍事戦略や日米関係の識者である高橋杉雄との対談では、100日目時点の振り返りを行う。開戦当初のロシア側の作戦のバラツキ、連携の不具合、指揮系統の変化が実際の戦況に及ぼしている影響等々。
    やはりロシア側には開戦初期は上手く機能していない部分があった模様。例えばミサイル兵器「ジャベリン」は、本来であれば80時間の講習が必要にも関わらず、いきなり実践投入されて兵士が混乱したとか。さらにそれら武器取り扱い説明の為のカスタマーセンターがあるとのこと。こういう焦点があたりづらい話って興味深い。

    真面目な話のなか、小泉氏の人柄が出ている箇所もちらほら。例えば片渕須直との対談では、映画『トップガン』の話になると急にテンションが上がるのは笑った。なんでも50回は見たのだとか。あと小泉氏がちょいちょいドストエフスキーの小説をラノベ扱いしてて可笑しかった。

    戦争や軍事の第一人者同志の対談だけではないからこそ、多くの人が読みやすい書籍になっていると思う。開戦から時間が経ち、心が離れ始めている人にこそ手に取ってもらいたい。

  • この知性を松戸が生んだ

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著者プロフィール

小泉 悠(こいずみ・ゆう):1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『「帝国」ロシアの地政学──「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)、『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021年)、『ロシア点描』(PHP研究所、2022年)、『ウクライナ戦争の200日』(文春新書、2022年)等。

「2022年 『ウクライナ戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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