田辺写真館が見た“昭和” (文春文庫 た 3-42)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167153427

作品紹介・あらすじ

おせいさんの生家、大阪の「田辺写真館」。そこには古きよき戦前の昭和の、自由でハイカラな空気があふれていた。めいっぱいのお洒落をして、カメラに向き合う愛しい家族たち…。戦火をまぬがれた貴重な写真と共に、忍び寄る戦争の影に負けじと人生を謳歌する、庶民の暮らしをつづった珠玉のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 朝ドラ「芋たこなんきん」が大好きで、このドラマきっかけで田辺聖子にハマり始めたということもあるため、本書はどうしても読みたかった。田辺さんの生家・田辺写真館で撮影された貴重な写真の数々に収められた、昭和の大阪の日常。ハイカラで、華やかな、戦前の大阪の雰囲気を知ることができ、BK朝ドラ好きとしてはたまらない!
    父母、祖父母、ばぁばぁばあちゃん、若い叔父叔母、弟妹、住み込みの若い技師さん…ドラマの登場人物のモデルとなった家族達の姿、そのエピソードに、「芋たこなんきん」を思い出しながらページを繰る。幼いおセイさんの、かわいいこと!上質でおしゃれな子供服。ヨネツという子供服屋を初めて知ったが、こういうところから当時の大阪のモダンでセンスのよい雰囲気を窺い知ることができるのだ。
    学徒出陣~終戦に至るところのエピソードは胸が詰まる。つくづく、ここに収録された写真が戦火を免れ残ってくれてよかったと心から思うのだ。
    そして、各エッセイのテーマに合わせ紹介される、様々な川柳もまた興味深く読んだ。五七五に込められた思いとリンクした、昭和の思い出。田辺さんの川柳に関する著書もいずれ読んでみたいと思わされた。
    田辺さんとはまた別のドラマを感じさせる浅田次郎氏の解説もよかった。それぞれの胸に古きよき昭和の記憶があり、語り継がれていくべきであり、若い世代はそれを受け取り、次へ繋いでいかなければならないと思った次第である。

  • 新書文庫

  • 田辺聖子さんの生家が大阪の写真館だった、というのは、ドラマ(芋たこなんきん)でも描かれていたので、知っているひとも多いかもしれませんが。


    いよいよ戦争が本格化する以前、庶民の日常にはまだ戦争の影が薄かったころの写真が多く集められた本。それぞれの写真についての田辺さんのエッセイが、昭和初期の豊かな日常生活を鮮やかにイメージさせる。

    • 釉(ゆう)さん
      はじめまして。
      ずいぶん前(8月7日)に私の本棚へコメントをいただいたのに、全然気づかずごめんなさい。
      コメントをくださったのは『乙嫁語...
      はじめまして。
      ずいぶん前(8月7日)に私の本棚へコメントをいただいたのに、全然気づかずごめんなさい。
      コメントをくださったのは『乙嫁語り』でしたが、もしかして、この本のつながりでいらしてくださったのかしら?と思っております。
      この本は、古い写真がふんだんに使われ、エッセイと共に、戦争以前の日本の豊かな暮らしを垣間見ることができますよね。
      直木賞作、中島京子『小さいおうち』と、庶民の暮らしにおいては通じるような気がしています。

      私はレビューが結構いい加減で、自分の覚書きレベルがせいぜいです。
      ちゃんと読んでいただける方がおいでなのだと、反省しました。
      100%のレビュー率、すばらしいです!頭が下がりました。
      これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
      2010/08/27
    • 釉(ゆう)さん
      はじめまして。
      8月7日に『乙嫁語り』でコメントをいただいていたのに、全然気付かず、ごめんなさい。
      もしかして、この本のつながりで、いら...
      はじめまして。
      8月7日に『乙嫁語り』でコメントをいただいていたのに、全然気付かず、ごめんなさい。
      もしかして、この本のつながりで、いらしてくださったのかしらと思っております。
      こちらは、古い写真がふんだんに使われ、エッセイと共に昭和の日常を垣間見ることができるのが嬉しい一冊ですよね。
      直木賞の中島京子『小さいおうち』の現実番と申しましょうか。

      私はレビューがいい加減なので、100%のレビュー率に頭が下がりました。
      今後ともよろしくお願い申し上げます。
      2010/08/27
  • 著者の生家である写真館での手になる懐かしい写真と共に
    軽妙に語られる昭和の昔。
    一章、一章が、独立し、完結した面白さなので、
    時間のあるときに、ぽつぽつと読んでいたら、
    思いの他、時間がかかってしまった。

    繰り返し、著者が語る、戦前、モダン文化の花咲く大阪。
    日本は敗戦の日から生まれたのではなく、
    戦前も素晴らしい文化があり、人々は人生を楽しんでいた…
    という主旨の言葉で結ばれている。
    胸がいっぱいになる、重み。

    • natsume15さん
      natsume15です。
      当方へのコメント、ありがとうございました。

      仰っていたとおり、最初にこの本から辿ってお邪魔しました。
      古...
      natsume15です。
      当方へのコメント、ありがとうございました。

      仰っていたとおり、最初にこの本から辿ってお邪魔しました。
      古い写真を見るのが好きなので、この本はとてもおもしろく読みました。

      戦災で写真もだいぶなくなってしまったと書かれていましたが、これだけでも残っていて、写っているご本人の当時の体験も合わせて読めるのは貴重だなー、と思いました。


      それでは、またお暇がありましたら遊びに来ていただければ幸いです。
      2010/08/29
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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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