シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由 (文春新書 1396)
- 文藝春秋 (2023年1月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166613960
作品紹介・あらすじ
「日本共産党が党首公選を実施すれば日本の政治がマシになる」
日本の主要政党で党首公選が行われていないのは、共産党と公明党のみである。
約半世紀にわたり、共産党員として活動し、
政策委員会で安保外交部長を務めたこともある著者が、
なぜ、党員による投票が可能な党首公選制を訴え、自ら立候補を宣言するのか?
そして、持論である安保・防衛政策についての転換を公約に掲げる理由とは。
【目次】
第一章 なぜ党員投票による党首選挙を求めるのか
1 政策その他で重要な違いがある
2 党首公選が共産党にとって必要な理由
3 党首公選が党の自己改革を促していく
第二章 私には立候補する資格がある
1 共産党内の異論の存在を私は体現している
2 実践を通じて共産党と私の溝は埋まった⁉
3 安保・自衛隊問題で論争のないことが混迷を生んでいる
第三章 野党共闘を魅力化する安保・防衛政策へ
1 「核抑止抜きの専守防衛」を共産党の基本政策とする
2 野党共闘を魅力あるものとするために
3 台湾有事に日本はどう臨むべきか
4 政党と個人・市民団体のアプローチは異なる
第四章 国民との接点を広げるための三つの問題
1 「人間の顔をした資本主義」を提唱する
2 「左側の自民党」をめざすべきだ
3 共産主義とは何かから日本共産党の名前を考える
終章 共産党の安保・自衛隊・憲法論を深掘りする
1 私の提案は綱領と大会決議の枠内である
2 私の提案は綱領の帝国主義規定の延長線上にある
3 「自衛隊=対米従属軍隊」論をめぐって
4 共産主義の理想は非軍事だが政策は自衛である
5 自衛隊をめぐる憲法問題をどう乗り越えるか
感想・レビュー・書評
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共産党内のお家騒動における真相。日本の政治が抱える問題について、共産党の課題を中心に。自民党への信頼は浮き沈みしながら着実に衰退しているにも関わらず、有力な野党は不在。思想が違えば共産党に何を期待する訳でもないが、野党共闘も消化不良。
先ずは、国防の考え方。著者は述べる。志位は、安保条約の下では自衛隊反対が基本的なスタンス。自衛隊は違憲だとしない著者に対し、自己批判書を党の雑誌に書かせた。今までの歴史で自己批判文書を掲載したのは、不破哲三、上田耕一郎に続き著者は3人目となった。しかし、後の野党連合において志位は自衛隊活用論へ。
著者は、非核三原則に「使わせない」を加えた四原則が必要だと述べる。専守防衛を基本とし、核の傘にも頼らない方針。じゃあどうやって核の脅威に立ち向かうのか。書かれているのは、国民が国土を守る気概、覚悟を持っていることが核兵器を含む相手の攻撃を躊躇させるということ、だ。なんと勇ましいお花畑。いや、お花畑より「気概や覚悟」など、戦時中の精神論を思い出すが、大丈夫だろうか。竹槍で躊躇させられるはずもない。
しかし、著者の指摘する構造的欺瞞は的を射ている。アメリカの抑止力に頼りながら、日本は主権国家でありながら、核投下の決定には関わらない。核兵器に伴う責任はアメリカが背負う。そんな状態でそもそも抑止力足りうるか。
ー 現在の共産党を見て、一方では自衛隊を解消すると綱領に書いているのに、他方では自衛隊を活用すると言ってみたり、どうもちぐはぐだと思われる方も少なくない。下手をすると、軍事力のない世界を望む人からも、いや、そんな世界はお花畑だとあざ笑う人からも、両方から共産党が嫌われることになるかもしれない。
自己分析はできているようだ。
尚。党首のポスト争いのために派閥、分派が作られることを避けるため、党首公選をしない、という事だが、結局、党首公選では、こうした党是の本義が揺らぎかねない気がするのは私だけか。理想と実態の矛盾を抱えたままな気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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ある共産党員への手紙 - 内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/2023/03/28_1605.htmlある共産党員への手紙 - 内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/2023/03/28_1605.html2023/03/30
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この本で,この本が理由で除名したとしたら,共産党はあまりにも狭小なオワコン組織だと思う.
内部での意見の食い違いや,矛盾点について率直に表現された内容なのでは無いかと思う.
著者も書いている通り意見の違いを組織階級の枠を超えた議論と実践で総括,発展していく政党なら,「この程度の」差異で除名はないのでは無いかと.
軍事問題について,共産党の本来の立ち位置と現在の苦しいレトリック,その解決策など,大変興味深く読んだ.共産党の国防論がお花畑だと思う向きには是非読んで頂きたい.
で…やっぱり,すごく現実的な目標達成段階を設定しているのに,対右派の「ケンカ」に注力するばかりに本来の一歩一歩理解を得ながら前へ,という姿勢が全く見えない現在の戦い方がかなり残念,それを可視化した良書だと思う.
今からでも遅くは無い,田村智子さんは改めて党員の幅広い意見をオーブンな議論の俎上に上げ,世間に民主的な手続きがきちんと伝わる組織改革と,歩み寄りを求めたい. -
党の方針と違う主張を、外に向かってやったんで、あんた除名な、と言われた人。
「日本共産党が党首公選を実施すれば日本の政治がマシになる」
と言う内容。
ご本人も、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な、と言ってるくらいたられば論だと考えてはいるようなのだが、風が吹いたって、儲からない桶屋の方が多いんじゃねの、と思わせる内容。
内容が素晴らしいから星四つというより、如何に、共産党の方が、純粋で、理論家で、現実を全くわからない人達だっていうことがくっきりと見えてくる本だと思った。
共産主義という原理原則さえ、実はこうなんだ、ぼくの思う共産主義とはこうなんだって、原理主義的にテロ、内ゲバ繰り返してきた組織だよ。
あんまり誰にも相手にされないから、いや実はこうなんだ、こうすればいいよ、こうやったら受け入れられると思うよって、みんながぼくのいうことを聞いてくれないのは、ぼくが間違ってるのでなくて、時代とか環境が違うとか、確かに少し過激だってよねとかっていってる程度。
で、受け入れてもらった後は、「民主集中制」でしょ。最終的にどこに持って行こうとするのか、その、「手段」のためには猫も被るよって事にしか見えませんなあ。
そもそも、目的が、「野党連合」に入れてもらって、政権の一翼を担うためってはっきり言ってるから。
軒を貸してくれよ、母屋盗るからって聞こえるんですが。
安保については、非核4原則で、「核を使わせない」とか「核抑止力抜きの専守防衛」とか「ウクライナの専守防衛に学べる」とか何言ってるか分からない。
自衛隊の存在は憲法の精神に合致するが、9条違反は明確だという。そこをどうするかって、普通に考えれば、憲法9条違反ではない筈だから、解釈間違ってんじゃないのという結論になって然るべき。9条違反だ、という「原理原則」を守ろうするから変な結論になると思わないのかなあ。少なくとも、9条改憲考えるのが自然だと思う。
無理するから論理破綻するんだよ。
「ヨーロッパに人が共産主義という言葉を聞いてイメージするのは、現代においては、資本の横暴に対して住民が協力しあって対抗するような社会、支え合う社会というなものだろう。」
と、大真面目に言ってるので吹く。 -
日本共産党の党首公選を求めて立ち上がったが除名された、ということがニュースに
なった著者の新書。
ニュースだけでは細かいことは分からなかったが、彼の主張がよくわかる内容。
そもそも日本共産党。志位和夫さん、小池晃さん、田村智子さん、山添拓さん。。
論客が多い。よく勉強して国会でも存在感がある。議員の質が高い。
ただ、、日本共産党、という単位になるとよくわからなくなる。
以前は比例区のためにすべての選挙区に立候補し野党の邪魔をしていた。
立憲民主との共闘でそれを改めたが、不発に終わる。
自衛隊をどうするのか、憲法9条をどうするのか、外交は、、、、
どこか独善的なイメージがある。
著者はそうした国民の不安を払拭すべく、党首公選にして、候補者が主張することを
訴えている。論点整理できれば国民も納得すると。
政権を与えるに足りる政党であるか否か判断してもらえると。
しかし共産党はそうしない。
集団で合議でトップを決め、異論は許さない。トップの考えが党の考え。
中国共産党と何ら変わらない。
これを変えようとした著者を除名にしてしまった。この新書が出た後だな。
こういうことをすると国民の共産党へのイメージは悪くなる。
党名を変え、普通の党であることを示さないと、浮動票は増えない。
公明党みたいに信者の投票だけでよければいいが、共産党は違うはず。
なんとももどかしい。最初に書いたようにいい議員がたくさんいるだけに。
残念だ。 -
党首公選制にすれば国民に支持される!っていう内容ですが、そこは個人的にどうでもよい。
共産党のお勤め話(赤旗配りなど)や横の連携禁止というのが面白かったですね。
内部の情報があまり出てこないので。
https://seisenudoku.seesaa.net/article/500337303.html -
共産党の内部がわかりとても有意義だと感じた反面、やはり政権を奪取するには心許ない要素が多くあるなと思う。綱領には、変えてはならない部分と、時代に応じ変化させるべきところがある。著者は共産党にこだわらずに、同じ意志を持つ同志を募り政治のグループを作ることから始めれば、意見も反映させやすいのでは?
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日本の政治をマシなものにするなら、日本共産党をまず変えなければならない。本気せ政権を取りに行くために、筆者が考え抜いた国防論は、リアルであり、切実なものである。そして、正直、この本を書いて松竹氏を除名にする政党に未来はあるのかと落胆してしまった。
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前半は、日共の組織構造やその運営がどうなっているかを党員でも支持者でもない自分が理解するのに役立ち、公選を求める理由も理解する。
党に対する不満や批判もあって、そこまでは面白い。
しかし後半は、著者の国防論を延々聞かされるなど、日共や党首公選とはかけ離れ、書名から期待した内容と大きく乖離した話が続く。党首立候補に際しての公約だ、と言われればそうなんだろうが、特に著者の国防論を知りたいわけではない自分としては、正直言って興味がない。更に立憲民主党批判に至っては、書名とはもう完全に無関係だ。
党名変更案だって、そんなことはどうでもいい、という感想しか持ち得ない。
前半は面白いけど後半は興味なし、前半だけ読んでそこでやめとけばよかった、という読後感 -
必ずしも同意できないところも多いけれどガチに国をよくしようと考えているなすごいな