蚤と爆弾 (文春文庫 よ 1-16)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169169

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  •  731部隊の研究者、曾根二郎の実話を小説化。

     どうせ死刑になるならと捕まえたスパイ達の人体実験を提案する曾根。最初は凍傷対策などだったが、いつしか蚤などを使った細菌兵器への研究へと傾いていく。そこには科学者としての知的探究心や自身の立身出世があり、倫理的な問題は表面上は消えていく。
     対中国や対ソ連で実際にこれらの兵器が使われた事実は戦律する。さらに戦後はアメリカに利用されたというのだからさらに驚きだった。

     

  •  購入しようかどうか検討するためにパラパラ見た。いわゆる731部隊を題材にした小説。
     余裕ができたら読破してみようか。

  • 医者や科学者が持つ探究心が突き詰められ過ぎると時として狂った方向へ向かってしまう。それが戦争という人と人が殺し合う状況下の中、人が人と思わなくなり、人が人で無くなる本当に狂気に狂った行為が行われる事もしばしばある。俗に言う"731石井部隊"が極秘で行った細菌戦用兵器開発と人体実験が生々しく描写された史実小説は予想通りの重苦しさで頭が痛くなった。実験材料となる囚人達を丸太や満州猿等と蔑んだ呼称で呼び毎日非道な実験を行う心境は計り知れないし知りたくもない。理性をこれ程まで無くしたら最早人間として終わりでは無かろうか。

  • 戦争の暗部というより、近代日本の暗部そのもの。そして、暗部は勝者にもたらされ、共有され占有される。戦いに正義などなく、勝者にも正義はない。危険で極悪な俗悪も審判もなく、裏取引だけで葬られる。この小説はなぜ復刻されないのだろう。

  • 関東軍でチフス菌に汚染された蚤をばら撒く爆弾を研究した京大医学部出身グループ。当時としては画期的な技術で、米中ソを恐れさせた天才細菌学者曽根二郎の昭和34年の死まで。本来、人間を救う研究が、東大医学部卒業の幅を利かすエリートコースからはずれた曽根たちが恐ろしい領域に踏み出す。ソ連人捕虜などを使って繰り返し約3000人の命を奪った満州の研究所。淡々と記述する作者の抑えた書き方がぞっとするほど怖さの迫力を高めている。あまり楽しい本ではないですが、曽根の葬儀に出席した人々が人目を避けるように帰っていくという最終頁の記述は特に感動的です。

  • 装丁が違うんですが…初期の作品ぽい。人体実験シーンが衝撃的。

  • 4167169169 221p 1989・8・10 1刷

  • 太平洋戦争末期、満州で行われていた人体実験を行う巨大施設のおはなし

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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