一豊の妻 (文春文庫 な 2-15)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 97
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167200152

作品紹介・あらすじ

仲人口にのせられ夫婦になった二人は互いに呆れた。戦国の山内一豊夫婦を描く。「御秘蔵さま物語」「お江さま屏風」「お菊さま」「あたしとむじなたち」「熊御前さまの嫁」「一豊の妻」収録。

感想・レビュー・書評

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  • まさか短編集とは。

    そして、まさか私が聞いたことのある千代とこんなにま逆のキャラで描かれているとは。

    でも出てくる女性出てくる女性、全て個性的でとっても面白くて、もっと知りたくなる人たちばかり。

    この方の他の本も読んでみよう。

  • 表代作「一豊の妻」ほか5編を収録した短編集。
    この短編集は、戦国の末期に生きた女たちを、歴史の裏側から見つめた作品ということで一致している。どの作品も秀逸で、歴史のちょっとした事件に潜む沢山の人間の思惑や偶然などを丁寧に描いている。表題作の「一豊の妻」は、巷間に伝わる貞女などではなく、貞女伝説をうまく利用して出世したのが「山内一豊」という設定。

    ただ奇をてらうのではなく、歴史のあらゆる事実に張り巡らされた伏線を丁寧に紐解きながら、独自の語り口を展開している点が素晴らしい。
    今回、2度目の読破だが、全ての作品に新鮮な気持ちで向かえたので、楽しかった。

  • 読みやすい作家ってネットで紹介されてるとおり苦手な歴史小説なはずが読みやすい。内容も面白い。

  •  戦国女人たちを取り上げ、背後で微妙に絡ませた短編集。
     表題作でもある山内一豊・千代夫妻のお話は、後世に美談化された二人の生活をユニークに皮肉混じりに描いていて苦笑させられる。
     互いに多少の幻滅を感じながらも、どっこいどっこいの二人三脚で、戦国の世を(傍目には見事に)乗り切っていく夫婦の、密かな『男女の闘い』が素直に笑える。
     時は戦国、生死を賭けた瀬戸際も多々あるわけで、単純に笑っていられる状況ではない筈だけれど。
     関ヶ原の合戦に先立つ奥州攻めで、徳川・大坂側との駆け引きに際し、妻から夫への密書を巡って縺れに縺れた思惑の決着を眺めていると、政治の均衡というものは、どこでどう転ぶか本当に解からないとしみじみ感じる。
     他の著作でもそうだが、歴史上の女性たちに対し、褒めるにしろ貶すにしろ、著者は決して手放しで評価を与えたりはしない。
     感情ではなく資料から、冷静に人物像を浮かび上がらせた上で批評する。
     文体が簡易で明快な分、余計に辛辣に感じられる場合もあるけれど、著者の人物伝は実に楽しく、勉強になる。
     徳川家康の孫・千姫への容赦ない酷評なども、いっそ清々しいくらいに鮮やか。
     「熊御前さまの嫁」は、この姫の大坂落城後の輿入れを巡る周囲の悲喜劇といった様相で、関わる人間たちが可笑しいんだか憐れなんだか…。
     本作全体はユーモラスな印象に統一しているようで、「お菊さま」「あたしとむじなたち」に見られる、一部の者の意思に人生や命を翻弄された人々の無言の悲哀が折り込まれていて、不意に沈痛にもなる。
     総てを飲み込み、静かに流れゆく、時間の大河。
     その無情さ、儚さに思いを馳せては、表し難く切ない。

  • (2006.05.22読了)(2006.01.26購入)
    「功名が辻」全4巻(司馬遼太郎著)、を読み終えたので、他の作家の山内一豊と千代の話を探していたら、この本が目に付きました。一冊まるごと「一豊の妻」ではなく、短編集です。著者のあとがきによると「これは私の「戦国おんな絵図」です。」ということで、女性が主人公の6つの短編が収められています。「一豊の妻」の分は、80頁ほどです。
    「功名が辻」と同じエピソードが出てくるところは、史実かどうかは別として、何らかの文書が残っているのでしょう。
    「功名が辻」の場合は、山内一豊は、知恵のない男で、千代が一豊にあれこれと知恵を授けたという形で書いていますが、「一豊の妻」の場合は、一豊のほうが知恵があり、手柄はあたかも千代の方にあるかのように見せかけたという形で書かれています。
    作家の独自性を出すためには、同じ人物を扱う場合は、先に書かれた誰かと同じ内容では書く意味がないということなのでしょう。

    ●仲人の話(195頁)
    仲人の牧村政倫の話では「色白く丸顔で、一重まぶたの瞳さまで大きからず、むしろ細く色気を帯び、口元小さく-いわば引目鉤鼻の王朝美人風。」ということであった。しかし、実際は「色は浅黒く、眼は木孿子の実に似てくるくると丸いのだから引目鉤鼻とは凡そ縁が遠い。口は結んでいる時は、確かに小さいのだが、ひとたび開くと、まるで手品でも使ったように、見事な大きさに広がるのである。」であった。
    (千代16歳、一豊28歳の時結婚した。)
    ●俎板がない(205頁)
    厨に立って驚いたのは、俎板がなかったことだ。
    「大根や蕪を切ることはあるでしょう」
    「そんなときは升を使う」
    ●10両の馬を買った(221頁)
    「実はな、十両の馬の代は、そなたが出してくれた、ということになっているんだ」
    「まあ、私がですって!」
    「色々工作して調えたんだが、そういうのも体裁悪いから、実はわが妻の持参金であるぞ、ということにして・・・」
    が、これは一豊一流の政治的発言である。十両の金は持っていたのだが、家来に対して録を与えていない手前、反感を買ってはという深謀遠慮から、こうした手をうったのだ。
    ●拾い(235頁)
    千代との間に生まれた米は、大地震で長浜城がつぶれた時、下敷きになって死んでしまった。米の死から一年後に、一豊の側女から男の子が生まれた。
    この子を、米の墓参に行った千代に拾わせた。千代はこの赤ん坊を夢中になって育てた。一豊は、この子を後継ぎにしようとしたが、千代は出家させてしまう。
    ●土佐を拝領した(270頁)
    一豊は、手入れの行き届いた豊穣な畑一町歩を取り上げられ、その代わりに未開の荒地十町歩を与えられた百姓のようなものだった。しかも、この新しい開拓地には、虎や狼のような一領具足が出没するとあっては、気の休まる暇がない。時には相撲に事寄せて、彼らをおびき寄せてこれを皆殺しにするなどという、だまし討ちに近いこともやってのけたこともあるが、これも、そうしなくては、我が身が危なかったからである。生涯ぱっとした戦功もなかった一豊が、武力充実に力を入れ、それこそ神経の休まる暇もなく、実力行使に明け暮れたのは、この時期であった。

    ●永井路子の本(読了)
    「炎環」永井路子著、文春文庫、1978.10.25
    「銀の館」上・下、永井 路子著、文春文庫、1983.12.25
    「姫の戦国」永井 路子著、日本経済新聞・夕刊連載、1992.08.10-1993.11.13
    「山霧」上・下、永井 路子著、文春文庫、1995.11.10
    「絵巻」永井路子著、角川文庫、2000.08.25
    ●御秘蔵さま物語(36頁)
    あるとき、家康が、本多正信とか大久保忠常などという側近を集めて、雑談をしていたが、そのうちに、世の中で何が一番美味しいか、という話になった。めいめいが、鯛だ、鰹だと好みを並べ立て、なかなか決まらなかったが、そのうち、そばでお梶がニコニコしているのに気付き、
    「お梶、そなたならどうじゃな」家康は目を細めて、御秘蔵さまを振り返った。
    お梶は長いまつげをぱちぱちさせてから、「塩ではないかと存じます」

    著者 永井 路子
    1925年 東京生まれ
    東京女子大学国語専攻部卒業

    内容紹介(amazon)
    戦国の世を勝ち残り、土佐一国の主となった山内一豊の妻をはじめこの乱世を生きたさまざまな女を著者独自の歴史感覚で描いた小説「戦国おんな絵図」表題作ほか五篇

  • 戦国時代、乱世に生きた妻達の短編集。

  • 戦国時代、乱世の時代を生き抜いた女達の短編集。私はタイトルになっている"一豊の妻"の話よりも、他の話の方が面白いと感じました。

  • 鵜呑みに出来ない人物描写は好き嫌い分かれそう。しかし純粋に作品として見ると、その設定がどの話でも躍動感を与えてくれてると思います。06年9/10読了。

  • 「功名が辻」との違いは、千代が普通の女性だということ。おしゃべりが好きで、何気なくやっていることが、旦那さんの出世につながっていくという・・・。良妻賢母だけでない普通の飾り気ない千代が魅力的でした。

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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