魔神の遊戯 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167480035

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり島田作品はすごいなあ。スケールがどんなミステリよりも圧倒的に大きい。今回は、わりと先の読める展開だったけど、それでもユダヤ人とイスラムの対立とか、旧約聖書の出エジプト記など、サイドストーリーが勉強になる。
    ネス湖のほとりの村も雰囲気があり、また少々飽食気味だか死体の演出もインパクトがある。
    ロドニーの、ユダヤの唯一神ヤーハウェは暴力の神だとか、復讐を認めているとか、ユダヤ人とは思えない?思想が目新しかった。

    飲んだくれのバーニーと、癇癪持ちのバグリー警部のコンビもおもしろかった。バーニーもあんなに飲んだくれてる割には思考力がある笑

    最後の本物の御手洗の登場はかっこよかった!御手洗が偽物なのは薄々気づいた。というのも御手洗があんなに存在感が薄いはずないし、また犠牲者が次々に出るのを止められないわけがないもの!

    御手洗はほんとにあちこちの国に救世主として出現してて、世界的に活動する探偵ですね笑

  • 最初読みにくいかな、と思ったけれど、そこはやはり島田荘司先生。中盤からはストーリーに引き込まれて、一気読みでした。見破れないトリック、さすがです。

  • ミタライ教授≠御手洗という図式は推測できたが、犯人とまでは予想できなかった。ロドニーの手記もミスディレクションの要素であるのは頭では解っていたが、見事作者の術中にのせられてしまった。

    しかし今回の御手洗物は読書の牽引力が小さく、なかなか読み進めなかった。これは語り役が石岡からバーニーという街の飲んだくれアマチュア作家の手によるものだという手法を取っており、文体も変えていたのが大きかったように思う。
    さらに御手洗ならぬミタライ教授が明らかに今までのエキセントリックさが鳴りを潜めて、ものすごくニュートラルな人物に書かれている―これはもちろん作者の意図ではあるのだが―のもこちらの期待を裏切った形になった。

    今回も島田氏が提唱する21世紀本格としての大脳生理学と本格の融合がなされている。昏睡状態から目覚めた時の記憶の初期化でそれを基に手記を書いた者の錯覚を上手く利用しているのだ。
    この辺のアイデアは正に島田氏の独壇場とは思うのだが、やはり御手洗が大人しく事件に追従するのが退屈で、カタルシスに届かなかった。

    こうして考えてみると、御手洗シリーズは事件の奇抜さや驚天動地のトリックよりも御手洗の強烈な個性が作品の魅力の大半を担っているのだなぁと再認識させられた。

    しかし今の本格作家でこのようにシリーズ探偵が海外で活躍し、しかも登場人物が主人公以外全て外国人なんてミステリを書くのは島田氏しかいないだろう。そう考えるとやはり島田氏は双肩する者のいない孤高の存在なのだ。
    山口雅也氏の云う「日本本格ミステリのボブ・ディラン」は正に的を射ている。

  • 横道にそれがちなのが気になるけどそれすら一気に読ませるからすごいなー。

  • ひとつの事件に対して並行するふたつの記述、となれば大抵そこには叙述トリックが仕掛けられているもので、しかも随所に違和感を覚えながら読み進めたのであるが、しかし容易には見破れない仕掛けがやはり潜んでいた。
    とはいえ構造自体は単純なもので、ミステリは兎角どの視点から事件を描くのかという作者の企みと、それから既存のトリックの組み合わせによって、如何様にも変貌しうるものだと感じる。

  • う~ん、特に引き込まれるような内容でも展開でもないし、読後感としても余りインパクトは大きくないかな?
    それと、作者の社会的主張が、この頃の作品としては感じなかった。

    いつもの女性論とか、都市論、薬害や先天性の病気、歴史的背景などはなく、
    スコットランドの雰囲気を味わうという作品なのかな?

    暗闇坂の人喰いの木で列車でロンドンからスコットランド方面へ行く途中の美しい描写があったけれど、やはり島田荘司さんはイギリスの田園風景とかネス湖やスコットランドによい印象があるんだな!
    ということがわかります。
    確かに自分でもイギリスはロンドンを離れて田舎に行くとその美しさが印象に残るというのは感じているので、その辺りは共感できます。

    やっぱり、御手洗ものより吉敷ものを書いてくれないかな?

  • 御手洗が出てくるんだけど、メインじゃない長編小説。
    結構初期の段階で、これはちょっとおかしいな。と気がつく。んで最後はやっぱりかーって思う。
    でも、一番初めの話に戻らないままお話終了しちゃう。
    とある外国の村で起きる連続猟奇殺人事件、その犯人は……という話。
    アル中よっぱらいの人が、今回はワトスン役をやってる。

  • 違和感を感じながら読んでいたけど、原因は語り手が違うから御手洗さんもあまり登場しないのかと思っていたら、最後にそういうことか!とびっくりした。ダイイングメッセージとか額のYとかなんかちゃちい感じだし、犯人の動機もいまいちピンとこなかった。やっぱり語り手は石岡くんのほうがいいな。

  • 御手洗潔シリーズの異色作。読み落としていたものを2015年に読了。賛否両論とのことだが、自分は称賛側。世界中を飛び回る御手洗潔シリーズだが、人間関係が密に絡み合っているところはなんとなくムリしているように感じる。

  • 御手洗が出てくるのが遅すぎてなんだか、物足りない気がします。

    犯人の動機と手口の手間と労力が釣り合ってなくて、なんだか腑に落ちない。
    腹違いのペギーを殺すために、カモフラージュで
    4人も殺すとか、どう考えても大変。
    しかも縫ったりちぎったりだし。
    一人殺して隠す方がまだ、現実的だと思う。

    ロドニーが未来のヴィジョンだと思っていたものは、精巧に作られた村でのジオラマで昔遊んだ時のことだったことが判明。

    手記は子供の頃書いたものだった。

    この真相は、面白かった。

    最後駆け足で物語が解けていくのが、、、。

    伏線も少ない気がするし。

    バー二ーは酒びたりすぎて心配になった。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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