光の廃墟 (文春文庫 み 13-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167440060

感想・レビュー・書評

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  • イスラエルとはたまげたなあ…。
    しかし、いつもの同性愛、近親相姦に陰惨な流血と殺人は既に健在でした。
    皆川博子皆川博子した毒味は薄味だったけども、バキバキに皆川博子はしてたな…。

  • 【古本屋で購入】
    一つの殺人、そして自殺を始まりに
    戦争中の日本人、ユダヤ人の歴史を背景として
    作品内の物語を織り交ぜ、二重三重にからまりあう物語。
    短編や最近読んだ著者の他の作品に比べて、
    ストレートな感じはするが、人の抱える過去や
    奥底に眠る闇を描きながら、何よりも民族として
    背負う悲劇がクライマックスに向け、
    血を吐くような叫びとして、物語を静かに貫いている。

  • 舞台はイスラエル建国から約20年後のマサダ遺跡発掘現場。
    イスラエル国内からだけでなくヨーロッパ各地、そして日本からも志願隊兵がいて、そこで殺人事件が…というミステリー。

    ミステリー部分も非常に気になるところはさることながら、皆川さんの文章の美しさに加え、建国から20年のイスラエルの人たちの苦悩と、戦後に南方で自決を迫られた日本人青年の記憶が交錯し、とても苦しい。
    皆川さんの「死の泉」を彷彿とさせる一冊。

    罪の意識や国家を越えた復讐心…。
    フィクションではあるけれども、ミステリーとしてだけでなく、読んで良かった。

  • 解説の人も書いているとおり、のちの「死の泉」につながるモチーフが出てきている。
    文学性も高く、ミステリーとしても芳醇な香り。
    何度も読み直したい。

  • 舞台はイスラエル、死海沿岸の遺跡マサダ。遺跡発掘のボランティアに参加していた血の繋がらない弟(後妻の連れ子)隼雄がフランス人の同僚を殺して自殺したという知らせを受け取り、姉の明子は遺体引き取りに現地まで赴く。しかしそこで新たな殺人事件が起こり・・・。

    最初の単行本が70年代なので皆川作品の中でもそこそこ初期の長編。舞台がイスラエルで「ユダヤ戦記」が重要な役割をはたしており、のちの皆川作品におけるユダヤ人登場率の高さはここから始まっているのかも。書かれたのは70年代だけど、作中の時間は1964年。第二次世界大戦が終わったのが1945年。よって主人公の姉弟は、幼いころに敗戦を経験しており、そのことが伏線にもなっているので、書かれている時代を意識しないと殺人の動機や彼らの心理は理解しづらい。2000年前のユダヤ戦記のことなら、そういう歴史があったのかと割り切れるけれど、日本の近い過去のことは逆に現実感をもって受け入れられない気がする。しかし両者を絡める作者の手腕はさすがで、基本構成においては後の超大作のひな型を見る気持ちでした。近親相姦や同性愛など耽美要素も少々あるし。

    キャラクター的には、陰気な激情家といった感じの主人公の明子をあまり好きになれず、素直に共感できなかった。弟に対する気持ちが一方的だし、何も理解しようとしてなかったんだろうなと。しかしその弟のためには、本当にジョンが天使のような少年であってくれればまだ救われたのだけど、そうでもないのが残念すぎた。個人的にはミシャの復讐を完遂させてあげたかったな。そうすれば少しはスッキリしたかも。

  • 遠い異国の地で死んだ義理の弟。
    その死の真相を知るためにイスラエルにやってきた姉。

    戦争という悪夢が引き起こした弟のトラウマ。その出来事と重なるユダヤの歴史。やがて事件の歯車は回りだす。

    皆川博子さんの作品は本当に日本語が美しいですね。読み飛ばすのが惜しくて、じっとりと慈しむように読みました。

    そうか、今は平和な時代で全然気にも留めないのだけれど、この時代の人々は戦争を経験し、皆何かしらの悲しみを背負っているのだなぁ。

    カテゴリはミステリー。
    文章は耽美。皆川ワールドにどっぷりつかりました。

  • この2/3くらいの長さに縮めてくれると、面白さが凝縮されたのではないかと思う。
    事件の発端でもある、亡くなった隼雄の日記、特に小説体部分が冗長ではないだろうか。

  • イスラエルの遺跡発掘ボランティア中の異母弟がフランス人を殺して自殺(ここはそんなに重要ではない)したために日下明子は遺体を引き取りにイスラエルへ。異母弟と魂の絆(愛慕)を感じていた明子は衝動的に異母弟のいた遺跡発掘ボランティアに参加。そしてそこで不可解な事件と殺人事件に遭遇する。

    異母弟を愛するが行動には移せない明子は暗い図書館司書だが行きずりの男たちと肉体関係をもち度々妊娠・掻破するというキャラクタ。(ソコマデノ設定ハイルノカ?)発掘ボランティアのメンバーたちもキャラクタが濃い。だけど後半ロバートの視点のパートは違和感を感じた。ミステリとしてはイマイチ。明子に「そこまで拘るようなことじゃないだろ」と思ってしまう。

    異母弟 隼男は皆川博子の大ファンである桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』の万葉の長男である。似てるなー似てるなー似てるなーと読んでいってやっぱりそうだった(?)。

  • いまいちスッキリしない…。終わりがなんだか中途半端に感じてしまいました。人物に感情移入できなかったというのもあるかも。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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