- Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167357177
感想・レビュー・書評
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司馬遼太郎が考える人間像、乃木希典と
古川薫の考える人間像、乃木希典。
どちらが正しいと間違ってるとかそうゆうのではなく
嗚呼こんな感じ(あくまでも感じ)だったのかもしれないなぁと。
生涯、最後の武士のように暮していたわけだけど
「斜陽」「落日」などの萎れた類語が
乃木詩に目立つのは、それが希典の好みだからであるという一節に笑ってしまった。
愚将だなんだと言われてはいるけど、実際はなんだか切ないというか
人間らしい人なのかな、と思ったり。
日露戦争の背景が好きなので、その後の大東亜戦争の背景も調べたりするのだけど
「二十世紀のなかば過ぎまで 、人身御供のような人命損傷の数値が国家プロジェクトの工事で 、ひそかに計算されていたのである 。」
と、まぁ何たる恐ろしい計画もあったとな。
一言では語り尽くせないくらい乃木希典という人物は変わってるなと思うし
強いように見えて非常に脆い面があったり。
ちょっと今まで遠巻きに見てた自分がいるけど、まさに最後の一文にある通り
毀誉褒貶とは無縁の人なのだろうと改めて感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
乃木大将が愚将であると信じている人にはお勧めしたい本。
司馬遼太郎が夜に広めた乃木愚将論の苛烈さに
その誤りを糺すため書かれた本らしい。
その分、小説的な面白さは少ないのだけれども
司馬史観を卒業して歴史の見方を考える契機になるんではないかな。
連載中に辛気臭い連載だなーと思って読み飛ばしていたけども、文庫本でまとめて読み直すことができて良かったと思う -
H29.9.23-H29.11.18
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一言で言えば司馬史観でいうところの「乃木希典愚将説」を全面的に否定するための本。司馬遼太郎の「殉死」でくそみそに貶されてこき下ろされている乃木希典を、著者・古川氏が救済するために書いたそう。
乃木希典に加えて、彼とは対照的な性格を持ち、現代における評価も非常に高い“児玉源太郎”の生涯にもクローズアップしている。
乃木と児玉、日露戦争を駆け抜けた親友であり日本陸軍を支えた両雄の双曲線的生涯を見事に描き出した古川氏の傑作である。
実はかなり昔に、同氏の手による「天辺の椅子」(児玉源太郎が主人公の歴史小説)も読んだことがあったんだけれど、あまりに昔のことなのでよく覚えてない(--;)再読しなきゃね…。天辺の椅子では、なんかもっとこう…児玉がお茶目でやんちゃで可愛い印象でした(笑)
本書は乃木さん主体ということでシリアスというかやや悲壮感が漂っている。
萌えーと思ったのは、乃木さんが自殺しないように児玉が一生懸命、乃木を見張ったりわざわざ隣の部屋に寝泊まりしてたところとか。(笑)
世話焼き児玉(笑)
不謹慎ですか、すんません
物語の終盤、乃木が明治帝崩御に伴い殉死をする描写は、涙なしに読めなかった。(著者もここの描写は「泣きながら書いた」とかあとがきで述べていたが)、古川先生による、諄々と胸にうったえてくる巧みな名文には毎度感動させられる。
妻・静子に対する、乃木希典の武骨な愛情は、明治という時代に密やかに、咲き続けたのだろう。
後世のひとが憶測だけで誹謗中傷したとしても、揺るぎ無い夫婦の愛は永遠に変わらないのだ。 -
日露戦争における「英雄」の一人で、司馬遼太郎『坂の上の雲』で徹底的に貶された乃木希典が主人公。
小説と言うよりも,伝記。
あるいは,肉付けされた年表。
やや面白味に欠ける。
結局,乃木希典に関する物語は,司馬遼太郎を中心に回ってしまうのだと言うことを再確認させられる。
しかしながら,自刃の描写は秀逸。
そのためだけにも読む価値はある。 -
著者、古川薫は山口県出身の歴史小説家で幕末の長州藩関係の歴史小説が多い。『吉田松陰の恋』は映画化もされている。好きな歴史小説家の一人。
本著は司馬史観で悪評に晒されている乃木希典の評価を見直すべく著されたもの。
通史となっているので、どうしても表面的なおさらいになっているところもあり、その意味では物足りなさを感じる。
(『坂の上の雲』と重なるところが多い)
また乃木希典の学習院院長時代が殆ど触れられていないことも残念。 -
乃木希典と児玉源太郎の生涯を描いた評伝。司馬遼太郎の『殉死』、『坂の上の雲』に描かれたように乃木希典は本当に愚将なのか、という検証がメイン。