東大生はバカになったか (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167330163

感想・レビュー・書評

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  • 2012年2月26日より2年半以上、積読状態だったことが悔やまれる。「知の巨人」による大学論をもっと早く読んでおくべきだった。通読をなぜか先送りしてしまっていた。修論を書くプロセスで承知しておくべきだった基本的概念が、平易な言葉で体系的に網羅されている。本書に掲載されている原典に早いうちにあたっていたら、多分、修論の構成は提出したものと異なっただろう。ちなみに、著者の重要な主張の箇所では、オルテガの言説が引用されている。また、西周の学問論は非常に重要なものと認識した。ただ、表題がイマイチでサブタイトルだけでも十分な気がした。

    かつて江戸時代の寺子屋・藩校が「道理教育」を行っていた。これがベースとなり西欧の学問を輸入した。その際、洋学派が国学派・漢学派を圧し、道理教育を除いた形で高等教育が行なわれたところが、今日の大学教育問題の発端だということがわかった(pp.122-123)。今日、盛んに大学教育で教養教育を行おうとしている思想と運動は、新たに70年という時間をかけて欧米の大学教育を輸入していると表せるのではないか。旧制高校と大学予科の制度置換作業が問題だったともいえよう。

    「知の全体像」に関する最も古い先行研究には、以下があった。
    ルルス
    http://books.google.co.jp/books?id=I64oL87aiS0C&printsec=frontcover&hl=ja&source=gbs_ge_summary_r&cad=0#v=onepage&q&f=false
    https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=29736&item_no=1&page_id=13&block_id=83

    その他、ベーコン、ディドロ、ダランベール、西周の論がある。

  • 暗記教育で育ってきたので、一般教養不足と指摘されると、確かに納得。現代では、欲しい情報は簡単に手に入るが、巷に溢れる多くの情報から、必要な情報を探し出す能力が重要ですね。

  • 大学入学時に読みたかった。現代の大学教育が大学生のレベル低下を招いているという問題意識から、日本の教育の歴史、問題点、東大ではどうかと体系的に書かれる。そして、教養(リベラルアーツ)を満遍なく学ぶことの必要性を説き、知の集合として全体観を掴む教育をせよとまとめる。兎にも角にも、勉強をせずに4年間のうのうと過ごしてきた自分に刺さる内容であり、定期的な反省も含め再読の余地があるだろう。社会人になっても読書習慣は継続し、身につけるべきであった教養を足していきたい。

  • トンデモ本

  • * サブタイトルは、「知的亡国論+現代教養論」。
    * 教養論、教養教育論、東京大学と文部科学省への批判を中心とした高等教育論。
    * 気になった項目
    * 必要とされるのはゼネラリスト(p.49)
    * 文部省による“護送船団”は沈没する(p.77)
    * 授業をインターネットに乗せる(p.202)
    * 自分が自分に与える教育(p.210)
    * アウトプットの重要性(p.275)
    * ブックガイドと百科事典(p.290)
    * 本の読み方、検索エンジンの使い方(p.296)
    * ウソと誤りを見抜く能力(p.305)
    * ダークサイドを知れ(p.312)
    * 百科全書の哲学者、コンドルセ「教育の目的は現制度の賛美者をつくることではなく、制度を批判し改善する能力を要請することである」(p.82)
    * 「大学というのは、何を学ぶところかといえば、一口でいえば、学び方を学ぶところである」(p.208)
    * 「大学教育の核心は、演習(ゼミナール)を通じてのパーソナルな教育にあると思う」(p.146)
    * 「その人が読んでいる本がわかれば、その人の頭の中身はほとんどわかってしまうのである」(p.154)
    * 「講義、学生間の相互刺激、本とメディアという3つのチャネルの総合的な教育の場が大学」(p.238)

  • 著者が東大・教養で3年間教えた経験から間違いなく東大の学生のレベルが低下しているというのです。これは単なるアジテーションではなく、著者が日本の将来を思う真摯な危惧から出たものであることを読みながら痛感します。学生に阿って受験科目を減らし、ゆとり教育を推進し、結果として高校で物理を履修せずに機械工学へ進む学生。同じく高校で生物学を学ばずに医学部、農学部へ進む学生。これが日本の最高峰である東大の実情!!大手前のレベルを言う前に、東大がこれでは日本は一体どうなるのでしょう。著者は東大文卒業であるだけに、素直に読めます。東大法がその中でも、実学の代表として書かれていますが、京大法はそれに対するアンチテーゼとして設立されたということは嬉しい限りです。日本の頂点に立つ東大の問題点は日本の文部科学省の教育方針そのものにあるという著者の指摘は本当に鋭いものがあります。

  • 深い話だけど、面白かった。教育論とか、東大の実情とか、あんまり自分には関係無いけど、そんなこと関係なしに、読み応えバッチリで、するする読めた。下手な啓発本より、教養を身につけなければと思わせるし、本を読みたくなった。時間をおいてもう一度読みたい。

  • 古本市場で購入。
    立花隆氏の著書を読むのは2冊目だった。著者自身、2度も東大を卒業している立場であり母校への愛情を込めた叱咤激励のようにも見えた。
    日本の大学は専門教育に力を入れ、教養教育(著者のいうリベラル・アーツ)は壊滅状態であるが、大学というところは本来、教養や自己学習の方法(これも教養のうち)を身につける場であると、指摘している。
    もっとも大学時代には遊んでばかりで、本書に記載の内容レベルにぜんぜん至っていない生活を送っていた私にとっては、耳の痛い話が多い。社会人になってからは、いろいろなことを知りたいと思い、読書をする機会が学生時代より多くなったので、著者のいってることに同調できることも多かった。知の全体像(ロードマップ的な物)を16世紀ぐらいにイメージしていた人がいたことを知って少し驚いた。

  •  東大というと、やはり日本の教育の最高峰だという認識があるが、実際に東大で講義をし、ゼミを受け持ったことのある立花氏から見ると、崩壊寸前であるという。東大が崩壊ということが、日本の教育が崩壊しつつあるということである。本書は、知的亡国論と現代教育論の2つの柱かで構成されている。
     知的亡国論の中で、なぜ日本人の知的マインドが欠如しているのかを述べている。江戸時代、日本人は寺子屋や藩校で教育を受けていたが、多くが漢籍の教育課程のため、暗記中心の教育を行っていた。そして、明治に入り、西洋に急速に追いつくため、国家が必要な人材を育成するために大学をつくった。それが東大である。東大は官僚育成のために、国家が主導して作り上げたものだったのである。
     そして、現在、日本にはたくさんの大学があるが、そこでは専門性が重視され、リベラルアーツである教養は軽視されている。さらに、入試制度改正により以前と比べて少ない科目の入試が行われるようになった。そうすると、高校では文系・理系の選択が行われ、科目の削除や履修率の低下を招いてしまう。今や物理は17%、地学に至っては7%だという。高校の履修制度と大学の入試制度が変わってしなったため、低い知識水準で入学できてしまうのである。この状態では、グローバルな社会において、日本人の知的マインドが育つとは考えられない。だから著者がいうように、「官を慕い官を頼み、官を恐れ官に諂う」人々が多い社会にってしまうのである。
     そこで、現代教育論の中で、立花氏は「教養」に重きを置くよう論じている.海外では、リベラル・アーツである教養は、人間教育であり、バランスがとれたゼネラルな知識を与えることで、物事をトータルに総合的に見ることができる人間を育てることを目的としている。教養は、単なる知識ではなく、身につけるものものである。教養=cultureは、耕作するという動詞としての意味をなし、すなわち頭を耕すことである。そのためには、哲学的思考(正解がない問題について深く考えること)を学問とする、哲学の教育が必要であると考えられる。そして、現代の教養として、立花氏は「現代生命学」と「脳科学」は必須であると挙げている。
     時代が、進むにつれて、新しい学問が生まれ、知が細分化していく。人間の知には時間的にも量的にも限界があるが、専門性だけ重視しているとそうしても知的不備が生じてしまう。現代の教養としての4つの知的能力、①論を立てる能力 ②計画を立てる能力 ③情報能力 ④発想力と氏は言う。そのためには、確かな教養が必要であり、教育においては「知の再構築」が求められている。

  • ☆amazonより引用

    ★出版社/著者からの内容紹介
    真の教養人は大学からは生まれない
    このままでは日本は知的に崩壊する! 大学に頼る時代は終った。自分で自分の“知のチャート”を作れ。著者初めての教育・教養論集

    ★内容(「BOOK」データベースより)
    文部省の「ゆとり教育」が生んだ高等教育の崩壊状況を徹底検証。その根本原因たる日本の教育制度の欠陥を、文部省の歴史、東大の歴史に求めながら、日本を知的亡国の淵からいかにして救うか、その処方箋を探る。さらに現代における教養とは何か、それはどのように獲得すればいいのかを論じて、世間に衝撃を与えた問題の書。


    ....................................

    立花隆氏の本です。

    ダランベールの「人間知識の系統図」が載っています。

    ”学問”というもの、そのものについて学べます。

    学歴社会の問題点が浮き彫りにされる良書。


    学問への興味や学府への関係性が深くない方も
    読んでおいて損はないと思います。

    今の日本社会を考える際に手引きとなる一冊。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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